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【インタビュー】同人作家・ひぇとるが活動を始めたきっかけとこれから【同人活動】

はじめに

皆さんは、「同人活動」というものをご存じでしょうか?

同人活動とは、「自分で企画を立ち上げ、作品を発行する」ということ。

かなりざっくり説明すると、個人出版で本を出すことを指す場合が多いようです。

同人活動によって生まれた作品は、コミックマーケット(以降、コミケ)をはじめとする多くの同人イベントで販売されています。イベントへの出展はプロやアマチュアの垣根がありません。そのため、誰もがひとりのクリエイターとして作品を出すことが可能です。

そんな同人作家が何を考えて本を出すのか、興味ありませんか?

今回は、同人作家のひぇとるさんをゲストにお招きし、同人活動のきっかけや今後の展望について伺いたいと思います。

※ちなみに、「同人」の本来の意味は、以下のようになります。

「同じ目的を持って集まり、同好会・結社などを作るなかま」

「同人」.見坊豪紀・市川 孝・飛田良文・山崎 誠・飯間浩明・塩田雄大.『三省堂国語辞典』第8版[辞書アプリ],株式会社三省堂.辞書by物書堂,<mkdictionaries:///SANKOKU8?text=<同人>>,(2023-10-7).

したがって、昔は趣味嗜好が同じ仲間たちで雑誌を作ることを同人活動と呼んでいました。最近では、音楽やゲームなど様々なジャンルでも「同人」という言葉が使われるようになり、「同人」そのものがひとつのジャンルとして確立しています。


ひぇとる/同人作家
20↑好きなものを好きに書くデフォルメ化が癖な絵描き


同人活動きっかけは「語り合える友達作り」だった

―― 同人作品を制作し、イベントに出展されているひぇとるさんですが、イラストの投稿などは昔からされていたんですか?

ひぇとる:いえ、もともと私はROM専(掲示板などを読むだけで書き込みをしない人)だったんです。ネットに投稿することにも興味があったんですけど、勇気がなくて……。イラストを描くのもアナログだったので、同人活動を始める前は、リアルの友人に自分の絵を見てもらうというところまでで満足していました。

―― 何がきっかけで同人活動を始められたのでしょうか?

ひぇとる:きっかけは、好きな作品について語り合える友人を探そうと思ったことでした。

私がとあるコンテンツにハマったときに、その作品を好きな人が周りにいなかったんです。でも、好きなものができたら、誰しもそれについておしゃべりしたいじゃないですか。だから、私も周りの友人たちにその作品の良さや好きなところを話すんですけど、どうしても私の話を聞いてもらうばかりになっちゃって。

もちろん、話を聞いてくれるだけでもありがたいんですけどね。それでも、「これ良くない?」とか「あれ最高!」みたいな感じで語り合いたいって気持ちがどんどん強くなって……。そうなったときに、同じコンテンツが好きな友人をネットで探そうと思い、同人活動をするようになりました。

―― 友達作りがきっかけだったんですね。最近はいろんな形で同人活動ができますが、イラストを選んだ理由はありますか?

ひぇとる:自分のアピールポイントって何だろうと考えたときに、イラストが好きなことかなあって思ったんです。ネットに絵を載せることにも興味があったので、いい機会だと思ったところもありますね。

同人活動をすると決めてからは、自分の名刺代わりに好きな作品のイラストをネットにあげました。自分なりに、何時に投稿したらいろんな人に見てもらえるかな、とか考えたりして(笑)。

そうやってイラストを投稿しているうちに、だんだん友達ができて、好きなコンテンツについて語り合える仲間がたくさんできました!

―― 目的達成ですね! おめでとうございます!

ひぇとる:ありがとうございます(笑)。


イベント初出展で得た実感。同人活動を支える言葉の数々――

―― さて、好きなものを語り合える友達ができたわけですが、そこからイベントに出展するようになったのはなぜですか?

ひぇとる:ネットの友達の何人かが「グッズは出さないの?」「本作ればいいのに」って声をかけてくれたんです。友人の中には活発に活動されている作家さんもいたので、「次のイベント出るんだ」みたいな話もよく聞いていました。そういった会話を聞いているうちに、私もイベントに参加してみようかなと思ったのがきっかけですね。

―― 仲間からの勧めがあっての出展だったんですね。では、実際に同人イベントに参加してみた感想をうかがってもよろしいでしょうか?

ひぇとる:イベントに参加するということ自体が嬉しかったです。私、中学生のときから同人誌を買っていて、そのころから「同人誌は買うものだし読むもの」と認識していました。なので、自分がイベントに出展するイメージがなかったんです。

だけど、イベントの内側に入って、自分のブースのセッティングをして、隣のブースの方や他のブースの方に挨拶して……ようやく席についたときに、「私、イベントに参加してる」って実感が湧きました。私が作り手側になっていると感じたことがすごく嬉しかったですね。

―― 出展しないと味わえない感覚ですよね。ひぇとるさんのブースにもお客さんが来てくださったそうですが、そのときのお気持ちをうかがってもよろしいでしょうか?

ひぇとる:イベントに参加するまでは、私がイラストをネットに投稿して、絵を見てくれた人からいいねをもらって、コメントをしてもらってというやり取りまでしかありませんでした。

もちろん、それ自体もすごく嬉しかったんですけど、出展側になってより視覚化されたというか……私の創作物を買いに来てくださる方が本当にいるんだって思いました。

―― 自分の作品を見てくれている人に対する実感が強くなった感じでしょうか?

ひぇとる:そうですね。直接お話しもできて、とても嬉しかったです。

―― そうなんですね。今後もイベントに参加される予定とのことですが、同人活動のモチベーションになっているものは何ですか?

ひぇとる:私、承認欲求の化け物であると同時に、自己肯定感の化け物でもあって。びっくりするぐらい自分の絵が大好きなんです。

自分は絵が上手いと思っているわけでもないですし、過去の絵も下手なものばかりなんですけど……。今日も過去の絵を見て、「下手だなあ、よくこれでお友達になってくれる人がいたなあ、主観が強いというか、自己解釈ばっかりだなあ」と思うところもあったりして……。

それでもやっぱり自分の絵が好きで、自分の好きなコンテンツに対する自分なりの解釈が好きなんです。その解釈を形にしたいし、自分でも見たいし、人にも見てもらいたいと思っていて。「これ描きたい! 描こう! 見て!」という気持ちがモチベーションになっていますね。

―― ご自身の「好き」が原動力になっているんですね。

ひぇとる:そうですね。

―― 同人活動をしている中で、気持ちが落ち込んだりするときもあると思います。そういったときはどうやって持ち直していらっしゃいますか?

ひぇとる:私のスマートフォンには承認欲求というフォルダがあって、そこには人からいただいた感想やリプライをスクリーンショットで撮ったものを保管しているんです。気持ちが落ち込んだり、仕事が忙しくて疲れたりしたときは、そこに保管しているものを読み返したりしてモチベーションにつなげています。

あとは、過去に自分が書き貯めたプロットを見たり、妄想ツイートを見たりして創作意欲につなげていますね。

―― 承認欲求フォルダ(笑)。とても素敵ですね!


同人活動の芯となる「萌え」。ひぇとるさんが最も大切にしたいものとは

―― これからも同人活動を続けていくうえで、大切にしたいもの、活動の芯になるものはありますか?

ひぇとる自分が萌えるものをつくる。普段から自分が描きたいものや自分が楽しいって思うもの、自分が好きだなって思うものを作るようにしています。だから昔の絵を見て、下手だなって思っても、イラストから楽しそうに描いたことが伝わってくるんです。

私が描いているものは万人受けするものではないと思っています。私が萌えると思っても誰かにとっては解釈違いだと思うし。でも、自分が描いた作品を自分が一番好きなら、もし誰かに否定されても自分の情熱を感じられるからいいやって。これからも作品に対する自分の愛を一番大切にしたいですね。

―― とても素敵ですね。ちなみに、これから挑戦してみたいものはありますか?

ひぇとる:今ハマっているコンテンツはもちろん、ほかのジャンルでも本を出したいと思っています。あと、今一番挑戦したいことは手描き動画ですね。

―― 手描き動画というのは?

ひぇとる:手描きイラストの切り抜き動画のようなやつです。配信者さんやアイドルの方の日常のワンシーンをピックアップしたような。

―― あ~! ファンメイドで最近流行っているやつですよね!

ひぇとる:そうです。あれで描きたいやつがあるんですよ。でも、動画は作ったことがないので、大変かなって思っていて……。どうやって始めようか考えています。

―― 新しい挑戦もとても楽しみです! それでは最後に、この記事を読んでくださっている方へひとことお願いします。

ひぇとる:同人活動に少しでも興味がある人に向けた内容になるんだと思うんですけど、同人活動をしたいと思ったときには思い切って始めてほしいなって思っています。

私も大人になるまでイラストは描いていたし、同人誌を買ってはいたんですけど、同人活動自体は勇気がなくて足踏みしていました。でも創作を始めてからとても素敵な出会いがあったり、楽しい気持ちを共有することができたりして生活がとても充実したんです。

それに同人活動する人が増えると純粋に界隈がにぎわうので、いろんな萌えに出会えるのは喜びだなと思っていて(笑)。

「自分は描くのはちょっと……」って方でも、推しの同人作家がいたらいいねひとつでも、マシュマロひとつでも……それが匿名でも鍵アカウントでも、応援してくれたら、作家さんのモチベーションになります。

同人って、描き手と買い手の双方がいて成立するものだと思うので、興味があればぜひ参加してみてください! と思った次第です。「同人おもしろいよ!」ということを伝えたいです。


おわりに

ご自身の「萌え」を形にされるひぇとるさん。イラストや漫画はもちろん、動画にも挑戦されたいとのことで、次回の作品もとても楽しみですね。

また、同人活動に興味のあるかたへの熱いメッセージもいただきました。もしこの記事をきっかけに創作を始められる方がいらっしゃいましたら僕も嬉しいです。

こちらのnoteでは今後も様々な方をお招きし、その方の思考や嗜好、至高とは何か深掘りし、皆さまにお届けしたいと思います。

次回の記事もお楽しみに。


執筆:明坂凉汰
イラスト:ひぇとる、いらすとや
スペシャルサンクス:なつめぐ

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