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第6回ヴィクトリアマイル(2011年) [競馬ヒストリー研究(44)]

昨年のヴィクトリアマイルを制したのはGI4勝(当時)のグランアレグリアで、一昨年の優勝馬はこれがGI7勝目となったアーモンドアイ。いずれもGIとしては圧巻の勝ちっぷりで強さを見せつけたことは記憶に新しい。

アーモンドアイが制した2020年のレースには当初グランアレグリアも出走を予定していたが、熱発のため回避。ヴィクトリアマイルで実現する見込であった初対決は後の安田記念へと流れた。

レース創設と時を同じくして日本競馬における牝馬の活躍が増え、歴代優勝馬にも牡馬混合のGIでも活躍した錚々たる名前が連なっているが、当レースで実現した先のような”牝馬頂上対決”と言えば、ブエナビスタとアパパネが出走した2011年の一戦であろう。

 

2011年の春シーズン、前年の年度代表馬ブエナビスタはドバイワールドCで始動。英国のブックメーカーでは3番人気の単勝オッズが付けられ、3頭出走した日本調教馬の中で最も有力視されたものの、前半1000m通過が66秒を超えるスローペースに泣き、他の日本馬がワンツーを決める中8着に敗れた。

その帰国初戦として出走したのが、前年も同じ臨戦過程で優勝していたヴィクトリアマイル。当時は同じくドバイ遠征帰りであった同期のライバル・レッドディザイアとの再戦が注目を集めたが、同年ブエナビスタの前に立ちはだかったのは、1歳下の三冠牝馬アパパネであった。

ブエナビスタと同じく2歳時に阪神ジュベナイルフィリーズを、3歳春に桜花賞とオークスを制し、同馬が3着に敗れた秋華賞を勝って牝馬三冠を達成した前年のアパパネ。

ブエナビスタと比べると爆発的な強さでねじ伏せるような勝ち方ではなく、休み明けのレースでは格下相手に取りこぼすことも多かったものの、同着で優勝したオークスを筆頭に接戦に強く、目標に据えたレースをきっちりと勝ち取る勝負強さには定評があった。

 

アパパネは前年のエリザベス女王杯を3着、前走のマイラーズCでは4着と、年長馬相手に勝利を挙げていなかったこともあり、下馬評ではブエナビスタが優勢。単勝1.5倍の1番人気に支持された。アパパネは4.1倍と少し水を開けられたものの、3番人気のレディアルバローザは11.7倍まで離れ、完全に二強の一騎打ちムードでレースを迎えた。

前年の桜花賞ではアパパネの2着、天皇賞秋ではブエナビスタの4着していたオウケンサクラが他馬を離して逃げ、ハイペースで流れていった。16番ゲートから勢いよく飛び出したアパパネは、13番ゲートから出たブエナビスタの位置を確認しながらその一列前へ位置取る。

残り600mの標識を過ぎたところで鞍上の蛯名正義が追い出し、鋭く反応して前との差を詰め始めるアパパネ。対するブエナビスタは前年の当レース以来のマイル戦出走の上、当時より自身の1000m通過が1秒速いペースで追走していたこともあり、アパパネの蛯名より早いタイミングで鞍上岩田康誠の手が動き始めるような手応え。アパパネが先んじて仕掛け、ブエナビスタが後手に回るような戦況で直線に入った。

直線半ばで内の3番手から逃げ馬を交わして先頭に立とうとしていたレディアルバローザをアパパネが早くも捕らえた。ブエナビスタもアパパネとの2馬身程の差をこれ以上広げられまいと必死に食らいつき、坂を登り切って残り200m辺りでようやくその差が縮まってくる。

残り50m程で遂に馬体が接近し、そこからは完全に脚色で勝るブエナビスタの鼻面が1完歩ごとにアパパネのシャドーロールに迫っていくも、何とか頭一つ半程の差(公式記録の着差はクビ)でアパパネが凌ぎ切って先にゴール板を通過。勝負師・蛯名の強気な騎乗で見事アパパネが現役最強馬を完封しての勝利をもぎ取った。

 

冒頭で挙げたアーモンドアイとグランアレグリアは後に2020年のジャパンCとスプリンターズSをそれぞれ制しているが、2016年には前年の各レースを制したストレイトガールとショウナンパンドラが対戦するなど、今回紹介した他にも当レースでしか実現しないようなカードが見られることもヴィクトリアマイルというレースの大きな特徴と言える。

創設から15年を超えたヴィクトリアマイルであるが、牝馬が強い時代の現在において、東京競馬場の芝1600mというチャンピオンコースで行われる当レースは、今後もこのような最強クラスの牝馬が激突することが期待できるレースであり、その機能や価値を最も体現していると言えるのがこの2011年の一戦だったのではないだろうか。


今年は豪華メンバーのヴィクトリアマイル。近年は上がり上位の馬の好走が以前より多く、スピードより末脚重視、中距離寄りで考えたいです。

2000mのGIを勝っているデアリングタクトやレイパパレ、速い上がりの中距離戦を勝っているアンドヴァラナウト、昨年は大敗しましたがテルツェットも狙ってみたいと思います。


それではー

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