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第27回 秋華賞のみどころ

明日は、阪神競馬場で秋華賞が行われます。

今日は、久しぶりに詳しく記事を書く時間が取れたので、全頭解説などを通じて、レースの全体像にしっかりと迫れたらいいですね。

では、早速、レースのみどころについて解説していくことにしましょう。

阪神11R 秋華賞


はじめに、今年の3歳牝馬のレベルについて、簡単におさらいをしておくことにしましょう。

まず、春のクラシック戦線を簡単に振り返ってみると、桜花賞は上位が大混戦となり、勝ち時計もどちらかと言えば平凡。15着アネゴハダまでが1秒差以内に凝縮していたことを考えれば、ちょっとのことで簡単に着順が逆転するような状況が生まれていたことは間違いありません。

そして、次のオークス。こちらは、春の3歳牝馬戦線の中では比較的時計面が優秀でしたし、放馬のアクシデントがあってスタートを長いこと待たされたという背景をも考慮すれば、少なくとも上位3頭は例年に近い水準の走りはできていた。そう考えることはできそうですね。


次に、各ステップレースの結果を振り返り。

まずは紫苑ステークスですが、オークスで発走除外となったサウンドビバーチェの位置付けをどうするかはさておくとして、基本的にこのレースは春のクラシック組が上位を独占したというシンプルな評価でいいと思います。

ただし、多少の馬場差があったとは言え、スタニングローズの勝ち時計は翌週の古馬1勝クラスの同条件戦よりも遅かったわけですから、1勝クラス勝ち負け級のカヨウネンカでさえ見せ場たっぷりのレースができていたことが示すとおり、お世辞にもレースレベルが高かったとは言えないでしょう。

その意味で言うと、終始外を回るロスがありながらも好走した1,3着馬には及第点の評価を与えられるものの、それ以外の馬たちのパフォーマンスは、さほど高く評価できないと割り切っても差し支えはないと考えます。


次にローズSですが、こちらは春のクラシック組の一頭、アートハウスが正攻法の競馬で完勝し、2着にはキャリアの浅い良血の素質馬が、3着には夏の小倉戦で内容の濃いレースを見せていた上がり馬がそれぞれ入線するという結果になりました。

時計的には、同日の古馬1勝クラス戦を勝ったシンシアウィッシュが後続を少し離して1:59.2。この馬が春のフローラS3着馬であることを考えると、アートハウスの勝ち時計1:58.5は、春の力関係をそのまま引き継ぐ概ね順当なものであったのかなと考えます。


このように今年の秋華賞は、大枠で言えば春のクラシック組が優勢ではあるものの、出走各馬に決定的な力の差はなく、展開や道中の立ち回り、トラックバイアス次第では、一気の形成逆転まで考えられるレース。そんな見方ができるのかもしれません。

実際、仮に同じメンバー、同じ枠順で10回レースをやったとして、少なく見積もっても5,6頭の勝ち馬が出そうな予感がしますし、馬券圏内というところまで対象を広げたら、おそらく半分以上の馬に出番が訪れるくらいの力関係ですから、正直、狙いすまして結果を読み切るのは難しく、一定の運を引き寄せない限り、馬券の的中にはつながらないのでしょう。

う~ん、今年のGⅠレースはずっと荒れまくっていますが、このレースも一筋縄では収まらない可能性が高い。個人的には、そう評価しています。


それではここから、全頭解説をはじめていきたいと思います。

①ウインエクレール
クイーンCの時点では、春のクラシック組に対して明らかに劣勢だったこの馬だが、その後、スイトピーSで馬場の悪いインから突き抜けてみたり、古馬相手の3勝クラス戦で連対を果たしてみたりと、地味ながら力を付けている印象も。距離延長がどうかという課題もあって、過度な期待まではどうかとも思うが、絶好枠を引いて立ち回りのうまさを最大限に生かせるようだと、意外や意外、ここでも通用してしまう可能性を秘めている。

②ライラック
少なくとも中山で戦っている分には、春のクラシック好走馬と互角の勝負ができているので、ポテンシャル面で劣勢を強いられているとは言えず、条件さえ整えば好勝負しても不思議はない。ただし、関西への輸送に課題を残すこと、M.デムーロJに手が戻って出遅れのリスクが再燃することを考慮すると、「ノーチャンスではないが過度な期待まではできない」というあたりが妥当な評価か。

③タガノフィナーレ
先行力に魅力はあっても、古馬2勝クラスを根っきり葉っきりの内容で勝ったくらいでは、ここで通用するイメージはあまり湧いて来ない。ただし、展開面のカギを握る馬の一頭ではあるので、鮫島克駿Jがどんなエスコートを見せてくるのか、その点には特に注目しておきたい。

④ラブパイロー
春のミモザ賞でエーデルブルーメを負かしていることを考えると、まったくのノーチャンスとまでは言えないが、同型馬が多いここは楽な展開にならなそうで、酒井Jが捨て身の大逃げを打ってどこまで我慢できるか。そんなレースになりそう。

⑤ストーリア
レースぶりに器用さがあって、これまで一度も大きく崩れたことがないこの馬。ここも好枠を引けた分、入着以上の期待は十分だろう。ただし、ワンパンチ欠ける印象があるのも事実で、絶好調の松山Jが完璧に捌いてきたとしても、勝ち負けのラインまで引き上げてくるのはさすがに厳しいか。

⑥メモリーレゾン
前走ローズSのレースぶりから、一応はこの距離をこなしたということになりそう。ただし、本質的にはもっと短い距離で力を発揮するタイプの馬だけに、いかに同世代対決とは言え、この条件で一線級を相手にするのはやや厳しいようにも思えるが……。

⑦スタニングローズ
レースセンスが良くどんな競馬でもできて、しかも同世代のトップクラスの中で常に好勝負を繰り返してきた実績を考えると、ここでも大きく崩れることはほぼないだろう。あとは、「最後のひと押しが利くどうか」が課題にはなるので、勝ち切るところまで行くかは微妙だが、馬券圏内の確率という意味で言えば、最も期待値が高いのがこの馬。

⑧ナミュール
春シーズンは、ゲート難や枠順の不利、さらには馬体の細化も重なって思うような成績を残せなかったが、それでも常に強い内容のレースを続けてきたことは十分に評価に値する。ここはぶっつけのローテーションになるが、その点に過度な心配は不要と考えられるので、あとは阪神内回りの二千という条件がどうかという点と、母系から成長力があまり期待できないことがどこまで影響するか。この二点が、好走できるかどうかを決める大事なポイントになりそうだ。

⑨スターズオンアース
この馬にとって、オークスの舞台は適性面で最高にフィットしていた印象もあって、東京ニ四で戦う限りは、おそらくこの相手にはほぼ負けないというくらいのポテンシャルの差があるように思える。あとは、右回りに替わること、距離短縮、関西への輸送、骨折明けの調整の難しさなど、あれこれとマイナス要素が積み重なっている中で、それでもまだおつりが残るのかどうか、そこの判断が勝負を分けることになりそうだ。

⑩アートハウス
この馬の好走条件は、前半を楽に入っての後半勝負。その条件を満たすレースでは、間違いなくこのメンバーでも勝ち負けできる力を持っている。あとは、淀みのない流れを自ら積極的に追いかけると、しまいパッタリと止まるという決定的なウィークポイントを封じ込められるかどうか。序盤からハイペースになった時に、たとえ位置取りが悪くなっても自らのリズムを優先できるかどうかが課題となるが、川田Jの強気な性格を考えると、「一旦先頭のシーンをつくりながらゴール前で失速する」という絵面も、一応は想像はしておくべきだろう。

⑪エグランタイン
夏の上がり馬の中で、最も注目すべきはこの馬だろう。一瞬の切れ味こそないものの、とにかく長くいい脚を使えて、しかも位置取りに関係なく力を出し切るレースができているのは心強い。あとは、単純に力関係がどうか。仮に読みどおり阪神の二千で序盤からタイトな流れになるとすれば、今年のメンバーが相手ならこの馬でも通用してしまいそうな気がするのだが……。

⑫ウォーターナビレラ
少なくとも桜花賞までは、この世代のトップホースの一頭に数えられたこの馬、オークス、クイーンステークスと2戦続けて惨敗を喫した敗因をどう捉えるかだろう。この馬の本質は、やはりスピード馬。それを考えると、距離延長と差す競馬を強いられたことのダブルパンチを喰らったのが惨敗の原因と考えるのが自然で、だとすると、ここも条件的に非常に厳しいレースになりそうだが果たして……。

⑬エリカヴィータ
条件面だけを言えば、この馬にとってここはベストに近いと考えられるし、フローラSのレベルがさほど高くなかったことを考慮しても、力関係的にまったく箸にも棒にも掛からぬことはないだろう。鞍上も福永Jなら、今年も昨年のこのレースと同様にロスなく捌いてくるはずだから、馬券圏内という視点でならワンチャンスあっていいようにも思える。

⑭ブライトオンベイス
この馬が抽選をクリアしたことによって、このレースの結果を大きく狂わすことにつながるのはほぼ間違いなさそう。意を決して徹底先行策を取ろうとすれば、おそらくこの馬がハナを切れそうなので、勝負に絡めるかどうかはともかく、少なくとも長い時間テレビモニターにその姿が映し出されることは間違いなさそうだ。

⑮サウンドビバーチェ
この馬にとって、前走はこれ以上ない完ぺきな競馬。それでいてスタニングローズに差されたのは、この馬の限界を示したとも言える。もともとハナにはこだわらないし、安定した先行力が武器にはなるので見せ場くらいはここでもつくれそうだが、さすがに枠まで厳しいところを引いてしまうと、ワンチャンスもどうかという評価でいいように思える。

⑯プレサージュリフト
もっとも評価が難しいのは、この馬。春の実績を考えると、切れ味勝負ならこのメンバーでも通用するのは間違いなく、あとはこの条件でも力を発揮できるのかどうか、そこがポイントになるのだろう。関西への輸送と阪神の内回りという条件は、この馬にとって確実に試練にはなるので、そこを陣営の努力と戸崎Jのエスコートの部分でクリアしてくるようなら、一気の戴冠も視野に入ってきそうだ。


さて、最後に個人的見解を。

今年のこのレースは、前半からかなりタイトなペースで流れそうなので、道中の位置取りと各馬の仕掛けどころ次第では、どんな結果になろうともさして驚きはしない。そうは言えるでしょう。

ならば、底力を求められる厳しいレースになっても、最後の最後まで耐えうる強靭なメンタルとフィジカルを併せ持った馬を狙うのが賢明。そんなふうに考えています。


ということで、中心には⑪エグランタインを推すことにします。

この馬は、多少のハイペースについて行ってもスタミナを削がれないタイプの馬ですし、勝負どころから長くいい脚を持続できるタイプの馬でもありますから、レース序盤からタイトなペースで流れて行きそうな明日のレースには、まさにピッタリのキャラクターだと思うのですよね。

コース的にも、「中京よりは阪神向き」という中で言えば、アートハウスとの比較で力的に足りないということもありませんから、さまざまな要素を総合的に検討してみると、人気に関係なくこの馬を狙うのが正解。自分の中では、そんな結論に至りました。

そうそう、脚を溜めずにひたすら押しまくる小崎Jの騎乗でも、簡単にはスタミナ切れせず最後まで走り切れるくらいの根性の持ち主ですから、大味な乗り方が目立つ池添Jの連続騎乗でも、それ自体が大きなマイナス材料にはならないでしょうしね。


2番手には、⑦スタニングローズ

こちらはスイートスポットが広くとにかく崩れませんし、理想はインで脚を溜めたほうがいいという中で、ここは枠の並びも悪くありませんから、春のクラシック組の中では迷わずこの馬を最上位に指名します。

正直、エグランタインとどちらを上に採るか最後まで悩んだくらいで、この馬も今回のレース条件なら高い確率で好走してくれるんじゃないか、と。


3番手は、⑧ナミュール

この馬にとって阪神の二千という条件は、お世辞にもピッタリとは言えない分、少し評価を下げてこの位置となりました。

ただ、枠の並びは悪くありませんし、春の実績からさすがにこれ以上は評価を落とせない。そんな評価となります。


最後4番手は、⑯プレサージュリフト

最後の最後まで、エリカヴィータとどちらを最後のひと枠に採るか迷ったのですけれど、何度もオークスのレース映像を見直した結果、こちらが上位と判断しました。

この馬に関しても、ナミュールと同様にこの条件がベストとは思えませんが、昨年2着のファインルージュも似たような状況であったことを考えると、いい位置でレースの流れに乗ることができれば、しまいはこの馬なりにキッチリと脚を使える。そう考えています。


さてさて、いったい明日はどんなレースになるのでしょうね。

最低限、オークスのようなモヤっとするレースにはならず、全馬が力を出し切れるレースになることを祈りたいと思います。

もちろん、「全馬無事に!」が大前提ですけどね。

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