今年、GRAPEVINEのライブには参加しないと決めた話

みんなさん、如何お過ごしでしょうか。

先日発売された、GRAPEVINEのNEWアルバム「新しい果実」はもう聴かれましたか?
聴かれましたよね、聴かれまくりましたよね。

僕はというとまだ6周程しかしていません。
というのもバインの新譜は体にある程度入るまでは垂れ流さずに、心にも時間にも余裕のあるタイミングで丁寧に聴きたいというのが信条でして。
まだ全てのアレを咀嚼し切れてない状態です。

でも先に配信された3曲も、その他の曲たちも凄く良かった。うん、凄く良いと言うことしかまだ分かっとりません。そんないちファンです。

そして言うまでもなく、GRAPEVINEはライブがそれはもう素晴らしいもので。
音源を聴いてた時に生まれた気持ちもそれはそれで変え難く大事なものですが、生で聴く彼等の演奏と歌は、その気持ちを、景色を、より深い層に連れて行ってくれるようなそんな感じがするんです。

思えば、生でバンド演奏を聴いて初めて泣いてしまったのもバインでした。

そんな、新譜が出てツアーがありゃ毎年可能な限り参加してた僕なんですが、今年は断念。
行かない事に決めました。



話は去年の11月。



GRAPEVINEのライブの為に、会場である某O阪のOリックス劇場に向かっていた。

世間は今と変わらずコロナ真っ只中。
けれど感染拡大地域を除いては緊張感がある程度溶けていたような、そんな状況にあった気がする。
正直、周りで感染した人に出会ったことがないのもあって(手洗いうがいにマスクしてりゃ大丈夫でしょ)くらいの感覚でしかなかった。

事前にチケットを購入する際、そのページには注意事項として、あるアプリをインストールすることが必須として書かれていた。

ご存知の方も多いだろう。
厚生労働省から提供された、コロナ感染者と接触した場合にそれが通知されるという、大変便利(皮肉)なあのアプリ。

このアプリがより効果的に機能するには、言うまでもなく国民がひとりでも多く使用することが大前提であるけれど、どうやらそうでもない事はニュースやら何やらで耳にしていた。
まぁ自分も入れてなかったしね。

(これがどれ程の予防になるのだろう)

購入後その場でアプリをインストールしつつもどこか半信半疑だった。
今となってはその時から嫌な予感のようなものを感じていたのかも知れない。

当日。

早めに起きて、誰に見せるでもない髪をいつもより時間をかけてセットする。
道中チケットを取り出して、そこに書かれている決して良くはない整理番号をニヤニヤ眺めてはまた大事に仕舞いながら、辿り着いた。

会場に目をやる。

混雑を防ぐ為に並べられたコーン
入り口のドア
その周りに置かれている長い机

それらの全てに、QRコードの書かれた紙がびっしりと貼られていた。

大勢が、それにスマホをかざしているのが見える。

その集まりは、【インストールしてから今までに接触したコロナ感染者の数がわかる】というアプリを、今、ここでインストールしていた。

所狭しと貼られていた紙は、そのような事態になることを会場側が予期していたという証明に他ならなかった。
「アプリをお待ちでない方はここからインストールして下さい」という声すら聞こえて来る。

今考えれば、所謂"意識の欠けた"人たちだけではなかったのかもしれない。
僕と違う方法でチケットを購入した人にはその規約が書かれていなかった可能性はある。
書かれていたとしても、こんな例年に無い注意書きは見逃してしまったとしても多少は仕方のないような気もする。

楽しみな気持ちにすっかり水を差された気分になっていた僕にはそんなことに思いを巡らす余裕も無く、その光景を尻目に入り口へ向かった。

アルコールで手を消毒し、検温をする。

その先には例のチェックをするであろうスタッフが立っている。アプリを立ち上げる。

過去△△日間、陽性者との接触はありませんでした」といった内容が画面に表示される。
もちろん△△には、アプリをインストールしてから現在までの日数が入る。

(今外でインストールしている人たちは、この画面に「0日間」て表示されるんやろなぁ。それを見せて何の意味があるんやろう?)

そんなことを考えながら向かう。

入り口のスタッフに画面を見せると、何やら困ったような顔をして僕に言った。

「すみません、このアプリをインストールした時に、登録完了のメールが送られて来たと思うのですが。」

「あったような気もしますが…、この画面では駄目なんですか?」

「登録完了のメール画面を見せて頂き、ご入場頂いております。」

「登録したからこの画面が開けてる訳ですし、これを見せないと意味が無いと思うんですが…、メール画面じゃないと駄目ですか?」

「すみません。」


求められていたのは「私は感染していません」という証明ではなく、「とりあえずインストールはしましたよ」というポーズだけだった。


1ヶ月前に届いたメールを探すのも面倒で、僕は一度外へ出て先程の人たちの中に混じり、QRコードを読み取りアプリを再インストールした。

そして数秒後に届いた登録完了のメール画面を見せると、さっきのスタッフはあっさり僕を中へと通してくれた。


アルコールで消毒をする。
検温をする。
あちら側が、もうひとつ何か目に見えて実施出来る感染対策がないか?と考えれば、頼りないとは言え、例のアプリを活用することは間違いだとは思わない。
その意義が空っぽなことが問題だ。

その場でインストールするのは論外として、以前から入れていた人にすら、何日間感染者との接触が無かったのかを確認するのではなく登録完了のメールだけを見る。

これがポーズでなければ何なのか。

この杜撰な感染対策が全国どの会場でも行われていたかは知らない。
そもそもこの案がどの程度上から指示されたもので、どれだけのアーティストの公演に適用されていたのかもわからない。

今はそんな事はなく、しっかりとした感染対策が為されていて、あの時居た人たちの意識も随分と違ったものになっているのかもしれない。
きっとそのはず。けれど。

こんな状況下でGRAPEVINEのツアーが発表されて凄く嬉しかった筈が、ワクワクする気持ちの中に"けれど"がずっと頭の中にあって、これではいつものように楽しむことは出来ないなと悟った。



という訳で、僕は今回のツアーには行かないでおこうと思った次第です。
只、自分がそう決めたというだけの話です。

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