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ブランディングとは期待値コントロールである

ほんの少し前まで、『ブランディング』といえば商品やサービスにいいイメージを持ってもらうための営みを指していた。ともすると、実物よりもよく見せる方法、という意味すら含んでいたのではないかと思う。

メリットをアピールし、ヴィジュアルを作り込み、人気のタレントを使い、『なんとなくよさそう』という印象を作ることが自分たちの商品を選んでもらうためのひとつの戦略だったからだ。

しかし今や、いい評価も悪い評価もインターネットを通して一瞬で広まる時代になった。

ただ評価は主観的かつ相対的なものであり、いいものを作れば必ずいい口コミが生まれるわけではない。

では何によって評価の高低が変わるのかというと、もっとも大きな要素は『事前の期待値』なのではないかと私は考えている。

たとえ同じ商品でも、期待せずに使ってみたら案外よかったという場合には高評価になる一方で、事前の期待値が上がりすぎている場合はがっかり感から評価が下がることが多い。

美辞麗句を並べ立て目の前の売りを作ったとしても、上がった期待値に見合うだけの中身がなければ顧客満足度が下がる。これは今も昔も変わらない事実だが、現代においてはそのがっかり感をSNSという拡声器によって一瞬で広める力が消費者にあるという点が昔と大きく変わった点だ。

先日のEC CUBE DAYの資料にも載せたように、ブランドと顧客の関係はファネル型から循環型へと変わり始めている。

もちろん誰もがSNSで積極的に発信しているわけではないし、頻繁にチェックしていない人も多いだろう。

一方で、『友人がこう言っていた』とシェアする人も多いし、友人同士の会話の中にSNSで話題になったモノや人がでてくることも少なくない。特にミレニアル世代以下はオンラインとオフラインの境界線がほとんどなく、それぞれを分けて考えたりしない。

だからこそSNSは一部の特別な人のためのものではなく、『当たり前にあるもの』として考えなければならないものだと私は考えている。

ではいい口コミを増やすために期待値を低くするような発信をすればいいのかというと、あまりに低すぎれば今度は手に取ってもらうチャンスが減ってしまう。

さらにブランドが望むと望まざるとに関わらず、いい体験をした顧客は必然的に次のハードルを上げるような『いい投稿』をしてくれるだろう。

つまりコントロールが難しい外部要因を抱えながらも、絶妙なバランスで事前の期待値をコントロールしていくことを、今後はブランディングと呼ぶのかもしれない。

そこで重要なのは自分たちにできることだけを嘘偽りなく伝えること、そしてブランドの思想や世界観を顧客自身が語ってくれるほど理解してもらえるようにコミュニケーションすることなのではないだろうか。

『自分たちはいい』とアピールするのではなく、『自分たちは何か』を定義し、語ること。それこそがブランドをブランドたらしめる要素になっていく。

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