2020年5月26日

 2020年5月26日、新型コロナウイルスによる緊急事態宣言の全面解除が発表され、“新しい生活様式”と共存しながらも以前の日々の日常が戻り始めました。また、それと同時にAKB48の16枚目シングル“ポニーテールとシュシュ”の発売から丸10年が経ちました。

ポニーテールとシュシュ_アーティスト画像


 昔Tumblrで長文自分語り投稿をしたときも書きましたが、ポニーテールとシュシュは僕が最初に買ったAKB48のCDです。その約1ヶ月前にTSUTAYAで神曲たちを借りて、iPod nanoに入れて高校の通学時間に毎日聴いていたら完全にAKB48のファンになったので買いました。当時はシングルがType AとBに分かれていて、両方買うのはオタクがやることだと思っていたので推しメンの柏木由紀さんがジャケットに載っているType Bだけ買ったのを覚えています。どこからが“オタク”なのかは未だによくわかってないし正解も無いとは思いますが、少なくともAKB48が提供するコンテンツに初めてお金を払ってから丸10年経ったことだけは確かなようです。

ポニーテールとシュシュ_通常盤_Type-B

 この10年、振り返ると色々なことがあったなと思います。AKB48としてはポニーテールとシュシュの発売以降その年の7月に代々木第一体育館で「サプライズはありません」を開催し、次の年の2011年夏には西武ドームでコンサート。2012年の夏には念願の東京ドームでコンサートを行い、2013年の夏にはさらに規模が広がってドームツアーをして…といった形で成長していきます。この間ってすごい長くて濃密だったように感じるけど、今になって思うとたった3年間の出来事なんですよね。人間生まれてから20歳までと20歳から80歳までは体感時間が同じ。みたいな話はよく言われますが、これってあながち間違ってないのかなって思ったりします。AKB48としての最大キャパのコンサートは2014年春の旧国立競技場のコンサートでそれ以降のコンサートの解除のキャパシティは次第に縮小していくので、こうしてみると自分のアケカス人生の半分以上は拡大期じゃない時期であるということに改めて気付きます。

 10年の半分である5年前の2015年のAKB48がどんな感じだったかというと、“僕たちは戦わない”が発売された頃でした。2010年のポニーテールとシュシュ以降、“投票券付きシングル”は水着MVの夏曲というのが定番となっており、総選挙と並んで年中行事のひとつとなっていました。しかしながら、この曲は水着MVでもなければ夏曲でもなく寂しく感じたと同時に「AKB48、何がしたいんだ?」と感じたのを覚えています。

僕たちは戦わない_Type_A

 当時、推しメンの髙島祐利奈さんが学業を理由に卒業していたり、最初の推しメンである柏木由紀さんの例の写真が週刊文春に載っていたりしたことも相まって、僕はこの頃のAKB48について「AKB、もう終わりなんだな」と思っていました。2014年の大組閣の流れで48グループの主要メンバーの誰がどのグループに籍を置いているのかもよくわからないし、期待していた若手ツアーも気付いたら終わるし、そもそも兼任メンバーが沢山出てきて言うほどAKBのコンサートじゃなし、新曲のコンセプトもよくわからないし、センターは“塩対応”を売りにしている島崎遥香さんだし、テレビで過激な発言してる指原莉乃さんがまた総選挙で1位になってこれがAKBの顔みたいな報道のされ方をされるし…といった感じで俺は一体何を見せられてるんだ?と感じていました。そんな“AKB48”を見るのが辛くなった僕は初期のAKBを感じさせ、全国各地の牧歌的なイベントに参加するチーム8を見に行くことで“AKB48”として本当に大切なものを求めて探していました。(現実逃避とも言う)今になって思うとどんなことがあっても心の奥底でAKBのことを嫌いになりたくない自分が自分に無意識の内にそうさせていたのかなとも思います。

 そんな感じで2012年の東京ドームから始まった“AKB48第二章”をダラダラと続けていく中で2017年の総選挙の季節となりました。指原莉乃さんが最後の総選挙を公言し、渡辺麻友さんがランクイン後のスピーチで卒業を発表した総選挙です。その年の総選挙の投票券がつくシングルである“願いごとの持ち腐れ”を聴いた時には本当に我々が愛したAKB48は終わってしまったんだなと感じたことを今でもよく覚えています(現に一番聴いてないシングル曲だと思う)。しかし、高橋栄樹氏が監督を務めたその選挙の結果を反映したシングル“#好きなんだ”のMVを初めて見た時に久しぶりにAKB48のMVを見て「AKBっぽくて良いな」と思いました。長年の夢であった東京ドーム公演を達成して以降、過去の遺産をジワジワと食い潰してただひたすらフワフワと浮きながらただただ緩やかに下降を続けていたAKB48の躍度(加速度を1回微分したもの。単位時間あたりの加速度の変化量。)が久しぶりにプラスになったのがここだったのかなと個人的に考えています。ちなみにこの“躍度”、クルマのアクセルを踏んだ時に思い通りの気持ちいい加速をする指標として使われたりします。詳しく知りたい方はGoogleで検索するとロードスターの論文とかが出てきます(そうなんですね)。この躍度が最も大きかった(=ファンの熱量とグループの勢いの加速がシンクロした)時期は2010年春の満席祭り希望 賛否両論@横浜アリーナのアンコールで正規メンバー48人(当時)の“君と虹と太陽”を披露した瞬間であると考えています。

 これ以降2017年12月8日の12周年公演における組閣、兼任の解除。さいたまスーパーアリーナでのコンサート「ジャーバージャって何?」、新チーム公演としての目撃者(チームA)、RESET(チームK)、シアターの女神(チームB)、手をつなぎながら(チーム4)の開始。またそれに伴う新チーム体制における新センターの人選を見た時にAKB48はようやく新しい時代を歩み始めたんだなと感じたのを覚えています(公演内容が2010年当時と変わらないことには目を瞑ります。オタクなので)。また、2018年の夏はAKB48が初めて選抜としてTOKYO IDOL FESTIVALに出演し、今までのAKB48がやるような世間一般に対して披露するセットリスト(会いたかった、ヘビロテ、フラゲ、恋チュン等の外向けでおもんないやつ)ではなく古今東西のオタクが唸るような内容を披露し、「AKB48、やれば出来るじゃん」と多くのアイドルオタクに思わせることが出来たのではないかと思います。

■AKB48(TIF2018)選抜セットリスト
1.言い訳Maybe
2.Everyday、カチューシャ
3.#好きなんだ
4.重力シンパシー
5.オネストマン
6.転がる石になれ
7.ポニーテールとシュシュ

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 また、そういった流れの中で向井地美音さんが2018年12月8日のAKB48劇場13周年記念公演で当時の総監督である横山由依さんから3代目総監督として任命されました。向井地美音さんは“桜の木になろう新規”とのことなので、“2010年代前半のAKB48ブーム”が産んだメンバーがAKB48の中心人物になった初めてのケースであるといえます。また、これは自分がAKB48のファンになったのと同時期にファンになった一人の少女がAKB48の中心人物になるまでの間ずっとアケカスしていたことを意味しており、アケカスキャリアとして新たなステージに足を踏み入れたことを実感したのを覚えています。

 そんな向井地美音総監督の功績の一つ、そしてAKB48のあるべき姿の再構築の一つとして2019年夏の全国ツアー“AKB48全国ツアー2019~楽しいばかりがAKB!~”だったのではないかなと思います。2019年は年始からNGT48の一件もあり暗い気持ちになる出来事が続いていました。そういった中で“楽しいばかり”を標榜とし、それに準じたセットリストを組み、全国を回ったツアーは我々に改めて“アイドル”そして“AKB48”に求めているものは何なのか?について気付かさせてくれました。AKBを見ることで楽しい気持ちになり明日からの日常生活も頑張ろうと思うことができる。それがAKB48にのみならずエンターテインメントの意義なんだなということを改めて感じると共に、2019年のAKB48がそれを観客に実感させることができるコンテンツであるということを実感し、感慨深くなりました。


■AKB48全国ツアー2019~楽しいばかりがAKB!~セットリスト

M.01 真夏のSounds good !
M.02 Everyday、カチューシャ
M.03 君だけにchu!chu!chu!
M.04 そばかすのキス
M.05 ただいま恋愛中
M.06 彼女になれますか?
M.07 2人乗りの自転車
M.08 RUN RUN RUN

M.09 Choose me!(小栗有以・岩立沙穂・込山榛香・福岡聖菜・西川怜)
M.10 To goで(久保怜音・向井地美音・岡部麟)
M.11 誰のことを一番愛してる(山内瑞葵・村山彩希・佐々木優佳里・倉野尾成美・武藤十夢)
M.12 Relax!(坂口渚沙・岡田奈々・柏木由紀)
M.13 鏡の中のジャンヌ・ダルク(向井地美音・込山榛香・岩立沙穂・村山彩希)
M.14 僕の打ち上げ花火

M.15(撮影タイム)
M.16(撮影タイム)
M.17 Teacher Teacher
M.18 NO WAY MAN
M.19 僕たちは戦わない

M.20 言い訳Maybe
M.21 希望的リフレイン
M.22 大声ダイヤモンド
M23 #好きなんだ (広島公演まで)→サステナブル(福岡公演から)

EN.01 AKB参上!(広島公演以外)/サステナブル(広島公演)
EN.02 恋人いない選手権
EN.03 法定速度と優越感

EN.04 君と虹と太陽と

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 全国ツアーのセットリストは以上の内容で組まれており、最後の曲が“君と虹と太陽と”となっています。上でも書きましたが、“躍度”が一番大きかったときの曲です。また、柏木由紀さんが若手メンバー用に“アイドル修業中♡”公演をプロデュースした際に最後の曲として選んだ曲でもあります。その理由として

・簡単過ぎず難し過ぎず
・アイドルらしさがわかる
・一生懸命さが伝わる
・恋愛に偏り過ぎていない歌詞
・笑顔で踊れる
・笑顔の中でも色々な表現が必要になる歌詞

を当時SHOWROOM配信にて挙げています。こういった物語を含んだ楽曲を全国ツアーの最後に持ってくるのを見て“分かっている”AKB48になってきたことを感じました。

 AKB48の15周年イヤーである2020年の最初のシングルである「失恋、ありがとう」は3月18日に発売されました。センターは山内瑞葵さんです。ここ数年のAKB48のAKB48を見ていたら誰もが文句を言わない選択じゃないかなと思います。ずっきーは本当に偉いので。逆に言うとそのくらい“順張り”な人選だなととも思います。2020年のAKB48において同じく“順張り”なものとして“IxR”の存在が挙げられます。IxRは昨年の14周年記念公演で発表されたユニットA~Hの8つのユニットの内の一つであり、ユニットAと呼ばれていたユニットです。メンバーは小栗有以さん、久保怜音さん、西川怜さん、山内瑞葵さん、大盛真歩さんの5人です。いかにも「ぼくがかんがえたさいきょうのAKB48次世代メンバーユニット」という感じで、初めて見たときの感想としては「マジでこれやんのかよ」といった感じでした。2010年頃のYouTubeで「AKB48」で検索すると上の方に出てきた板野友美さん、篠田麻里子さん、前田敦子さんの3人のハート型ウイルス(2009年の神公演予定@NHKホールのやつ)に近いものを感じました(伝われ)。派生ユニットはノースリーブスや渡り廊下走り隊をはじめとして所謂“全盛期”の時代に各事務所が作って活動していましたが、AKB48がグループとして明確なコンセプトを持って世に出すメッセージとして作られたユニットはこれまで無かったと思います。AKBの歴史は“ゴリ推し”や“干され”等、誰が選ばれて誰が選ばれないといった話で延々と揉めてきた歴史でもあり、「なんでこいつが?」と思われるような人選をわざとすることでそれを話題の燃料としてきた側面もあります。そんなAKBがここまで納得できる人選でユニットを組み、納得できる内容のセットリストのライブ(ユニットライブ@渋谷ストリームホール)を行ったという事実は、アケカスに対する運営の「今の俺たちはちゃんと何が正しいかわかってるよ」というメッセージのようにも感じました。

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 2020年のAKB48は新型コロナウイルスの影響を大きく受け、ユニットライブや握手会、横浜アリーナで予定されていたコンサート等が中止になってしまいました。しかしながら、そんな状況において1つの動画がYouTubeにアップされました

 この動画は企画・編集を向井地美音総監督を中心とするメンバーが行い、それぞれのおうちで「365日の紙飛行機」を撮影し、今AKB48にできることについて考えた動画とのことです。2011年の東日本大震災のときには“誰かのためにプロジェクト”として被災地訪問をはじめとする様々な活動を行ってきましたが、このようなことを総監督である向井地美音さんを中心としたメンバー主導で行い、こうして一つの形になったのを見た時に、15年続けているグループの“深み”のようなものを感じました。

 この動画以降“OUC48プロジェクト~おうちから、ニッポンを元気に!!~”として日々様々な動画がSHOWROOMの配信やYouTubeの動画で配信されました。そして、これらの様々なコンテンツを見ることで2020年のAKB48のあるべき姿について改めて考えさせられました。OUC48の企画の内容として最も評価できるものの一つとして過去のライブ動画をインターネットに公開せずにここまできたことが挙げられると思っています。この“ステイホーム期間”にB'zやMr.Childrenといった日本を代表するアーティストが過去の動画をYouTube等にアップしました。それ自体は素晴らしいことだと思いますし、私も視聴しましたが、彼らと違ってAKB48は“当時”と“現在”のメンバーが異なります。そういった中で「“あの頃”はよかったよね」とういったような感想で盛り上がることに頼らずに“おうち公演”をはじめとするメンバーが自宅にて行う“今”にこだわったものを毎日インターネットに投稿したことが“2020年のAKB48”としての覚悟を示すことができていたのではないかと感じました。

 また、最近あった出来事として、指原莉乃さんがワイドナショー(フジテレビ系列)において、検察法改正の件について発言し、賛否両論話題になりました。かつてHKT48で5人が活動を辞退した際に「支配人ってなに? オトナノオシゴトムズカシイネー」とGoogle+に投稿していた彼女が“大人の対応”と表現されているのを見ると、秋元康氏がしそうなコメントだなと思うと同時に、指原さん本人が当時“大人”と定義していた人たちが言うようなことを、自分が言ってそれに対してなんやかんやと言われる側となる時代になったんだなということを実感させられます。

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 まあそんなこんなわけで色々なことが起こっているポニーテールとシュシュとシュシュ発売10周年ではありますが、最初のにAKB48のCDを買ってから10年経ってもAKB48が存在すること、そしてAKB48のファンを続けていられること、色々なことが起こりながらも進化し続けているAKB48の目撃者になれていることに幸せを感じますし、これからもAKB48と共に人生を歩んでいけたらなと思いながら雑文を締めさせていただきます。よく握手会は疑似恋愛だと言われますが、こうしてAKB48の歴史と自分のアケカス人生振り返ると、色々なことが起こり、色々な感情になるAKB48はもう一つの自分の人生、“疑似人生”なんだなと感じます。

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これは2014年の総選挙の翌日(所謂梅田悟事件直後)の読売新聞に掲載された全面広告です。

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そしてこれが2020年に新型コロナウイルスで活動ができなくなった時のAKB48(OUC48)のコメントです。

 2014年当時は“大人”が主体でやっていたようなことをメンバー主体でできるだけの力を持ったのが我々の目の前にある2020年のAKB48です。2020年の夏、自粛期間の分を取り戻せるくらい最高の夏にしような。

あとそれはさておき結婚はしたい。しあわせになりたい。

2020年5月26日

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