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すべては余暇になる

ショート・ショートの神、星新一の作品のひとつにこんなお話があります。

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ずっとずっと先の未来、人類は一切働かなくても生きていけるようになる。

そうするとこれまで働いていた時間は創作活動に充てられることになり、あちこちで個展や発表会が開催される。

みんなが日々あちこちで開催するので、1日に義理で何件も回ることになり、主人公がこうつぶやく。

「これじゃあ働いていたときと何にも変わらないじゃないか…」

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星新一が描いたこの世界は、実はもうすぐそこまできています。

ハンドメイドやInstagramの人気はブームではなく、不可逆的な世の中の流れ。

なぜならば人類はこれから圧倒的に"暇になる"からです。

最近読んだ「自分の時間を取り戻そう」でも書かれていたとおり、人類の生産性がこのままあがり続けていけば、そう遠くない未来にベーシックインカムが導入され、働かずとも最低限の暮らしが保証される時代がきます。

これだけ聞くと想像しづらいかもしれませんが、現在すでに先進国では1次産業・2次産業よりも3次産業に従事する人が圧倒的に多くなっています。(参考:社会実績図録データ

つまり人間が生きていく上で最低限必要な食べ物や住環境は揃った上で、芸術や文化、スポーツを楽しむという"余暇"に割く時間が昔に比べて圧倒的に増えているのです。

今後はロボットやAIの発達で、飲食店や小売店の人員もどんどん削減されていくでしょうし、人がそうした場所で"働く"意味はなくなります。

スペインやギリシャといった欧米諸国の失業率が高いのもそうした大きな流れが影響しているし、日本の長時間労働も同様だと思います。
そこにあるのは働き口がそもそもないか、低コストで働くかの違いだけ。

幸か不幸か仕事を奪われた私たちが行き着く先は"余暇を楽しむ"ことであり、未来の教科書には「この時代まで、一般庶民の中には"働く"という概念があった」なんて書かれているかもしれません。

「人生は壮大な暇つぶし」とも言われますが、これからの時代は膨大な余暇をどれだけ豊かに過ごせるかのセンスが人生の満足度を左右するのだと思います。

どれだけ儲けたか、ではなくどれだけ素晴らしいものを創り出したかで評価される時代へ。

人類は、実は明るい未来に向かって進んでいるのかもしれません。

(Photo by tomoko morishige)
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私のnoteの表紙画像について書いた記事はこちら:人のフィルターを通して見る世界

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