水上渓谷

ここでは再創造という話を書いています(8/10 完結しました) 随時加筆修正中  we…

水上渓谷

ここでは再創造という話を書いています(8/10 完結しました) 随時加筆修正中  web : https://ractnolt.web.fc2.com/

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    18/8/10 完結しました 8/31 第八部に二話追加

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※ 本作は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。 ★ 登場人物 第零部 一    Drawing Sea (8/31 一部修正) 二    Drawing Sea 2 三    Drawing Sea 3 四    Drawing Sea 4 五    Rest at Seaside 六    Drawing Sea 5-1 七    Drawing Sea 5-2 八    Scramble 第一部 九    Aquarium 0 十    A

    • 再創造の人々(改)

      目次 ☆ ▲平山錐仏(ひらやますいせん)主人公 ▲和田紫尽(わだしづく)海に行きたい ▲行仁水鳥(ぎょうにんみどり)山に住んでる ▲牧野水族館(まきのすいぞくかん)(本名不明)通り魔 ▲萩尾睦陽(はぎおむつび)怪しい男 ▲科囲有樹(しないゆうき) ★ 目次 旧版のページ

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        日記と題をつけて余計なことを喋るぞ。 それだけです。

        • Drawing (再創造/六十四)

           晩秋。 「おはよう、行仁くん」 「もうお昼ですよ。平山さん」 「まあ、そうだね。いやー冷える」  両手を擦り合わせ、息を吹きかける平山。  昼の屋上は続いていた。  昼食をとうに終えた水鳥も、この場所に在り続けている。 「ねえ、行仁くん」 「なんですか」  寒さにも顔を上げ、行仁水鳥が答える。  今、この舞台に立つのは彼らのみ。 「うん。僕がさ、いま目の前のこの街、縹の街の何もかもが、一面の海に見えるって言ったら、どうする?」 「海ですか」 「そう。海。海しかない。ずっと海

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          Drawing Forest 10 (再創造/六十)

          「……なんだ」  十月六日。終わりの後。  午前十時の自宅で朝食を食べながら、適当につけたテレビだった。 「水族館、行くって言ってたのにねえ」  萩尾は食べかけの食パンを冷蔵庫に突っ込むと、部屋の奥、ベランダ窓の手前に敷いたままの布団へ向かった。迷いなく寝転がる。六畳の居間は玄関まで見通せた。  全身を毛布で包む。  通学はやめにした。  ふと見た窓の外。晴れた空と縹の山の緑が美しく見えた。ここは三階だった。  陽気が暗い知らせを助長した。萩尾はテレビを消し、もう一眠りしよう

          Drawing Forest 10 (再創造/六十)

          Scramble 6 (再創造/六十三)

           十月十四日。夕刻。縹高校近くのラーメン屋。  平山、水鳥、萩尾の三人はいつだかと同じ最奥のテーブルを囲んでいる。  休日らしく、人は多い。家族連れらしい子供の声も聞こえた。  間。 「実はさ、俺、有樹に会いに行くの久々だったんだよねえ」  注文を終えて、萩尾が口を開く。 「なーんか気まずくなっちゃって……。かかさず毎週行ってたのにさ。一月もサボっちゃった。まあ、ちょうど和田くんにも会えたし良かったかなあ」 「今日は元気そうだったね」  平山が答える。 「まだ話せてないけどね

          Scramble 6 (再創造/六十三)

          Aquarium 22 (再創造/六十二)

           同日。少し後の時刻。縹市北東の山あい。  仏花を抱え、墓地を訪れた平山の視界に、一人共同墓の前に佇む水鳥の姿があった。  墓石を見上げている。  供えられた花が風に揺れた。 「行仁くん」  平山が声をかける。 「平山さん。どうも」 「ここで合ってる……みたいだね」 「はい」 「これ、洗ってくるね」  平山は花を水鳥に預け、ステンレスの花立を手にした。そう汚れていない。人の訪れはあるようだ。  水道まで歩き、桶を手に戻る。  水鳥は同じ姿勢で立っていた。 「少し前、紫尽の父だ

          Aquarium 22 (再創造/六十二)

          Drawing Sea 11 (再創造/六十一)

           十月十四日。日曜日。まだ明るい夕刻。縹市北東の山あい。  水鳥は、紫尽の元を訪れていた。  等間隔な墓石の間を歩き、階段を上る。  三段目の山側の端。木々に背を抱かれた、水鳥の目指した共同墓の前に、一人の男が立っていた。何も手にせず、ただ一回り大きな墓石を見上げている。  水鳥の足音に気付き、男が振り返る。全身を包んだスーツは、ネクタイに色がある。  どこか見覚えのある目をしていた。 「こんにちは」  仏花と桶を手にした水鳥に、男が声をかける。 「こんにちは」  と返すと、

          Drawing Sea 11 (再創造/六十一)

          Aquarium 21 (再創造/五十九)

           そうして、全てが終息した。  十月六日。あらゆる場所で牧野の犯行が知らされ、同日正午。彼が偶数月殺人の容疑者であるとも告げられた。牧野は全ての凶器と、被害者のものとわかる持ち物や身体の一部を所持しており、前『秩序』の死を前にしても彼の犯行は明確であった。これにより、『秩序』そのもののみに留まらぬ、『秩序』局員まで総入れ替えの騒動となった。また、元『秩序』局員、平山未蓮の罪も明かされ、近しい事件の被害者が親子関係という事実も暫し世間を騒がせた。  幕引きは嵐の如く。  縹の街

          Aquarium 21 (再創造/五十九)

          Drawing Ocean 2 (再創造/五十八)

          「おはよう。紫尽くん」 「おはようございます。水族館さん」  暦は進んで十月。十月五日の金曜日。  朝の挨拶をしながらも、二人は夜の屋上に立っていた。開かれざるべき闇に浮かぶ舞台。立ち入らざるべき月に見下ろされた舞台。  紫尽はグラウンド側のフェンスに寄り掛かって牧野を迎えた。  扉の前に立つその手に、全長三十五センチ程の鉈。 「あっこれはね。なんとなく持って来ただけだから。ここ二回はこれに頼りっきりでさ、手にひっついちゃった」  語る牧野はいつものつなぎを首元まで着込み、背

          Drawing Ocean 2 (再創造/五十八)

          Drawing Sea 10 (再創造/五十七)

           九月十六日。日曜日。早朝。  紫尽、水鳥の二人は再び縹駅から列車に乗り、浜辺の駅、橙止を目指していた。  八月三十一日と同じ。静かな車内。  二人にしても会話は無い。  休日の始発列車は五時二十分発であった。  間。  がたごとと、列車は盆地内を出口に向かって走る。ふと、東の山の間から柔らかい陽光が差した。  二人は金の光に照らされた。    きっかり十八分の後、彼らは砂浜を歩いていた。駅前から始まって、北を向いて、縹の街に背を向けて、のんびりと歩いた。それから、なんとなく

          Drawing Sea 10 (再創造/五十七)

          Scramble 5 (再創造/五十六)

          「水族館さん」  朝の縹高校。校舎を見上げる正門の手前。  歩みを止める声があった。  呼び名ですぐに理解する。 「紫尽くんかあ」  牧野は振り返らずに答える。 「えっ?! どうしてわかるんですか?! 水族館さん背中に目がついてる?!」 「いやいや。単に僕を名前で呼ぶ人が君しかいないってだけ」 「ええ、ほんとですかそれ。寂しい……」 「寂しいとかないしー!」  素早く振り返った牧野が紫尽に飛びかかる。肩から首をくすぐられた紫尽がふふふと声を上げた。無人の霧深い正門。  鳥が鳴

          Scramble 5 (再創造/五十六)

          Aquarium 19 (再創造/五十五)

           九月十一日。火曜日。抜けるような晴天。  一人、昼の屋上へと向かう平山。  その肩。弁当箱入れにしては大きすぎるトートバッグ。  がちゃりと、何の派手さも何の感慨も、何の力強さも弱さも無く扉を開ける。  和田紫尽が居た。 「あれ? 錐仏くん?」  彼は一人だ。水鳥は新居に関する用があると前日に聞いていた。 「一人だって聞いて。一緒に食べても良い?」 「もちろん」  平山は隠さなかった。  二人並んで、コンビニおにぎりを食べる。 「今、一人ずつ話を聞いて回ってるんだ。旧『秩序

          Aquarium 19 (再創造/五十五)

          Aquarium 18 (再創造/五十四)

          「なるほど……そっか。そんなことが……。話してくれてありがとう」  九月十日。月曜日。暮れきった山の中。  平山は、萩尾を訪ねた青台の帰りがけ、その足で水鳥の元へ向かった。夜の山道は多少恐ろしかったが、車道に並ぶ寒色の光を頼りにどうにか辿りついて現在に至る。街灯の存在は『秩序』監視の範囲内を意味した。  水鳥の家――のあった焼け跡は、あの火事から一週間が経った今、すっかり片付いていた。庭には何も無く、家は基礎を残すのみ。流石に一度、人の手を借りたと水鳥は言った。広場の左端、車

          Aquarium 18 (再創造/五十四)

          Drawing Forest 8 (再創造/五十三)

           九月十日。月曜日。  いつも通りの、縹高校。夕刻の屋上。  しかしこの時。この場所は無人。照明を落とされた舞台であった。    そんな屋上からは遠く離れた、夜の街。  縹駅から電車に乗ること三十分、十一駅先にある、縹の街から一番近い都会の駅、青台の細路地の一角。  とあるバーで、萩尾はバイト中であった。 「あー暇」  知人であり雇い主である店長は、人いないし大丈夫だよね! よーし! ちょっと出かけてくるね! なんて意気揚々と出て行ってしまった。萩尾は現在一人。陽も落ちたばか

          Drawing Forest 8 (再創造/五十三)

          Drawing Sea 9 (再創造/五十二)

           九月十日。月曜日。  いつも通りの、縹高校。昼の屋上。  と、始める前に供述すべきことがある。昨晩の帰宅路の会話、紫尽は結局、牧野の犯行をあらかじめ知っていたのだ。九月四日の晩、水鳥によって、牧野が対話の際話した内容は隅々まで事細かに伝えられていた。  それ故の、あの答えであった。  しかし、水鳥による前知識が無かったところで、紫尽の答えは同じだったのかもしれない。  舞台に戻って昼の屋上。 「ねえ水鳥」  こちらはいつも通り、紫尽から始めたようだった。 「なんだ」  激動

          Drawing Sea 9 (再創造/五十二)