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第39回 ホープフルSのみどころ


明日は、中山競馬場でホープフルステークスが行われます。

今年は、現状で図抜けた力を見せつけている馬こそいないものの、全体的なメンバーレベルは総じて高く、その中で現状における各馬の大まかな力関係が、はじめて白日の下にさらされるレースになるのかな、と。

有力馬が極端な枠に入ったりもしているので、このレースでビシッと決め切れるかどうかは別の話ですが、少なくとも来年のクラシック戦線を占う上でのベースと位置付けられるレースにはなるのでしょうから、しっかりとプランを立ててからレースに参加し、レース後は精緻な検証を行って次に生かていく。そんな姿勢をもってレース臨むことが、私たち競馬ファンにも求められているような気がします。

それでは、早速、レースのみどころについて、簡単に解説していくことにしましょう。


中山11R ホープフルステークス

まずはじめに、中山芝コースのトラックバイアスについて考察しておくことにしましょう。

有馬記念当日の馬場を振り返ってみると、明らかに外差し有利な傾向が出ていましたから、明日も基本はその傾向を踏襲するのだろうと思います。

ただ、レース時に風がどこまで吹くかはわからないものの、終始外々からではやはり力のある馬でも厳しく、外枠の各馬にとっては、前に馬を置ける位置でレースの流れに乗れるかどうかがカギとなってきそう。

反対に内枠の各馬は、インで脚を溜めるところまではいいとして、勝負どころで馬場のいい外へとスムーズに持ち出せるかどうか。そこがカギになってくるでしょう。理想は、有馬記念でイズジョーノキセキが見せたような競馬ですが、はたしてそううまく行くのかどうかですね。


次に展開ですが、シンプルに考えれば、グリューネグリーンが前走と同様に行き切って、番手外にドゥラエレーデ。この並びがもっともシンプルだとは思います。

ただ、M.デムーロ、B.ムルザバエフという並びだと、おそらく超スローまでありそうなので、そうなると道中で外からのマクリを誘発することにもなりそう。そもそもここは、2歳戦で流動的な要素も多いですから、展開に関してはあまり決め打ちせず、基本的に自然体で構えたほうがいい結果につながるような気もします。


最後に、ここに至るまでのステップレースのレベルについても簡単に触れておくことにしましょう。


まずは、東スポ杯2歳ステークス

このレースは、序盤からペースが流れ、全体時計も優秀なレベルであったと思います。

ただし、道中でペースが緩むところがなかったので、位置取りや通ったコースによって明暗が分かれたところも大きかったと思いますから、その点にはちょっと注意が必要なのかな、と。


次に、京都2歳ステークス

このレースが行われた週の阪神芝コースは、全体的に速い時計が出ていましたので、この2:00.5という勝ち時計は至って平凡という評価になります。

レース自体も、「逃げた馬とインを通した馬が上位を独占しただけ」というパッとしない決着でしたし、さらに勝負どころでゴチャつくところもありましたから、少なくともレースレベル自体を高く評価することはできないし、着順もあまり当てにならない。そう考えざるをえないかな、と。


その他のレースでは、野路菊ステークス葉牡丹賞のレベルの高さに目が行きますね。

前者は同日の古馬2勝クラスの勝ち時計とコンマ1秒差の優秀なものですし、後者はこの開催の中山の時計としては破格と言っていいレベルですから、この両レースの勝ち馬は、かなりのポテンシャルを秘めているとは言えるのでしょう。


それではここから、今年も全頭評価をやっておきたいと思います。

このレースに関しては、来年以降につながってくる重要なレースでもありますから、先を見据えるという意味で、多少なりとも皆さんの参考になればいいな、と。


①ファントムシーフ
スッと好位につけてスムーズに折り合える競馬センスがあり、さらに追ってから切れる脚も使えるといういわば「優等生」。持ち時計も文句なく、あとは底力を問われる厳しい流れに乗っていった時に、はたしてこれまでと同様の脚を使えるかどうか、そこがカギになりそう。

②ハーツコンチェルト
出遅れて人気を裏切った前走は、道中で追走に脚を使わされたことが、最後の最後に堪えたと考えるべきだろう。コース形態的には、息が入りやすいコーナー4つのコースのほうが向いているはずなので、相手関係云々よりも、今回は自分自身との戦いになりそうだ。

③シーウィザード
レースセンスの良さが魅力でコース経験もあるこの馬にとって、ここは一気の相手強化に対応できるかが唯一の課題となりそう。前走の相手関係を考えると、そこから3段階くらい一気にパフォーマンスを上げてこないと、ここで好勝負に持ち込むのは難しそうだが、、、

④セレンディピティ
この馬の前走は、その勝ち時計や勝ちっぷりから、先の有馬記念で2着と好走したボルドグフーシュの未勝利戦を彷彿とされる圧巻のパフォーマンス。少なくともポテンシャルの面だけから見れば、このメンバーに入っても見劣らないレベルにあるとは言えそうだ。あとは、鞍上と脚質面がここで不利にならないか。今回は、その点に尽きるのではないだろうか。

⑤フェイト
本調子にはひと息と思えた前走でも、大崩れなく走った点は評価に値するだろう。ただし距離延長がプラスに出るかは微妙だし、コーナー4つのコースでハマるイメージも湧きづらいので、時計の掛かる馬場が合いそうな点を味方につけてそこまでやれるか。今回は、そんな評価にとどまりそうだ。

⑥グリューネグリーン
マイペースの逃げで重賞勝ちを果たした前走は、道中で多くの馬が不利を受ける展開に恵まれた部分が大きく、後続の追撃を凌いで勝ち切ったこと以外に評価すべき点を見いだすのは難しい。デビュー戦でミッキーカプチーノに完敗を喫していることも気がかりで、さすがに過度な期待まではどうか。

⑦ボーンイングランデ
向正面マクリを敢行した上で、最後も加速ラップでまとめたこの馬の前走は、それなりに内容の濃いレースではあった。ただ、自己条件戦ならまだしも、いきなりこの強力メンバー相手に好勝負を演じるイメージは湧きづらく、今回は次につながる内容のレースができれば十分だろう。

⑧トップナイフ
札幌2歳Sの翌日に、2,000mの未勝利戦を勝ちあがった時の時計は優秀。舞台が中山に替わり時計の掛かる馬場で戦えることは、間違いなくこの馬にとってプラスだろう。ただ、一瞬の鋭い脚には欠けるので、理想は強気に前の位置を取り切って惰性で流れ込む競馬。今回、鞍上がそんな奇策を打ってきたら、怖い一頭になってくるかもしれない。

⑨セブンマジシャン
前2走はかなり相手関係に恵まれていたこの馬にとって、このレースが試金石になることは間違いない。どの位置からでも自分の脚を使えるレースセンスの良さから、ここでも見せ場くらいはつくってきそうだが、末脚の迫力という点からすると、まだまだ上位馬には見劣る印象もあって……。

⑩ガストリック
前走は、馬群の中から常識的なレースをして完勝。スローの瞬発力勝負を切れ味の差だけで突き抜けた初戦とは打って変わって、淀みのないレースでも末脚が削がれることがなかったのは大きな収穫だった。残る課題は、器用さのないこの馬にとって、このレース条件がどうかというところ。鞍上面を含めて考えた時、そう簡単に前走の走りを再現できるとも思いづらいが、、、

⑪ドゥラエレーデ
自らレースをつくって、好時計決着を演出した前走には、着順以上の評価が必要だろう。時計の掛かる馬場も合いそうだし、札幌の未勝利戦で2着した時の走破時計に目を向ければ、トップナイフと同等くらいの評価はしないといけないのかもしれない。ただ、詰めが甘いのは事実なので、その点が一気にカイゼンするとはちょっと考えづらくて……。

⑫モンドプリューム
勝ち上がりはダートでも、今も中山の芝に走りがフィットしそうなイメージはあるこの馬だが、さすがにGⅠでどうこうというレベルにはまだまだなのかな、と。「使うレースがほかにないので、とりあえずここを使ってみよう」という陣営の意図が見え隠れもして……。

⑬ヴェルテンベルク
京都2歳ステークスで、最も中身が濃い競馬をしたのはこの馬だろう。迫力のあるフットワークは目立ったし、レースレベルが低かった点を除けば、ここでもワンチャンスあっていいのでは……と思わせるくらいの見事な走りを見せていた。ただ、不器用なこの馬にとって、このコースはどうなのか。そこは間違いなく課題になってくるはずだ。

⑭ジェイパームス
デビュー戦を加速ラップで楽勝したこの馬、この先の伸びしろという意味で言えば、非常に期待は大きいと言えるだろう。ただ、1戦1勝でその内容も番手外から抜け出しただけとなると、どんなに素質が高い馬でも苦戦しがちな2戦目。その舞台がコース替わりのGⅠでは、さすがに過度な期待まではできないのではないだろうか。

⑮キングズレイン
鞍上で穴人気しそうなこの馬だが、ここまで目に留まるようなパフォーマンスを見せたことは一度もない。前走はメンバーレベルが低調だったし、勝ち切ったこと自体は評価できても、相手が一気に強化するここですぐに通用するとはとても想像できなくて……。

⑯スカパラダイス
今村JのGⅠ初騎乗で注目されるこの馬だが、戦績的には明らかに劣勢を強いられているといわざるをえない。さらに一発の期待があるようなタイプにも見えないので、何頭か負かせたら万々歳。そんな競馬になりそうだ。

⑰ジュンツバメガエシ
厳しい競馬を勝ち切った前走で新たな一面を見せられたのは収穫だったが、さすがに即GⅠで通用するとまでは言えまい。このレースで半分くらいの馬を負かして目途を立て、次の自己条件戦につなげて行くというのが現実的な目標になりそうで……。

⑱ミッキーカプチーノ
現時点の実績では、明らかのトップの位置にいるのがこの馬。デビュー戦で負かした馬たちのその後の成績には、ひと際目立つものがあるし、出遅れながらノーステッキで快勝した前走の好時計勝ちも秀逸であった。ただ、外枠を引いたのはこれが初めてで、前に馬を置けない形になった時にリズム良く走れるのかはまったくの未知数。ある程度の距離ロスは問題なくクリアできそうだが、「道中で折り合いを欠いて、最後に伸びを欠く」という姿は、一応想像しておきたいところだ。


ということで、最後に個人的な結論を。


中心には、②ハーツコンチェルトを推します。

追走に脚を使った割に、最後までしっかりと伸びたこの馬の前走は、どの角度からも見ても負けて強しのレースでしたから、スムーズなレースさえできれば、東スポ杯組には必ずリベンジしてくると思うのですよね。

ただ、この内枠はあまり歓迎材料ではありませんし、この枠で変に五分のスタート切ったら嫌だなという思いも正直あります。ただ、今の外有利なトラックバイアスなら、最後の直線で外に出せれば確実に豪脚を披露して突き抜けてしまうはず。最終的にはそう判断しました。


2番手は、①ファントムシーフ

他馬にはいろいろと課題が山積している中で、この馬の課題は、外有利なトラックバイアスと関東への輸送くらいのものですから、レースに向かいにあたっての死角が少ないことが、2歳GⅠでは大きなアドバンテージになることでしょう。

時計面の裏付けがあって、レースぶりも安定している以上、仮にちょっとしたエラーがあったとしても、おそらく大きくは崩れない。そう評価してこの位置に置くこととしました。


3番手に、⑱ミッキーカプチーノ

個人的には、この馬が来年の皐月賞馬だと思っているのですが、この大外枠はさすがに試練だと思うのですよね。ここ2走は、いくらか枠に恵まれたところもあった中、勝負のGⅠでこの大外枠ですから、いかに基礎体力に自信のある馬だとしても、さすがに楽ではないでしょう。

それでも、この馬のポテンシャルの高さを考えると、1コーナーまでに前に馬を置いて折り合えるようなら、多少の距離ロスなど関係なく、問答無用に突き抜けてしまうのではないかとも思っています。ちょっとピンかパーか的な要素があるのでドキドキですけど、この馬に関しては圧勝までありうる3番手評価としておきます。


4番手は、⑧トップナイフ

展開面が不透明な中で、最も意外性を感じるのはこの馬ですね。

常識的な競馬ではさすがにキツイと思いますが、今回の舞台設定に不足はありませんから、もしも横山典Jが最近お得意の徹底先行策に打って出るようなら、札幌の未勝利戦で見せたしぶとさが如何なく発揮される場面があってもいいんじゃないかと考えました。


その他、④セレンディピティに関しては、4番手をこちらにすべきか最後まで悩んだのですが、鞍上は武Jですからね。

なんだかんだ、よっぽど運に恵まれないと馬群を捌けるイメージは湧いてきませんし、ここを勝てばJRA全GⅠレース勝利の偉業達成となる分、変に色気を持って乗られるのも嫌だったので、最後はトップナイフのほうを上と位置づけました。この馬自身の力を持ってすれば、勝ち負けまで持ち込んできても特に驚きはないのですけれどね。


さて、いろいろと紛れが起こりそうなこのレースですが、今年はいいメンバーが揃った印象が強いので、とても楽しみなレースとなりました。

もしもここで予想が外れたとしても、必ず来年につながるレースにはなりますから、しっかりと準備をして、いざ発走の時を待つことにしましょう。

皆さんの幸運を、心からお祈りします!


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