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第79回皐月賞(2019年) [競馬ヒストリー研究(40)]

クラシック一冠目の皐月賞。柏木集保氏がしばしばこのような例えを用いて語ることがあるが、皐月賞まではトーナメント戦であり、2歳戦から続く世代限定戦を通じてそれぞれの道を勝ち上がった馬が初めて一堂に会するという点がこのレースの醍醐味なのではないだろうか。その面白さを存分に感じられるレースの一つが2019年の皐月賞だ。

 

皐月賞を迎える前から、この年のクラシック戦線で中心と見られていたのがサートゥルナーリア。デビュー2連勝で臨んだ前年暮れのGIホープフルSを余裕の手応えで制し、3戦3勝のまま一冠目へ直行してきた。メンバー中ただ一頭休み明けでの出走であったものの、二冠目の日本ダービーやその先へ向けての通過点に過ぎないという評価もあり、単勝オッズ1.7倍の支持を受けていた。

2番人気で続いたのが、朝日杯FSを制して最優秀2歳牡馬を受賞していたアドマイヤマーズ。手綱を取るM.デムーロはサートゥルナーリアの全3戦にも騎乗し、「今年一番強い2歳馬」「歴史を変える一頭だと思う」と絶賛していたが、C.ルメールに乗り替わりとなった同馬に挑む立場で本番のクラシックを迎えることとなった。

そのアドマイヤマーズを前走の共同通信杯で下していたのが3番人気のダノンキングリー。デビューは他の有力馬より遅い10月であったが、中山コースで圧勝した2走前を含め2歳重賞の実績馬をまとめて負かしており、遅れてきた第三勢力と言える存在と見られていた。

他にも関西で若駒Sと若葉Sを快勝してきたヴェロックスも単勝オッズ一桁台で続き、その下の5番人気馬ファンタジストは一気に20倍を超えるまで離れ、四強対決とも言っていい勢力図。未だ能力全開の走りを見せていないサートゥルナーリアの潜在能力は感じながらも、初対決の組み合わせが多い皐月賞ならではの上位拮抗ムードも漂う中レースを迎えた。

 

毎日杯を逃げ切ったランスオブプラーナがレースを引っ張り、ダノンキングリー、アドマイヤマーズ、ヴェロックスの3頭が先行集団のすぐ後ろに3頭並んで位置取る。

有力馬の中で最も外の12番枠からスタートしたサートゥルナーリアは簡単には同じ位置に入らせてはもらえず、無用なポジション争いを避けるように3頭より一列後ろの外を追走。

3角から好位の3頭は前にプレッシャーを掛けつつペースが上がり、サートゥルナーリアも連れて追い出し4角を回る。ヴェロックスが先に抜け出しを図って先頭で直線に入るも、直後からサートゥルナーリアが雄大なフットワークで伸び、坂の登りで遂に馬体を併せる。

左ステッキを入れられたサートゥルナーリアが内のヴェロックスに馬体を接しながら一旦は前に出るも、必死に抵抗するヴェロックスも盛り返し、200m以上続いた叩き合いは内から忍び寄ったダノンキングリーも加わり、最後は3頭一団でゴールへ飛び込んだ。

着差が際どかったこともあり、サートゥルナーリアがヴェロックスを押圧した事象は審議対象となるも、到達順位通り確定。一冠目の先を見据えて直行ローテで臨んだサートゥルナーリアが見事関門を突破し、史上初となる3歳初戦での皐月賞制覇を果たした。

 

近年は早くにクラシックへ名乗りを挙げた有力馬が余裕を持ったローテーションで本番へ向かうケースが増え、結果的に皐月賞で初対戦という組み合わせが増えることともなっている。古馬戦線とは異なり、多くの有力馬が同じ栄光を目指す一生に一度のクラシックという舞台で、それぞれの道が初めて交わる皐月賞というレースはいつの時代も「どの馬が一番強いのか」という競馬の原点を感じさせてくれる。


今年も初対戦の組み合わせが多く混戦模様の皐月賞。馬場も読みづらく、当日までかなり頭を悩ませそうです。

良馬場ならキラーアビリティが小回りのツーターンでは最もパフォーマンスが高そう。未勝利戦をレコード勝ちし、ホープフルSでも緩みのない流れを先行して押し切ったスピード能力は皐月賞向きです。

同じホープフルS組では直線フラつく面も見せながら2着したジャスティンパレスは成長してくれば楽しみな存在。
タフな馬場ならボーンディスウェイのしぶとさも面白そうです。父ハーツクライ系×独国血統は近年複数頭好走馬を送り出しています。
ホープフルSではちぐはぐな競馬に終わったサトノヘリオスもこの条件で締まった流れは本来ベストでしょう。
いずれにせよこのレースから8頭も出走してくるだけに層が厚く、無視できない組です。


それではー

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