高齢化する社会と、「過ごす店舗」のビジネスモデル

先日開催したNewsPicksアカデミアのイベント「新・小売概論〜“ZOZOSUIT以降“の実店舗の未来」の最後の方で、今後渋谷にオープン予定の商業施設についての話題がでました。

そこで60代以上をターゲットにした施設が作られる予定という話を聞いたのですが、たしかに今後高齢者向けの店舗は需要が大きく伸びていくはずです。

高齢化によるターゲット層の人口増は当然ですが、さらに暇を持て余して「居場所」を求める人が年齢を問わず増えると予想されるからです。

今後AIやロボットの進化によって、人間の仕事はどんどんなくなっていきます。

それは決して不幸なことではなく、ベーシックインカムの導入も含め、短い労働時間で生きていくことが可能になり、自由に使える時間が圧倒的に増えます。

以前「すべては余暇になる」という記事にも書いた通り、これからは膨大な余暇をどれだけ豊かに過ごせるかのセンスが人生の満足度を左右する時代です。

消費において「体験」や「ストーリージェニック」が重視されるのも、それらは余った時間をより豊かに過ごすための方法を買うということだからではないかと思います。

人類は、これからさらに暇になっていく。

より正確に言えば、若者は暇つぶしのために忙しくなっていきますが、体力・好奇心ともに衰えていくシニア層は、膨大な可処分時間をつぶすための「過ごす」場所に溜まるようになっていきます。

今でもよく、顔見知りが病院にこないと「具合でも悪いのかしら」と待合室で話し合うという笑えない話がありますが、似たようなことは喫茶店やファミレス、ジムなどの場所でたくさん起きています。

そして今後は、店舗も似たような使われ方になっていくのではないかと思います。

百貨店時代、毎日のように来店されてはスタッフと談笑し、時には差し入れをくださるようなお客様が何人かいらっしゃいました。

そのお客様たちが百貨店に求めていたのは、「お店」ではなく「居場所」です。

毎日顔見知りとして快く迎え入れてくれ、30分から1時間ほどを楽しくつぶせる場所。

この条件を満たす場所であれば、カフェだろうと病院だろうとお店だろうと、その業態は何でもいいのです。

特にシニア層へアプローチする場合は、物欲を掻き立てるよりもコミュニケーション欲を満たす方が、結果として購買につながりやすいということを、私は百貨店時代に学びました。

今後は若年層もそうした価値観の人が増えるとは思いますが、どうしてもシニア層は若い時に比べて見た目を綺麗にしていたいという気持ちが薄くなるため、何かを買いたいという動機ではなく、気に入ったスタッフを助けるような気持ちで買い物をするシニア層は多いのです。

つまり、シニア層にアプローチするには、心地よく過ごせる場所を提供することが重要になってきます。

一方で、商業施設が「過ごす場所」を目指した場合、商品の販売だけではビジネスとして非常に効率が悪いという問題があります。

場所にせよ販売員にせよ、1人のお客様が使ったり話したりする時間が長くなればなるほど、本来稼げたはずのお金を失うことになるからです。

顧客満足度のためには長く過ごしたくなる雰囲気を作らなければならない。
しかし、ビジネスの効率を考えると、長くいられると困る。

実店舗の運営は、常にこの矛盾との戦いです。

さらに今後シニア層が増えることで、無料で入店できて時間がつぶせる商業施設は、従来のビジネスモデルだけでは薄利になってしまう可能性が非常に高いのではないかと思います。(実際、地方ではすでにこうした流れはかなり進んでいるように感じます)

つまり、購買に頼ったビジネスモデルから脱却し、入場料や会員制、コンシェルジュ料など、過ごすことに対する課金を考える必要があるのです。

先日AMPで店舗に「入場料」を払う時代の到来?「購買」より「体験」を追求した先の未来とはという記事を書いたのですが、「体験」や「ストーリージェニック」を追求した先には、購買以外の新しいキャッシュポイントを模索する必要があります。

いかに新しいビジネスモデルを作り出すか。

高齢化社会によって「過ごす店舗」が重宝される時代、小売業のビジネスモデルそのものが大きく変わらなければならないときがきているのではないかと思います。

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最所あさみ

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最所あさみ

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