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夢のような日々

このGWは、ひとり旅に出ていました。

行き先は、同じ県内の海の方へ。自然と海を心底欲していた私は、とにかく田舎の方に逃避しようと思いました。

それが、こんなことになるとは・・・・


私が宿泊したのはAirbnb、いわゆる「民泊」です。

これまでに国内外で民泊は利用してきたので、私は全然抵抗がなく1ヶ月前には予約していたのですが、ゲストハウスという形式上、ゲストの95%くらいは外国人だということでした。(Airbnbの説明文が英語だったのである程度予想はついていましたが)


ホストは日本人のご夫婦です。田舎の中にポツンと船のような形の建物があり、外には古びたシトロエンがオブジェのように置かれ、ヤギが草を食んでいる。



割と人見知りである私は、実は行く前はちょっと憂鬱に感じていました。一人の時間が大好きな私が、そんなゲストハウスなんて耐えられるだろうか。。。

まぁ、いっか。もしダメそうだったら、早めにチェックアウトしてもいいかな、と思ったりして。何しろ一時間ちょっとで家に帰ってこれる距離だし。


でも、その予想は大きく裏切られることになりました。


チェックインのその日、夕方に到着した私はいきなり全員のゲストと共にホストのお知り合いのお店までディナーに行くことになりました。

言われるままに初対面のゲストと一緒に車に乗り込んでお店へ。



その日のゲストはフランス人、オーストラリア人、フィリピン人、中国人、そして私。

英語コーチとして起業し、通訳案内士であるとは言え、こんな環境はちょっと久しぶりで、カンを取り戻すのに多少の時間はかかりましたが、私はいつのまにか、その心地よく楽しい国際交流の輪の中に入り込んでいました。

帰りの車内では次の日にチェックアウトして羽田に向かうという中国人カップルに東京駅付近の情報を教えてあげたりして。


私が思い描いていたAirbnbってもっとサッパリした、あくまで宿を提供するというようなビジネスライクなものでしたが、ここは違いました。

ホストのお二人の朗らかで壁を作らない人柄。そしてゲストそれぞれがそれに馴染み、独特の雰囲気を作り上げているのです。

彼らはその場所で民泊を営みながら、地域と人が繋がるコミュニティを作ろうとしていました。


そこにはスタッフとして女の子が2人外国から来ていました。一人はイタリアからで、イタリア人と日本人のハーフ。もう一人はブラジルから。

その場所で労働力を提供する代わりに、宿を提供してもらうWorkawayというシステムを利用して来ていて、2人ともよく働き、よく笑う女の子でした。


そこでは、たくさん話をしました。


ホストのお二人とも、仕事のことやプライベートのこと、この民泊にかける想い、たくさん聞きました。

ディナーはゲストも揃ってみんなでいただくことがあたりまえのようになっていました。もちろん強制ではありません。

そこでは、もし新しいゲストがいたら自己紹介。あるいはその日あったこと、過去・現在・未来の自分、と言ったテーマで自分のことを語り合いました。

本来、私は大勢の前で話すことがとても苦手な上に、英語で話すとなればもうそれはドキドキで・・・

その中でいつの間にか私は、若かりし頃にヨーロッパを旅して歩いた時のことを熱く語っていました。

大学でフランス語を学んでいた私はフランスが大好きで、それでヨーロッパ中を旅して歩いていたこと。フランスの夜行列車で一緒になったカップルは、イギリス人とイタリア人で、その二人と英語を通じてお互いのことを分かり合えるということに、本当に興奮して、それで英語の勉強を始めて_________


ブラジルから来た彼女は、日本に来ることがどれだけ大変だったかを語り、涙しました。ブラジルから日本はとてもとても遠い。働いて働いて、いろんなところを経由して、そして日本にたどり着いた。彼女は日本的なアートの感性をとても愛していました。

一年前にも来たというフォトグラファーのフィリピン人の女性は、今回はフランス人の彼と一緒でした。彼女はとても繊細な心の持ち主で、写真は自分の内面を表現するツールだ、と言っていました。昔から心をオープンにしてくることはなかったけれども、何年か前に自分を表現することに決めた、と。

オーストラリア人のご夫妻は、自宅に眠っていた古い日本人の写真についての素晴らしいストーリーについて語ってくれました。彼女は将来それを本にするつもりだ、と言っていました。


いろんな人の、いろんな人生の局面を目にし、いろんな人生のストーリーに触れました。そのいろんな人生が不思議な縁で世界中から一箇所に集まって、共有している。


ちょっとした通訳も頼まれたりして、私は頭がパンクしそうになりながらも強く感じていました。


これだ。私が昔、旅している時に本当にワクワクしていた感覚はこれだった。



ホストのご夫妻はとても不思議な方々でした。

ご主人はアパレル業界とかアンティークの買い付けとか本当に様々な仕事を経験し、すごくエネルギッシュで自由に溢れていてそれでいて信念を持っていて、次々に何かを生み出して行くような人。

奥様は朗らかでオープンマインドで、本当に人生をそのまま楽しんでいるような、同じように自由な人。

3人の息子さんたちも世界一周をしていたり、音楽活動のためにオーストラリアに向かう準備をしていたりで、「進路」や「就職」みたいな、一般的な常識に沿った概念なんて無いようだった。

でも、それぞれにやりたいことを型にとらわれずにやっていて、それが「自分の人生を生きていく」ということなのかな、と思ったりもして。


今回のこの旅では、日常に埋もれている生活の中で「こんなもんかな」と思ってしまっているようなことを、「そうじゃないよ!」と枠を壊してくれるようなことが沢山起きました。

私は新しい世界を見るのが好き。

新しい可能性が見えることが好き。

そして、本当はもっと自由だっていい。

私には娘がいるから、これしかできないから、あれがないから、、と制限をつけて考えてしまっていることがいっぱいあった。

でも、世界から色んな思いを持ちながらやってきた人や、自由ながらに信念を持ってホストをしているご夫婦を見ていると「そんなことはどうだっていいや」と心から思えました。


So what ? 「だから、何?」 である。



今回の4日間を通して、始終考えさせられたのが「人と人との関係性について」でした。

実はちょっと前に「今一番やりたくないことは?」と聞かれて「シェアハウスに住むこと」と答えていた私。この宿はゲストハウスなので、1つ屋根の下に複数のゲストが滞在していて、バス、トイレなどは共用です。

そんなところに何故行くと決めたのか自分でもよくわかりませんが、それはもう、上に書いた通り、行く前はちょっと不安に感じてました。

それがどうだろう。今回はほとんど苦痛に感じなかったし、むしろ積極的に楽しんでいる自分がいて、自分でも驚きました。本当は仕事とか、読書とかして、もっと静かに過ごすつもりだったんだけどなぁ・・・


では、人間は孤独であれば良いかと言われればそれは違う。

こちらの宿に一人部屋は一部屋しかない。と言うことは、一人で来ているのは私だけで、他はみんなご夫婦かカップルかお友達同士か、もしくはファミリー。そして国籍もバラバラ。

そんな中にあって、ちょっとだけ引いた目線で「私って何なんだろうか?」と考えていました。

私は普段孤独を感じることなんてほとんどありません。「家族」という形も失ったし、今は特別な人もいない。それでも日々穏やかに幸せを感じて生きていられるのは娘の存在があることは確かに大きくて、それが無かったら私はこんなにも一人ぼっちなのかな、と思ったりもしました。

だからと言って私のような一人が好きな人間にとっては、ある種の孤独感は必要で、それが不幸なことかと言われればそれもまた、全くそんなことはないのです。


国籍も性別も超えた、良好な人間関係って何だろう。それを築くことが人間の幸せの1つでもあるけれども、みんなバラバラだからこそ、その「ちょうどいい」がみんな違って、それで時には齟齬が生まれたり誤解が生じたりもする。

でもそのバラバラがぴったり合わさった時、私たち人間は無上の喜びを感じることができるから、それを追い求めて行くのが人生なのかもしれない。



当初の予想に反して、チェックアウト当日の夜まで過ごし、帰る時には本当に寂しくて涙が出そうにもなりました。

人と人との「繋がり」「縁」というのは本当に奇跡的で、出会ったことには必ず意味がある。

これまでだったら家で静かに過ごすか一人のプライベート空間で過ごすことを選択していたはずの私が、ちょっと不安を感じながらもこの宿に宿泊したことは、それは本当にそういう意味があったのだと思う。

世界の人を知ることが好き。その人のストーリーを知ることが好き。

そんな忘れかけていた情熱を思い出させてくれた、夢のような4日間でした。


今日から普通に娘は学校に行き、私も通常運転です。いつもの日常の始まり。

こうやっていくつかの記事を書き、お気に入りのブックカフェに行って勉強をして、セッションの準備をする。

そして、もう一度私の原点とも言える旅のこと____ 

ヨーロッパの旅で感じた興奮と感動を思い出して、通訳案内士の仕事、もっとやってみてもいいかなって今は思っています。



Great thanks to Masami, Ikuko, all guests and staff!!

大磯エピナールHP


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