「Girl! Girl! Girl!」 のシンセフレーズはヴォイジャーで試してみてもハマらなかったんですよね。(金澤ダイスケ)

山内: 仮に『BOYS』よりも先に『GIRLS』 をリリースしてたら、「Girl! Girl! Girl! 」 はガラッと仕上がりが変わっていたと思います。『BOYS』の 「Green Bird」で大胆なストリン グスの導入に成功したからこそ、「Girl! Girl! Girl!」ではCHOKKAKUさんにも思い切ったストリングス、ホーン・アレンジをお願いすることができましたね。 ギターに関して言えばAメロやBメロのコード感も新鮮でした。フジファブリックの場合、7th以降のテンション・・・つまりは9th、11th、13thあたりは意図的に使わないようにしている傾向があったんです。そこは志村くんとも昔話したことで、やっぱり塊になって出てくる強いギターサウンドにしたいって意識があって。9thを使う 場合も、なるべくセーハで押さえる形にはしないようにしていたんです。その半ば固まってた決まり事を崩せたことも大きいですね。(山内総一郎)

僕は敢えてテンションに引っ張られず、 跳ねたリズムの方を活かすベースを考えましたね。 ベースまで上を追っていくと、ただのフュージョン好きなバンドになりそうで。(加藤慎一)

もちろんフュージョンも好きなんですけどね。 フジファブリックとして、基本的に歌を聴かせるってことを大事にしたいですし。(山内総一郎)

コードに数字がたくさん付くと、押さえ方が本当に限られてくるので(笑)。 加藤さんと同様に、そこまでテンションに左右されることは無かったです。それが丁度良いバランスとして落ち着いたと思いますしね。 デジタルシンセで重心を高くすることを意識しつつ、バッキングではヴィンテージ・キーボードですね。(金澤ダイスケ)

ーーギターのカッテイングも小気味よいです。【インタビュア】

ストラトキャスターとデラックス・リヴァーブの組み合せです。今回、ストラトは62年製(ネックは63年製) とジェイソン・スミスに作ってもらったシグネチャー・モデル を使いました。やっぱり、シングルコイルと6V6のマッチングは絶妙だってことを改めて 痛感しましたね。(山内総一郎)

ーー更にD.O.I.さんのミックスが彩りを加えています。【インタビュア】

D.O.I.さんは 『FAB STEP』(13年) のときにもお願いしようと思ったんですけど、スケジュールの都合で実現せず。「Girl! Girl! Girl!」 は華やかに、きらびやかに仕上げたかったので、決め打ちで今回依頼しました。実はCHOKKAKUさんとのお仕事も多くて、 相性もバッチリでした。(山内総一郎)

ーー2曲目が「Girl! Girl! Girl!」で、これはSMAPの「$100」や「青いイナズマ」のアレンジを手掛けた CHOKKAKU氏が参加しています。【インタビュア】

そうです。留衣君もそうで、いわばコンセプト盤というところで、自分たちが今までやっていないことにもチャレンジしたいなと思って。バンドの間口を広げたいというのもありますし、いろんな人とやってみて、そこでバンドの力が付くかなとも思っていたので。この曲のデモが出来たときに、憧れだったCHOKKAKUさんに……まさに僕も「$10」や「青い イナズマ」のアレンジが大好きでよく聴いていて、前からタイミングが合えばお願いしたいと思っていたので、それが実現してうれしかったですね。実際に仕上がった音もホントにかっこよくて、僕らの想像をはるかに超えるコード感やブラスアレンジを生み出してくれて、普段はすごく優しい感じの方なんですけど、スリル感のある音作りはまさにスーパープロデューサーで、ホントにエキサイティングな経験でした。(山内総一郎)

ーーこれは歌詞が最高におもしろいよね。とにかく主人公の彼が舞い上がりまくりでさ。【インタビュア】

そうです(笑)。ある意味、バカですね(笑)。(山内総一郎)

ーーしかも、かなり舞い上がりつつも、まだ女の子とは付き合えてないよね?【インタビュア】

そう。付き合えてないです。むっちゃ好きな子のところに行きたいなと思ってて。(山内総一郎)

ーーで、一応、誘いの電話をもらって、会いに行く直前ぐらいまでだよね?【インタビュア】

そうです。だからまだ会ってない状態ですね。【山内総一郎】

ーーだよね。だから、会えると思って超盛り上がっている感じをゴージャスなアレンジで見事に披露しているという(笑)。“君まであと少し”というセリフを繰り返す後ろの切れ味抜群のカッティングもそうだし、その後に続くサビの手前で派手にグルーヴが上昇して盛り上がるアレンジもそうで、そ のサビでは “Oh! いつか二人はきっと恋に落ちる!!"ってもう妄想大爆発じゃん(笑)。【インタビュア】

そうそう(笑)。(山内総一郎)

ーー“月まで笑顔にみえる”とか“もうパラッパッパ/パッパッパ”ってわけのわからないセリフを陽気に口ずさむところとかさ(笑)。【インタビュア】

なんかでも、例えばこの仕事が終わったら、お目当ての女の子と約束していて、会えると考えると、すべてが楽しくなるみたいなことってありますよね?(笑)(山内総一郎)

ーーまあ、あるよね(笑)。そういう楽しみがあると、何でもできるみたいなね。【インタビュア】

そんな感じですね。でもこの歌詞はホントにCHOKKAKUさんの素晴らしいアレンジにかなり引っ張り出されたところもあるので楽しみながら作りました。(山内総一郎)

ーーなるほど! ちなみに、この曲の主人公が、お目当ての彼女とうまくいったと仮定して、その後のストーリーが『BOYS』の「夏の大三角関係」につながっていくのかなと想像したんだよね。花火をドタキャンした彼女が 「Girl! Girl! Girl!」の電話の女の子で、舞い上がりまくりの彼が、ライザップにもっていかれた男の子かなと(笑)。【インタビュア】

これが、違うんですよねー。(山内総一郎)

ーーあ、違うんだ!【インタビュア】

逆に“キラキラ”という言葉が「夜明け前」にも「Girl! Girl! Girl!」にも出てきて、それは自分にとっての女性に対するイメージを表現した言葉でもあるんですけど。この2曲の主人公が、もしかすると一緒なのかなと、今、不意に思いました(笑)。(山内総一郎)

ーーあ、今思ったんだ(笑)。ああ、 でも確かにこの2曲の主人公の純情な感じは一緒かもね。【インタビュア】

そう! 同じ主人公を2wayで走らせていたのかなと。今話していて思いました。(山内総一郎)

ーーなるほどね!【インタビュア】

「Girl! Girl! Girl!」 は、SMAPとかを手掛けているCHOKKAKUさんという大御所のアレンジャーさんがいて、 僕はその人が関わった音楽をもう小学校の頃から聴いているんですが、 この曲でその人とようやく一緒に音楽を創ることができたんですよ。 本当に嬉しかったで すね。 そもそも「Girl! Girl! Girl!」は、“CHOKKAKUさんと一緒にやりたい曲を作ろう"というテーマから入っていったんです。 だから、コード感とかもあえて今までやっていなかったものを使ったりしています。 “オシャレに聴こえるものはやめる”ということをバンドに課していて、ずっと9th以上のテンション・ノートを入れないことにしていたんですよ。でも、 この曲ではそれが炸裂していて、 ずっと13thの音が鳴っています。 どのコードにも、 11th /13thが入っているという(笑)。(山内総一郎)