読む・聞く・見るはどう違うのか

昨年頃から、動画や音声メディアの注目度が急速に上がってきました。

まもなく5G回線がはじまることで動画再生のハードルが下がり、今まで以上に生活の中に動画が溢れることが予想されます。

すでにInstagramでもフィードにせよストーリーズにせよ動画の割合が上がってきており、この傾向はしばらく続くだろうと言われています。

また、音声もGoogle Homeの発売や音声入力の精度が上がってきたことと、音声収録のためのテクノロジーが進化したことから、一般の人でもコンテンツメーカーになることができるようになり、急速に普及してきました。

そんな世の中の変化を踏まえて、先日会話の流れで「今後どういうメディアが伸びると思う?」と質問されたことをきっかけに、私なりにあれこれ考えてみました。

つまり、それぞれ特徴も役割も異なるので、それを理解せず安易に手を出すとコンテンツとチャネルのシナジーが生まれづらいのではないかと思っています。

私は常に「いいメディアとは人を動かすもの」ということを信条としていますが、それをさらに因数分解すると
①接触しやすさ(imp)
②情報伝達効率(読了率)
③興味・好意の上昇(エンゲージメント)
の3つに大別できるのではないかと思います。

つまり、まず多く情報に触れてもらうこと、そしてその情報をできるだけ一貫してインプットしてもらうこと、その上で興味や好意を引き上げること。

これがいいコンテンツの条件だと思っています。

上記の3つを念頭において読む・聞く・見るという行為の特徴をそれぞれ整理したものが下記の図です。

まず、情報への接しやすさという意味で、接触ハードル、つまり消費するために必要な時間を整理しました。

例えば「読む」でも書籍かWeb記事かでまったく違いますが、どれだけ長い文章だったとしても、「読む」は自らの意思で休憩を挟みやすい行為です。

さらにWeb記事であれば2、3分で読めるものも多く、音声や動画に比べてつまらなかった場合の離脱判断がしやすいので、その分接触ハードルも低いのではないかと思います。

逆に動画は、ある程度まとまった時間をとる必要があるため、自らの意思で情報に接するハードルは高いメディアだと言えます。

もちろんNetFlixなどのオンデマンド配信であれば途中で止めることもできるのですが、どちらにせよしばらく観ないと面白いかつまらないかが判断しづらいですし、どこがキリのいいシーンなのか判断しづらいため、動画を見ようというときは最低でも30分は確保するのが一般的かと思います。

ただ、最近は1、2分のティザー的な動画や、Instagramのストーリーズのように数秒でも楽しめる動画も増えてきました。

こうした短い動画のクオリティが上がっていけば、これまで大きなネックとなっていた動画の接触ハードルの高さは大きく解消されるはずです。

次に「インプット効率」ですが、これはコンテンツの消費時間に対する情報量の比率が大きいほど高くなります。

文章は基本的に体系立てて書かれており、短時間で情報を取得するのにもっとも適したフォーマットです。

いまだにビジネスパーソンの間で新聞や書籍が人気なのは、単にオールドメディアの価値が尾を引いているわけではなく、「読む」という行為自体の効率がいいという理由が大きいのではないかと思います。

それに対して、音声はTEDのような講演調のコンテンツ以外は雑談めいたものが多く、消費時間に対して得られる情報量はそこまで多くありません。

動画も文章に比べれば情報効率は下がるものの、そもそも視覚・聴覚の2つに訴えかけることができるため、情報量が多いという利点によって音声よりも情報効率のいいメディアと言うことができます。

さらに、今後注目すべきはそのメディアがどれだけ平行して消費されるものなのか、という点です。

表では「ながら作業のしやすさ」と表現しましたが、今後はあらゆる作業がマルチタスク化し、「集中」は誰もが狙う貴重な資産になっていきます。

参考:可処分時間を、いかに「まとめて」とるかの時代へ

そのコンテンツを再生している間、どれだけ他の作業がしやすくなるか。

それは少なくとも現代においては、「両手がどれだけ自由になるか」と比例しているのではないかと思います。

例えば、現段階で「読む」ためには、本であれスマホであれ、手で持つところから離れることは非常に難しいものです。

スマホをいじりながらできることは、ごはんを食べるとか同席した友人と話すくらいの範囲でしょう。

それが動画の場合は視線だけ画面に向かってもらえれば、他の作業をしながらコンテンツを消費してもらうことが可能です。

手で動かさなくても勝手にコンテンツが進行する分、両手をあけることができ、さらに視覚と聴覚の両方で受信できるため、多少目を話しても内容を理解することができるためです。

さらに音声になると、デバイスからある程度離れても受信が可能になります。

音声は、「ながら再生」に最適なメディアです。

現在も、仕事中や通勤中に音楽を聞いたり、家事をしながら画面は見ずにBGMとしてテレビをつけておくことも少なくないと思います。

つまり、情報やタスクの処理量が膨大になった現代において、並行しながら情報をインプットできる音声メディアが必要とされるのは必然の流れとも言えます。

しかし、その場合の問題点は、接触時間に対して「集中時間」の割合が短くなる可能性が高いこと。

音声を聴く際、じっと目を閉じている人はほとんどいません。

歩きながら、食事の用意をしながら、仕事をしながら、など何かを「しながら」接していることがほとんどです。

だからこそ、音声は今後盛り上がっていく分野ではあるとはいえ、あくまで「広く薄く」と割り切った方がいいのかもしれない、というのが今のところの私の見立てです。

また、最後にいれた「コンテンツ作成コスト」という項目で表現したとおり、音声メディアはテキストに比べてコンテンツメーカーの労力が少なくてすむ形態です。

だからこそ、コンテンツメーカーの母数が増えることによって、ブログやSNSブームが起きた時代以上に玉石混合となる可能性が高くなります。

音声メディアの価値は、情報取得よりもコミュニケーションや暇つぶしといったゆるい目的の方が合致しやすいのではないかと思っています。

こうしたコンテンツのクオリティや情報効率の高低も、メディアに接触する際の姿勢に現れます。

そして、ツイートにも書いた通り、今後カジュアルな日常はテキストから音声にうつり、徐々にテキストは知識階級のものになっていくのかもしれません。

ちなみに、現在の動画ブームは、動画の性質として視覚と聴覚のどちらからもアプローチすることができる上に、動画作成のハードルが劇的に下がったことでティッピングポイントを迎えたという状態なのではないかと思っています。

ということは、今後も動画が出力形式として成長していくことはほぼ確実で、そのコンテンツの目的によって視覚と聴覚どちらに訴えかけるか、またチャネル戦略や動画の長さをどう設定するかといった部分を判断するセンスが、成功に大きく寄与するはずです。

何かが流行る背景には、必ずその対象がもつ社会的役割があります。

それを俯瞰して読み解くことが、単に流行りに流されるのではなく本質を見抜いた上で戦略を立てるためのポイントなのではないでしょうか。

とはいえ、私もまだ思考をアップデートしている途中なので、ぜひ異論・反論も含めご自身の感覚をご自身のホームで言語化していただき、業界全体で議論していけたらと思います。

今回のこのテーマが、みなさんの思考を一歩深めるヒントになれば幸いです。

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今回ピックしたのは「これからの時代、アパレル企業のCEOに求められるものは?」という話題です。

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最所あさみ

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最所あさみ

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