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「猫は小さな犬じゃない」Cat-Centered-Designなプロダクト開発(前半編、の予定)

Catlogは、ハードウェアもソフトウェアも、ベルトなどのアパレル的な部分も、すべてイチからオリジナルで創ってきています。いわゆるPdMとしては10年ほどやってるので色々なプロダクトを経験してきてますが、さすがにこんなに並行していろんなモノづくりしたことないので、「Catlogのプロダクト開発どうやってやっているか」を記録の意味もこめて書いていきます。たぶん長いです・・・今回は、すごく初期の話です。

「猫様専用」のワケ

なぜ創ろうと思ったか、は初回のnoteに書いたので省略しますが、Catlogは「猫様専用」のプロダクトとして開発しています。

ペット用のウェアラブルデバイスは、創業4年でペットフード大手Marsに買収されたWhistleを筆頭に、欧米を中心にここ数年で複数出ています。
ペットウェアラブルはグローバルでは、CAGR 10.34%と超絶成長市場でもあります。
ただ、その多くが「ペット用」とペット一括りになっていることが多く、結果的に「犬(特に大型犬)」向けに作られています。そしてペットのなかでも、犬と犬の飼い主さんを想定したユースケースを元に作られているため、デバイスとしては散歩経路取得や迷子時捜索のためのGPSを搭載している機器が多く、結果的にバッテリーが大きくなりデバイスが全体的に大きめです。


↓私が勝手にペットIoTデバイスを整理してる資料
(写真やロゴなどお借りしていますm(_ _)m)


↓CCOブリ丸にWhistleを装着した図。デカイ・・・

ブリちゃんは、細身の猫種(ショートヘアソマリ)ですが体重は4.6kgあり、オスということもあって体格いい感じなのですが、それでも装着するとかなり大きく感じます。デバイスも重ためで、装着した首輪が少したわんでいました。
Catlogは、Cat-Centered-Design(猫様中心設計)を掲げてプロダクト開発をしていますが、多くの猫様はお財布をお持ちではないかと思いますので「飼い主さんが猫様に着けたくなるデザインかどうか」という点もとても大事にしています。
他社製品をDisるつもりは全くないのですが、ブリ丸にいくつか装着してみたところ、大きく見える=猫様の負担になりそう、というのと、見た目のデザインが私の美意識を満たしておらず「可愛い猫様に着けたい!」とは思えず。。あとクリップのようなもので止める製品もあり毛が絡まって短毛のブリちんでも思いっきり毛が抜けたり・・・。
猫様は美しい生き物なので、美しいプロダクトしか着けたくないのです!!ワレワレは!!!!

また、猫様には大事なヒゲがあります。ヒゲは重要な触覚器官であり、毛根部分には感覚神経や血管が集中しており非常に敏感です。
なので、下を向いた時にヒゲにあたらないような薄型にする必要もあります。どれくらいの薄さなら、猫様は嫌がらないのか、これまたブリ丸に色々着けて検証しました。ヒゲにあたって嫌な場合には、舌で「取りたい取りたい」ってやって教えてくれました。↓このように。

バイオロギングにおいても、対象動物やその動物の取得したい行動によって、内蔵するセンサーや装着方法は違います。マッコウクジラとペンギンでは体の大きさも違いますし、採餌のための潜水行動など行動生態も違うためです(極端な例ですが)。

「犬は小さな馬じゃない。猫は小さな犬じゃない。

という言葉があるのですが、このとおりで、犬と猫は祖先こそ”ミアキス”という共通の生物が起源だと言われているものの、進化の課程で骨格から食べるものから行動生態などまったく違う生き物です。
例えば、特徴的な行動の違いだと、犬は基本的に二次元空間を移動しますが、猫様はジャンプが得意なため三次元空間で暮らす生き物です。これは、元来、猫が待ち伏せ型の肉食獣であり、待ち伏せた獲物を捕食するために鋭敏な平衡感覚と体高の5倍程度まで跳躍できる能力を持っているためです。大事なことなのでもう一度言いますが、犬と猫は全然違う別の生き物なんです。

ということで、「ペット用」ではなくて、「猫様に最適化した猫様専用」にする必要があると考えました。必要があるというか、そうしないと実際に使いたい・使える、価値のあるプロダクトにはならないと思っています。

プロダクトデザインのプロセス

まず、前提として「猫用のウェアラブルデバイスを創ろう!」から始めたわけではなく、猫様と飼い主のどんな課題を解決したいか、どんなプロダクトなら解決できるのか、から整理しました。


・猫は留守番得意だと思われがちで散歩も不要だから、忙しい人が飼いやすい(飼っている)のではないか
・多忙なヒトやマンションでも飼いやすいため、都心型のペットとして昨今の飼育頭数が増えたのではないか
・留守がちだけど猫をとても愛しているから外出先からも気にしているのではないか
・だけどやっぱり忙しいから「手間をかけずに」が大事なのではないか
・webカメラなど一部の人は使っているけど完全に満足できていないのでは(映らない&何しているか教えてくれるわけではないため)
・自分の飼い方はあっているのかなど漠然とした不安を感じているのではないか(犬の場合は、散歩中に飼い主同士のコミュニケーションがうまれるが猫の場合はどこの誰が猫を飼っているかもわからない)
・留守がちで様子があまり見れないし「ほんとに元気なの?」や、ちょっと異変があるといち早く知りたいのではないか
・でも「病気かな・・・?」とかネガティブなことを気にするよりも、猫を近くに感じるような使っていて楽しいポジティブなプロダクトが欲しいよね

などなど

自分の体験から発想していることもあり、これらを課題仮説としてまずは整理しました。「課題」というと仰々しいですが。
私は生粋の猫好きで、実際に猫も20年以上飼ってきましたが、とはいえこれが本当に他の飼い主さんたちも感じている課題なのか、というのを検証する必要があるため、まずはWEBで調査を実施しました。「創り手の当たりまえが、使い手の当たりまえではない」というのを、プロダクトやサービスを創るときには肝に命じるようにしています。
ちなみに、このWEB調査を初回実施したのは、まだ会社も登記する前でした(正確には法人としてやるべきかを検討していた時期)。

調査というと主に定量と定性がありますが、定量を先に実施する場合と定性を先に実施したい場合と、明らかにしたいことによって変えています。今回はベースとなる実体験に基づく課題の仮説があり、その課題を抱える人が存在するのか/どれくらい存在するのかということを検証したかったため定量調査から実施しています。
あと、「猫が心配ですか?」って聞いたらフツーのまともな飼い主さんは「はい」って答えるので、そういう設問ではなく「どれくらい猫を留守番させているか」などのファクトベースで回答できるように設問設計しました。

※余談ですが、リクルート時代にかなりアンケート調査やインタビューを実施してきたため、そんじょそこらの調査会社よりも設計からモデレートまでやれる自信がありますっ


結果、
■猫を飼っている人で約8割以上が週1日以上留守番させている
■そのうち、1日5時間とか8時間とか長時間留守番させている人も6割くらいいる
■留守中の猫の様子が気になっているにも関わらず対策できていない人も約6割

など、私が感じていたようなことと同じようなことを感じている飼い主さんは多そうだということが検証できました。詳細な調査結果はこのブログの主旨とズレるため割愛しますが、結論としては仮説としては合っていそうだねということが確認できました。

ここからは、知人で猫を飼っている人数人に簡単にヒアリングしたり、いわゆるLean CamvasやValue Proposition Mapを使って整理したり、Idea Sketchしたり、競合製品を調査したり。

このように私は割と王道なプロダクト開発のステップを踏みます。こういうの全部ぶっ飛ばして自分が創りたいもの作っている人見かけますが、だいたいうまくいかないです。そして私ともウマが合わないです。
なお、ブレストするうえでは、リモートメンバーが多いので初期の頃はMURAL使ってました。

↓かなり初期のLean Canvas(機密も含むのでBlursかけてます)

まだ初期のこの時は、ハードウェアどうするかとかはほぼ議論していませんでした。ひたすら、猫を大事に大事に飼っていて、留守番させている飼い主さんがどんなことを考えて、どんなプロダクトなら価値を感じてくれそうかという議論を中心にしています。
イメージを湧かせる&発散させるために、手書きでラフラフのイメージW/Fは書きながらチームでブレストしてプロダクトの骨子を決めていきました。

↓現在とはかなり違いますが初期のラフW/F

骨子が決まってきたあたりで、さらにユーザーのインサイトを探りプロダクトを磨いていくために飼い主さんインタビューを20人強実施しました。このタイミングで、コピーライターさんに入っていただき、インサイトを捉えたステートメントやキャッチコピーを紡いでいくためのヒアリングとしてもインタビューを行いました。

また、このあたりからハードウェア(PendantとHome)の検討もガンガン進めていたので、ハードウェア開発パートナーを決めたり、諸々進めていましたが長くなってきてしまったので次の投稿にします。。。
このあともブリちんはペーパーモックとか色々着けてもらっていました。その写真とかも超絶かわいいのでまた載せます。

ブリちゃんに会いたいです。(毎日会ってるしすぐ会えるけどw

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すべては猫様のために。

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