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井の中の蛙(1)

これは、あるオス蛙のお話...


ここは日本のとある井戸の中。

あるオス蛙がその家族や友達と一緒に暮らしていました。

オス蛙は過保護に育てられ、跳ぶ力がとても弱かったのです。

仲間の蛙達はたくさん跳ぶ練習をしていました。みんな、成長すると井戸から出て行きます。外の新しい世界へと。

オス蛙は外の世界へと旅立つ仲間を羨ましそうに眺めていました。しかし、高く跳ぶことへの恐怖が大きな壁となって、オス蛙の前に立ちはだかりました。

しばらくして井戸の中には、友達はほとんどいなくなりました...
少し前まで、井戸の中にはオス蛙と同年代のメス蛙がたくさんいました。
しかし今はメス蛙もほとんどいなくなってしまったのです...

ようやく蛙は高く跳ぼうと決意し、跳ぶ練習を始めました。
外の世界に行くため。
外の世界で素敵な出会いを探すため。


蛙が練習を始めてから幾週か経つと、外の世界が見えそうになりました。
そう、井戸から出ることは、オス蛙が想像していたほど大変なことではなかったのです。
しかし、まだ井戸から出ることには成功しません。


ある日、井戸の出口に手が架かりました。蛙は初めて外の世界を見ました。
なんと、そこには美しいメス蛙がいました。オス蛙は美しいメス蛙に見とれて手を放してしまい、井戸の底に落ちてしまったのです。

外の世界を少し見ただけのオス蛙は、その美しいメス蛙に恋をしました。

高い所から落ちたオス蛙は怪我をしてしまいました。怪我を治すために、井戸の中でしっかりと休まなければなりません。
美しいメス蛙を想う日々が続きました。

...

しばらくして、オス蛙の傷は癒えました。
「さぁ行くぞ」
オス蛙は跳びました。再び井戸に手が架かりました。

外をよく見てみると…
そこには全く新しい世界がありました。

以前に跳んだ時に見たメス蛙とは別の蛙がたくさんいたのです。
そのうちの何匹かがオス蛙の近くにやってきました。

出口に手をかけたまま、蛙は話をしてみました。いい蛙ばかりでした。オス蛙はそこにいた蛙達と仲良くなりました。

そして、いつの間にか、美しいメス蛙への気持ちが薄れていったのです。


蛙はこの時始めて知りました。
「外にはいろんな蛙がいるんだなぁ」と


その後、オス蛙が外に出れたのか、はたまた落ちてしまったのか...

それは第2話にて

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