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ゼルダBotWはなぜ「薄味」で、なぜ「楽しい」のか。

2018年1月17日
末尾に重要な解説を追記しました。ゼルダBotWが「薄味だからこそ楽しい」理由を踏まえたときに浮き彫りになる「ゼルダBotWの決定的にダメな点」の解説です。

『ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド(以下 ゼルダBtoW)』はなぜこんなにも楽しいのだろう。

本当に本当に楽しくて、ご飯や睡眠も忘れて延々と遊べてしまう。自分はコンプリートするまでの270時間を、飽きたりダレたりすることなく存分に楽しむことができた。

自分はこれが不思議で不思議でならなかった。どこへ行っても同じ敵ばかりだし、どの武器も威力が違うだけで特徴はないに等しい。ストーリーも希薄だし、NPCのセリフも淡泊だ。狩りをしても手に入るのは同じ肉ばかりだし、料理システムも浅い。ミニゲームも単純すぎる。(ついでに言うと色も全体的に薄い)

個々の要素を考えてみると、どれもこれもかなり「薄味」だ。改めて振り返ってみると「個々の要素は退屈なのに、なんでこんなに面白かったんだろう…?」と疑問に思ってしまったほどだ。

でも、BotWは実際にものすごく楽しかった。その謎をちょっと掘り下げていきたい。


ブレスオブザワイルドの「薄さ」

まずはゼルダBotWがどれだけ薄味だったか解説したい。(なお、これはゲーム上級者である私の視点だ。ゲームを多く遊んでいない人にとってはこの味付けでも十分に濃く感じるのだろうとは思う)

○物語の薄さ

メインストーリーはとにかく薄味だ。基本的に必要最低限の状況と目的を説明するだけで、まともな会話もかなり少ない。記憶を取り戻す際に見られるムービーはドラマチックではあるが、それも情報量はあまり多くない。冒険中に出会うNPCとの会話も、物足りなさを感じるレベルで必要最低限だ。

○バトルの薄さ

戦闘は基本的に近接武器で殴るのが基本。特に技の使い分けやコンボなどはほとんどなく、近づいてボコボコ殴るだけで良い。回転斬りやステルスキル、ジャンプ斬り、盾パリィ、ラッシュなど工夫できる要素はあるものの、難易度が低いため基本的には近づいてボタン連打するだけでいい。盾もだいぶ万能だ。ボスもそこまで考えることはなく、適当に戦えばアッサリ勝ててしまう。

武器も同じようなものばかりだ。「片手剣」「両手剣」「槍」の3カテゴリがあるが、同カテゴリの中での個性付けは実質「攻撃力」と「耐久力」のみ。ごく一部の武器には特殊効果があるものの、使い分けの必要はなく、基本的には一番強いのを拾って適当に使い捨てるだけでいい。

敵も基本的には色違いばかり。色によって攻撃パターンが多少は変化したりするものの、ほぼ同じ戦法で倒せるのでここに関しても物足りない。

ゲーマーとしての心情としては、リンクが剣技を覚えて状況に応じて使い分けられるとか、武器ごとにリーチや振る速度が違うとか、武器固有の特殊スキルがあるとかそういうのが欲しくなってしまう。過去作では「フックショットで鎧を剥がして弱点をむき出しにする」みたいな要素もあったのでそういうのも欲しくなってしまう。

○謎解きの薄さ

世界に散らばる「祠(ほこら)」はゼルダらしさ溢れる謎解き要素だが、1つの祠につき10分程度でサクっとクリアできるようになっている。また祠内部も2~3部屋を順番にクリアするだけで、全体を使った大がかりな仕掛けは皆無に等しい。過去作では「なるほど素晴らしいレベルデザインだ!」などと唸ることは何度もあったが、今回はそういった感動はほとんど無かった。

世界に4箇所ある「神獣」は大きなダンジョンで、ダンジョン全体を変化させる仕掛けを活用してクリアする本格的な謎解きではあるが、これも過去作と比べると短時間でクリアでき、謎も数カ所のポイントに触れるだけでよく、ちまっとした印象がある。

特筆すべきは難易度の低さだ。単純に謎の難易度が低いのもあるが、ほぼ全ての謎は複数の解き方が用意されており、強引に解けてしまうことも要因だ。プレイしていて悩む場面はなく、淡々と解いてしまえて、自分としてはかなり物足りなさを感じた。単なる弾転がしゲームの祠や宝箱が置いてあるだけの祠など、謎解きですらない祠も多かった。

他の要素もこのような感じで「薄さ」を感じる作りになっている印象だ。料理は結局「同じ素材を5個煮る」に終始するし、ミニゲームは単純すぎて数回遊べば飽きる程度だ。コログもパターンが分かれば単純作業。


「薄味」だからこそ「楽しい」が生まれる?

それでも、ゲーム慣れしていない人にとっては十分な味付けになっているのだろう。が、ゼルダシリーズ最新作であり最も手間をかけて作られた超大規模タイトルであることを考えると、異常なほどに薄味な調整となっていることは確かだ。

『ゼルダBotW』は当初WiiU用タイトルとして製作されており、Switch版へ移行するにあたって十分な開発期間が追加されたと聞く。なので作業量や製作期間の都合で仕方なくそうなってしまったわけではないはずだ。もちろんゲームデザインのノウハウに関しては世界一を誇る任天堂だ(断言)。この薄味の調整はゲームとして楽しくするための意図したものであるはずだ。

「薄味にしたら楽しくなる」とはどういうことなのだろう。

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