そして、美は「生きる意味」をつくる

昨日、『美がもたらすもの』について今の自分が思うことを書いた。

そしてこの記事を書いたあと、soar編集長のみずほさんに教えてもらったビル・ストリックランドのTEDトークを観た。

ビル・ストリックランドはスラム街で恵まれない子供達やシングルマザーたちに職業訓練の場を提供する社会起業家なのだけど、彼のアプローチが他と異なるのは、『空間の美しさ』にこだわっている点だ。

その理由は、彼自身がスラム街に生まれ、生きる意味を見失って非行を繰り返していた高校時代に、陶芸の美しさに魅せられて人生が変わった経験に根ざしている。

「良いものに囲まれると、人に対する調子や態度もそれにふさわしいものへと変わっていく」

彼はこの言葉を、貧しい人々が本来の力を取り戻すための考え方として語ったけれど、たとえお金を十分に持っている人でも、自分を大切にしてくれない場所にばかりいると自分への愛情も他人への想像力も失ってしまうのではないかと思う。

以前『健全に自分を支えるということ』にも書いたのだけど、金銭的には豊かでも、精神の貧困を抱えていると周りが敵だらけになってしまって生きることが辛くなってしまう。

そうならないために必要なのは、誰かにかまってもらうために自分を押し付けることではなく、孤独を受け入れて自分の足で立てるようになることだろう。一見、遠回りに見えるかもしれないけれど。

そして孤独を受け入れるためには、まず自分を受け入れてくれるだろうと信頼できる場所を見つけなければならない。

ちなみに、受け入れることと堕落させることは似て非なるものだ。

受け入れるということは、現状をすべて肯定するふりをして相手の上限を定めてしまうことではない。

人には変えられることと変えられないことがあり、変えられないものを尊重しながら、変えられることを変える力を信じることが本当の意味で『受け入れる』ということではないだろうか。

美しい場所で丁寧に扱われることは、その人の中の希望や成長意欲に火をつけることにつながると私は思う。

だからこそ、金銭的に恵まれているかに関わらず、美しいものにアクセスする機会をより多くの人に届けていかなければならないのだろう、ということも。

人は、自分が経験したことしか体現できない。

自分のためではなく、見る人・聞く人・使う人のためを思って作られたものと接することでしか、『他人のために命を使う』ことの喜びとそのための方法を知ることはできない。

長い時間軸で見れば、これから私たちが働く意味は自分が生きるための糧を稼ぐことではなく、人や世界とつながることで精神の充足を得ることになっていくだろう。

『売れればいい』『儲かればいい』という精神で何かを作り続けても一生満足できず、不安を埋めるために他者の評価軸でいいと言われるものを消費しながら暮らすスタイルは、平成の時代に置いていかなければならない。

自分が本当に作りたいもの、愛をもてるもの、そして笑顔にしたい相手の顔が浮かぶもの、つまり美しいものを作ろうとすることが、人生に意味を与えていくのではないかと思う。

ビル・ストリックランドはトークの最後にこう言っていた。

「みなさんに知っていただきたいのは、世の中は生きていく価値のある場所だってことです」

世界がもっと『生きていく価値』で溢れる場所になるように。

2019年も微力ながらがんばっていきます。

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新年初のおまけは「私的2019大予測」をば。
NewsPicksで年末年始にやってる大予測シリーズのオマージュです。笑

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