そして9月は、さよならの国
少しずつ肌寒さを感じる季節になってくると、聞きたくなる歌がある。
September そしてあなたは
September 秋に変わった
夏の陽射しが弱まるように心に翳がさした
September そして九月は
September さよならの国
解きかけてる愛の結び目涙が木の葉になる
(September/竹内まりや)
彼の心変わりを、夏から秋に変わっていく季節に重ねて歌った曲だ。
9月がくるたびに、この曲を思い出しては「9月はさよならの国」とくちずさんでしまう。
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夏は、たくさんのことを運んできてくれる季節だ。
気持ちが開放的になるから普段よりたくさん受け入れられるのかもしれないし、夏休みというまとまった時間があることで何かに挑戦しようと思うのかもしれない。
春にはじめたことが、実を結びはじめるタイミングでもあるのかもしれない。
なんにせよ、たくさんのことが自分の中に入ってきて、みっちり濃密な時間に感じられるのが夏という季節の特徴だ。
そして少しずつ空気がひんやりしてくる頃、私たちの心にもひゅーっと風が吹き抜ける。
9月はきっと、自分の中に余白が欲しくなる時期なのだと思う。
「わぁ、もう夜はだいぶ寒くなってきたなあ」と夏の終わりを感じながら歩く、そんな余白の時間が必要なのだ。
そして夏に溜め込んだたくさんのものをひとつひとつ精査して、感謝の気持ちをこめつつ「さよなら」の決断をしていく。
冬から春になる季節と違うのは、秋の「さよなら」は自分の意思で選ぶものだということだ。
周りが「あなたはもう卒業だよ」と教えてくれるのではなく、自分自身の中で卒業のタイミングを決める。それが秋のちょっと切ない、ひんやりした涙の理由なのかもしれない。
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"September"のラストは、「私ひとりが傷つくことが 残された優しさね」と季節の変わり目を柔らかく受け入れて終わる。
切なさの中に、優しさを。離れるときにこそ、愛情を。
夏から秋への変化は人をしんと寂しい気持ちにさせるけれど、余白の季節を通り過ぎると、すぐに本格的な実りの秋がやってくるように。
この時期に私たちの心を吹き抜ける風はきっと、次の幸せが訪れる合図でもあるのだろう。
(Photo by tomoko morishige)
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