扁桃炎

●扁桃炎とは?

みなさんは、扁桃 という言葉を聞いたことはありますか?
扁桃腺 という言葉で聞いたことがある人もいるかもしれませんね。

正確には、扁桃「」という言葉は間違いで、「扁桃」だけでいうのが正解です。
なぜなら、「腺」という漢字は、「何かを分泌する臓器」につく漢字です。
扁桃は何かを分泌するわけではないので「腺」はつきません。

では、扁桃はどこにあるでしょう?

扁桃が大きい人だと、口を大きく開けると奥歯が生えそろった1番奥にぽこっと飛び出た部分が見えるかもしれませんね。それがみなさんが扁桃と言っている「口蓋扁桃」です。

実は、これ以外にも扁桃組織はあります。

鼻の奥のところにある「アデノイド
ベロの奥にある「舌扁桃

これらも全て扁桃の仲間です。


ただ、扁桃炎というと口蓋扁桃が炎症を起こしたことを言いますね。

確かに他の扁桃が口蓋扁桃ほどの炎症を起こしているのはみたことがないので、わざわざ「口蓋扁桃炎」とは言わないのでしょう。

ところで、扁桃は何をしているかというと、リンパの塊であり、口や鼻から入ってくる外敵から体を守る門番のような役目をしています。

なので、バイキンが扁桃に捉えられ、それが扁桃で暴れ始めてしまうために扁桃炎になってしまうのですね。

守ってくれるのはいいですが、結局辛い目に合うのでありがたいやら、何やらという感じですね。

扁桃炎を起こすと、普段は小さい扁桃が大きく腫れ上がります(もともと大きい人はさらに腫れ上がります)
そして、扁桃の溝に白い塊が溜まり、真っ赤っかになります。
すごく痛くて、ご飯が食べられなくなる人もいます。
かなりの高熱が出ます。

さらに炎症が広がると、扁桃の周りまで腫れてくるので「扁桃周囲炎」という名前になります。
痛みはもっと強くなってきます。

ますます炎症が悪くなると、扁桃の裏側に膿が溜まることがあります。
これを「扁桃周囲膿瘍」といい、口も開かなくなるし痛すぎてご飯も水も取れなくなります。
こうなると入院治療が必要になります。

●原因は?

原因として1番多いのは大人は溶連菌という細菌、子供はウイルス性のことも多いです。
溶連菌の扁桃炎は重症化しやすく、長引きやすい傾向があります。
溶連菌は感染力の強い菌なので、感染がわかったら他の人に会わないように、家族の方はマスクの着用や手洗いうがいをしっかりして感染予防をしてください。

●検査は何をするの?

・溶連菌の迅速検査、培養検査

先ほどの溶連菌という菌は迅速検査(数分でわかる検査)があるため、この検査をしてある程度傾向を掴むことが多いです。
もし溶連菌ではなかったら、培養検査という菌の検査をして、原因の菌を調べます。
培養検査だと結果が出るのに数日かかります。

・ファイバー検査

鼻から細いカメラを入れて喉の奥まで観察する検査です。
この検査をすると、どのあたりまで腫れが広がっているか?が分かります。
特に、扁桃周囲炎、扁桃周囲膿瘍と炎症が広がっている場合、喉の腫れがひどいと息が詰まってしまうこともあります。
なので、この検査で呼吸が詰まってしまうことはないか?を最初にチェックすることが大切です。

・CT検査

主に、扁桃周囲膿瘍の時に行う検査です。
膿の溜まりやすい場所というのはある程度予測がつくのですが、やはりぴたりと当てることはなかなか難しいものです。
珍しいところにたまることもあります。
造影CTという、造影剤の注射をしながらのCTを撮影すると、膿の溜まっている部位が一眼でわかるため、この検査をしてから治療することも多いです。

・採血検査

炎症の程度を調べるときなどに必要です。

他にも必要に応じていろいろな検査が追加される場合があります。

●治療は何をするの?

・内服治療

炎症の程度が軽く、ある程度ご飯が食べられるようなら薬を処方し、家で休んでもらいます。
この時には抗生剤や鎮痛薬が処方されることが多いです。

・点滴治療

炎症が結構ひどい時は、点滴で抗生剤を投与することがあります。
やはり血管の中に薬を入れるので炎症部位に届きやすいのと、飲み込むのが痛い時には薬を飲まなくて済むのもあります。
喉が痛くて水が飲めない時には、点滴で水分補給することもあります。

・切開排膿

扁桃周囲膿瘍になってしまった場合には、膿の溜まった場所をメスで切り、中の膿を出すことがあります。
膿を出すと、痛みがかなり改善されるのと、治りが格段に速くなります。
麻酔をして切りますが、炎症が起きてただでさえ痛いところを切るので、結構痛そうです…

・安静

薬などはもちろん処方しますが、体が回復しないことには治るものも治りません。
最近はコロナウイルスの流行もあり、発熱しているのに無理して働くことは減ったと思いますが、やはり体が弱っている時には休むのが1番です。

・禁煙

扁桃炎が重症化する人、扁桃周囲炎や扁桃周囲膿瘍までひどくなってしまう人は、喫煙している方が多いです。また、一旦治っても再度悪くなり、戻って来てしまう人も喫煙者の方が圧倒的に多いです。
少なくとも治るまでは(できればその後も)禁煙していただいた方が治りは確実に良くなります。

●治ったと判断するタイミングは?

・ご飯が食べられる

食事も取れずに入院していたような方は、ある程度食事が取れるようになれば退院の目安となります。

・採血で炎症の数値が下がる

最初に採血で炎症の数値を測っておき、その数値が下がってくると治ったと判断する材料になります。

・扁桃の腫れが良くなる

真っ赤に大きく腫れていた扁桃がだんだんと小さくなり、赤みも減ってくると治ってきたなと判断します。

他にも色々な所見から総合的に判断します。

●慢性化について

たまに、慢性化といって、扁桃炎がずっと続くようになってしまう人がいます。

やっと熱が下がって、登校・出社できたと思ったらまた炎症を起こす。
何となく、のどの痛みがすっきりしない(そしてまた痛くなってくる)

このような状態が数ヶ月続くようになることを言います。

慢性化すると、日常生活を送ることが難しくなり、常に体もしんどくなってきます。
熱が出るたびに、コロナの検査をさせられたり、また病院を受診するまで待たされたり…と辛い状況が続くことになってしまいます。

あまりに続く場合には、扁桃を取る手術をすることがあります(扁桃摘出術
この手術をすると、炎症を起こすもとがなくなるので扁桃炎を起こすことは無くなります。
ただ、手術をするには、少なくとも1ヶ月以上は炎症を起こしていないことが条件となります。なぜなら、炎症を起こしてすぐの扁桃はとても脆くなっていて取りづらかったり、血行が良くなっているので取るときに大量出血することがあるからです。

手術は予約制ですから、ちょうど体調の良い時に手術日がくる必要があります。
手術直前で発熱すると、また手術の予定の立て直しなってしまいます。

考えただけで嫌ですね。

扁桃炎になったのに喫煙していると、慢性化して、こんな辛い状況になってしまうかもしれませんよ?(脅し笑)


寒い冬の季節、耳鼻科ではよくみる感染症です。
喉が異常に痛い、ご飯が食べられないほどだ…
そんな時には耳鼻科に是非ご相談ください!

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