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7.恋文 【#一週間クドリャフカ】

「だって、すきでした」
「だいすきでした」
「ほんとに、ほんとにだいすきでした」

リトルバスターズ! クドルートより

最終回。
やっと書きたい事が書けるな、と思います。
もしもここまで読んでくれた人が一人でもいたのなら、この奇想天外な企画にも意味があったというものです。


能美クドリャフカというキャラを好きになってしまった理由は、それはもう星の数ほどあります。
が、今回はその中でも1つ、今まで言語化したことのないものに目を向けてみたいと思います。



ズバリ、

彼女が、約束された「負けヒロイン」であることです。
※クドわふたーには一旦目を瞑ります。


言い方があまりにも悪いことは承知の上です。
でも、Key作品って基本的に「本筋」が一つあって、他のヒロインのルートはそれを補佐するというか、最終的に本筋に繋げるための布石でしかない、みたいな構成が大半じゃないですか。
リトルバスターズ!も例外ではありません。小鞠、美魚、唯瑚、葉留佳、そしてクドリャフカ。
みんな、あくまで「メインヒロイン」ではなく、理樹と鈴が強く生きていく力を身に着ける為のサポーターなのです。
その過程で理樹と結ばれることはあれど、彼女らにその先の未来は用意されていません。
最終的には奇跡を起こして全員帰ってくるんですが、でもやっぱり正ヒロイン(?)が鈴であることは殆ど揺るがないでしょう。

争った結果とかじゃなく、最初から理樹と鈴が結ばれなくてはならない、と決まっている以上「負け」というのも変な話ですよね。
どうしても適切な言葉が思いつかず、いささか俗な表現になってしまったことはお許しください。
でも、彼女が鈴の立場にいないことが、最終的には二人を見送る立場にあることが、どうしようもなく大きな意味を持つと思っています。


またこの話か、となってしまいますが、別エンドですよ。別エンド。
発言から見るに、理樹がクドを救ったことは1度や2度ではなさそうです。少なくとも本エンドと別エンドで2度、後はきっと描かれていない所で何度も。
それに気づいている以上、同時に「自分はこの世界の外に出て行けない」ことにも気づいているはず。
自分にはこの先理樹と二人で過ごせる未来なんてないことを知っていながら、そしてそれを受け入れていながら、

「あなたは、私の、好きなひとなんだなぁって」
「思ってしまったじゃないですか」
「もう手放したくないって」
「私……思ってしまったじゃないですか…っ」

最強

「黙ってこのまま…」
「そう思ったのに…やっぱり」
「やっぱり、離れたくない、って思ってしまったじゃないですか…っ」

最強すぎる

最強

ここ読んでてバカみたいに泣いてしまいました。声がね…もうね…涙声すぎるしね…うん…ね…
だって修学旅行手前ですよ、もうすぐこの周回終わるんですよ、ループの外にはクドリャフカは居ないんですよ、それでいてこの会話ですよ?
「世界の秘密」を知ってしまった今、もう今までみたいに「問題が解決して結ばれたね、よかったね」では済みません。ここでリトルバスターズ!の物語が完結するわけではないと、知ってしまいましたから。

それでも、

「…『帰った』ら…」
「見なくちゃいけないものがあるんです」
「一緒に、見てくれますか?」

リトルバスターズ! クドルートより

あくまで叶わぬ夢に過ぎない(筈だった)ことだけど、こんなささやかな夢を語れるぐらいには、前を向くことができたのです。

そして、その後、


タイトル画面に戻ります。




ねえええええええええええええええええ!!!!!!!!!

暫くタイトル画面で放心していたのを思い出します。
ま、これが「グッドエンド」と言われても「トゥルーエンド」と言われてもどこか腑に落ちないですから、スタッフロールすら流れないのもわからなくもありません。
わからなくもないですが、気分的にはAlicemagicがとっても合います。
余談でした。




クドリャフカが最強の「負けヒロイン」として完成される、とあるシーンの話をします。(あんま負けヒロインって書きたくないですね)
本編クリア後にもう一度本エンドをクリアすると、とても素敵な話を聞くことができます。


「片想いだったですから」
「…最初から、片想いでしたから」
「片想いなのは、変わりませんから」
「最初から…私の気持ちは、変わらないままでした」

ああああああ

退場シーンというやつです。
問題を解決したヒロインは一人ずつこの世界から消えていく。彼女たちが消えることによって、この世界は前に進み、理樹と鈴が現実に出ていく時が近づきます。

それを見せてくるか!と。
一度攻略したヒロインのルートには入れなくなる(選択肢が選べなくなる)ことで匂わせてはいたんですが、その瞬間を明確に描いているのは多分葉留佳と佳奈多、そしてクドだけです。


たった今まで隣にいたヒロインが目の前で退場する衝撃。
そういう話だとわかっていても、やっぱり寂しいし悲しいし辛いです。
そして、クドリャフカは
・自分の恋は、ずっと片想いだったこと
・居場所がないとずっと思いこんでいた自分にも、確かに居場所があったこと
・後悔を捨ててはいけないし、捨てられるわけがないこと
色んなことを思い返し、理樹と鈴に自分の想いを託し、そして消えていきます。

「後悔しています」
「これからもずっと後悔し続けるでしょう」
「でも好きだと伝えたその先に日常があったように」
「後悔を抱き続けたその先にも…」
「…その先にも日常があったのでしょう」

ああああああああああああ

彼女にとっての後悔って、「母親の元に帰らなかった」ことだけじゃなくて、「理樹に好きだと言いたかった」ことも含んでいるんですよね。
学校を案内してくれた時、他の人と違って自分のことを笑わず、優しく接してくれた。本当にそれだけのことで、それだけの温もりで理樹を好きになってしまったクドリャフカは、ずっとずっと一途でした。
現実では告げる事の出来なかった、「好き」という気持ちを大切に抱えたまま、彼女はこの世界を去っていくのです。
理樹の隣にいるのが自分ではないとしても、未来のある二人の為に、クドリャフカはそっと立ち去るのです。


「Прощайте」


もうこれ以上何を言う必要があるでしょうか。
最高のヒロインですよ。彼女は。

ずっと一人ぼっちで。
ずっと後悔ばかりしてきて。
ずっと居場所を探し続けてきた。
そして、この世界で思い人と結ばれてからも、ずっと追い詰められたままで。
それでも、束の間の温もりだけで彼女は満たされ、未来のある二人のことを想って去っていくのです。


こんな深みがあると思わないじゃないですか?普通。
味がするとかそういう次元ではありません。いい加減にしてほしい。
あのキャラで、あの声で、あの第一印象から、こんな事になるなんて誰も思いません。

だって、あんなにも後悔だらけの日々を送ってきたクドリャフカが、やっと幸せらしき幸せを得る事が出来たのに。
それは自分のものじゃない、と、その幸せを手放して。
あんなに後ろ向きだったクドリャフカが、最後にはただ前を向いて、理樹と鈴の幸せだけを祈って消えていきました。
その心情の変化を喜ぶよりも先に、クドリャフカが居なくなる悲しみが勝ってしまいます。本当に。


もっと笑ったり泣いたりしてほしかったし、もっと幸せになって欲しかった。
いや、これ以上泣かなくてもいいか…。あれだけ苦しんだし、苦しいことと正面から向き合えるようになったのだから、これからはただ幸せになって良いと思った。

わふーという口癖のことは結局良く分からなかったけど、その立ち居振る舞いはただただ可愛かった。
純情、一途、色んな表現があるけれど、クドリャフカの想いはただただ沁みた。
だから彼女が理樹と結ばれないこと、「メインヒロイン」ではないことがどうしようもなく辛くなった。

その後ろ向きさ、逃避的な態度に少しだけ自分を重ねてしまう瞬間があって、だからそういった心の問題としっかり向き合って描かれた2つの結末には強く胸を打たれた。
今まで私はゲームのシナリオの考察なんて殆どしてこなかったし、物語の表面にあるものを受け取れればそれで十分だと思っていたけれど、それじゃ気が済まなかったのは初めてだった。
明るい話でも楽しい話でもないけれど、私はそれでもリトルバスターズ!というゲームに、能美クドリャフカという人物に、少しだけ背中を押してもらえた気がした。

現実で壁に直面していて、色々と逃避したい時期に遊んでしまったからこそ余計にハマったのもあるかもしれません。
それでも、今まで色々な作品を遊んできた中で、こんなにも一人のキャラに思い入れを抱いたことはありませんでした。
素敵な物語であればあるほどに「読み終わってしまった」事に対する喪失感が凄いけれど、この喪失感すらも愛しく思えます。
能美クドリャフカ。彼女のことは一生忘れません。




さて、ここで終わるのはフェアじゃありませんね。
「リトルバスターズ!」という作品が、最後の最後に見せてくれた優しさの話をして、この記事を終えたいと思います。

他の仲間たちと一緒にクドリャフカも帰ってきて、絵空事だった筈の約束を果たすことになって。
己の後悔を受け入れた証として、母親から最後に送られたビデオメッセージを観ることになります。
母の死を受け入れることは、どれだけ辛かったでしょうか。
どんなに辛くても、悲しくても、涙が止まらなくても。彼女は母親の姿から目を逸らさず、その言葉を受け入れ、全てを見届けました。


僕の好きな女の子は、泣きながら、笑いながら。
顔を涙でべとべとにしながら、それでも、だからこそ。

「こすも、なーふとに、なりたいですっ!」
力強く宣言した。

リトルバスターズ! クドルート エンディング

彼女は果たして立派な「こすもなーふと」になれるのでしょうか。それは、誰にもわかりません。英語はこれから物凄く頑張らないといけないし
でも、こうして奇跡が起きて、現実に帰ってきて、後悔を受け入れることができるようになったクドリャフカなら。
きっと、前に進んでいけることでしょう。


#一週間クドリャフカ
おしまい。


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