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昼下がりに沈み流れて

ロングに行きたい。
そう思っていた週末、だが行き先が見つからない。
そんな時に一通のメッセージが飛んできた。
「ロング行こうぜ」
同じことを考えている奴も居るもんだ、と感心し二つ返事で回答する。
行き先は話の流れでワンイチ俗にいう”東京湾一週”に決定。何時だったかCCWで走り、昼に木更津でラーメンを食べようなんて計画が雨に流れたのを思い出した故の再提案。
すんなり了解され、半年越しの計画は実行された。

行けぬ道なき不沈艦GE-110

私のバイクはGHISALLOのGE-110、俗にいうエンデュランスモデルになる、ロングでの乗り味を確かめたい狙いもあった。
土曜朝6時、人気も疎らな東京日本橋に集合し一路、三浦半島の久里浜へ向かう。
知った道であるが故に横浜までの道のりと、その先の市街地を走る経路に若干うんざりしながら肌寒い空の中を南下する。

道なき道も海の上、乗りゆく船の心強さたるや

予定通り10時過ぎに久里浜側の東京湾フェリーに乗り、房総半島の金谷港に11時に到着。
至って順調だ、寒いこと以外は。

目的地の木更津まで暫く千葉県中部の快走路が続く。この日で一番気持ちよいエリアになる。午前は北風だが、昼にかけて東風から南風に風向きが変わるのも味方し、一定のペースを刻み続ける。

DIOの館

予定より少し早めの12時過ぎ、木更津にある”福のじ”というラーメン屋に到着する。どうやらチャーシューが厚切りでボリューム満点との事。
腹の好き具合を調整してここまで110kmほど走って来たのだ、一番多めを頼みたいところを、40にもなると食後の体調に不安がある、程よくチャーシュー麺3枚を注文しほどなくして商品が運ばれてきた。

なんなんだこれは。

全く減らないTHE WORLD

スープが溢れる前提でトレイに乗せられたラーメンは、今にもこぼれそうな表面張力で耐えている。
そしてベーコンの塊のような風貌のチャーシューが3枚乗り、その下にはうどんと見間違えるような太い自家製面、スープは醤油ベースで刻み玉ねぎとワカメが踊っている。
俗にいう竹岡式というジャンルらしいが、初見殺しだ。

言いしれぬワクワク感と困惑の中、ラーメン玉座に鎮座しているチャーシューを箸にとる、この牙城を崩さなければ先に進めない。
「ぬるい…」
なんなんだこれは?厚みがありすぎて中がぬるいと言うか冷たい。
違和感をグッと飲み込み、口直しにスープを一口啜ると定番ではあるが、安心感のある醤油ベースの濃いめの味が口に広がる、悪くない。

うどんと見間違うような麺を箸で持ち上げ、口に運ぶとコシが行方不明だ、なんとも言い表しにくい不思議な食感を感じる。

どうしようか…、決して不味くはないが、全てがぼんやりしている。ただハッキリしているのは目の前にとんでもない量のラーメンとチャーシューがある事だけは事実。
別にラーメンがとても好物という私ではないので批評する人物に値しないのは重々承知している。しかしだ、個人の好みとして合わないことも世の中には沢山ある、そしてそれを主張する権利は全員に等しく存在している。
割り切りと切り替え。
帰り道中で必要なカロリーを摂取しようと麺を啜りチャーシューを食べ、濃いスープの口直しに玉ねぎとワカメで誤魔化す。

最初に美味しく感じたスープも、途中から辛くて感じる始末で、次から次へと入店する他のお客の「7枚!」とか「5枚で」と言うオーダーを聞き、心底震え上がってしまった。
きっと彼らには木更津ソウルフードなんだろう、まだまだ世界は広いし、自分の見聞なんでちっぽけだと思い知らされた。

食材が勿体無い精神で全てを完食、お腹いっぱいすぎることに感謝し、胃が飛び出した腹をなんとか屈め千葉で一番走り辛い地域を自転車で走り抜けていく。

登れない道しかない

まさに修行、グルメライドなんでオシャレなものじゃない、いつだって快楽と修羅は表裏一体。たまにあるこんな経験も人生のスパイスとしては有益だ。

「あの店の付近だけ時空が歪んでる」と同行者が言ったから4月22日は焼豚記念日。

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