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見えなくなると、見えてくるもの

再発した悪性リンパ腫(AITL:血管免疫芽球性T細胞リンパ腫)の治療は終わったものの、その後の 慢性 GVHD による視力低下が激しく、仕事に復帰できないどころか日常生活もままならない状態が続いている。

(参考)
・2016年5月初発 → CHOP療法 → 自家移植 → 寛解 → 12月から仕事復帰
・2017年3月再発 → ESHAP療法 → 同種移植 → 寛解 → 10月から仕事復帰
・2018年9月から慢性GVHDの悪化により三度目の休業中

最近になって、やっとパソコンなら少々いじれるようになったものの、テレビはいつもぼんやりとしか見えない。眼鏡をかけても視力が 0.1 くらいにしかならず、それ以上はどうやってもピントを合わせることができない状態が続いている。外に出ても、駅の案内や乗り換えの表示、電光掲示板の文字などは殆ど見えない。さらには通勤・通学の鬼気迫る人混みにぶつかると大怪我しかねないので、電車に乗るのは至難の業である。

とはいえ、ずっと家の中にいては運動不足になるばかりなので、毎日徒歩で 3〜10km くらいは歩くようにしているのだけど、GVHD によって口内の粘膜もダメージを受けているため、食べたいものが思うように食べられない。9月の入院時はお粥と流動食だけしか食べられなかったのが、その後、なんとかお粥だけでなく、うどん、つけ麺など太麺の中華麺、脂分の多い鶏もも肉、野菜の煮物、海藻サラダやポテトサラダなど、食べられるものも増えてきた。そんなわけで、最近の数少ない楽しみは、もっぱら「徒歩圏内のうどん屋、つけ麺屋の開拓」となっている。

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幸い、豊洲や銀座、ちょっと頑張れば有楽町くらいまでは歩いて行ける場所に住んでいるので、食べログなどを参考にお店を探し、バッグに ヘルプマーク をぶら下げつつ、30 分〜小一時間くらいダラダラと歩く。視力は 0.1 くらいである。信号の色もわかるし、向こうから来る人も普通であれば充分に避けられる。知らない土地でなければ、だいたいの方向もわかるし、迷ったらスマホで地図を見ればいい。電車に乗るのは怖いけど、徒歩なら何とかなるだろう。そう思っていたし、だいたいの場合は何とかなっている。

ところが「何とかならない場合」というのも多分にある。普通、人は当然のこととして前を見て歩くのだけど、最近はそうでもないのだ。そう、お察しの通り、歩きスマホの皆さんである。いくら草彅くんがテレビやラジオ、新聞広告で力説しても、歩きスマホの人達は老若男女問わずに増えるばかり。彼らは手元を一心に見つめ、時には何か操作しながら、けっこうなスピードでこちらに向かってくる。本人は前も見えているつもりなのか、相手が避けてくれるのを期待しているのか知らないけど、これがまぁ、明らかに危ないのである。一般的なカーナビは、運転中は操作ができないように、なぜ多数のセンサー満載して歩数計も装備しているスマホは歩行中の操作ができないように作られていないのだろうか? もちろん、歩きスマホなんて今に始まったことではない。何年も前から問題になっていたけど、こっちがよく見えていたので早めに察知し、ぶつからないように充分な余裕を持ってい避けてあげていただけのことだったのだ。

そして同じように危なっかしいのが、歩道を走る自転車の皆さんである。かなりの速度、夜でも無灯火、音楽聴きながら、さらには携帯ゲーム機やスマホ操作をしながら、歩行者の多い歩道を我が物顔で走り、自転車乗り入れ禁止の遊歩道に容赦なく乗り入れてくる。さらには両肘をハンドルに乗せ、ヘッドフォンをしたまま両手で PSP を操作して無灯火で夜の歩道を走るという危険運転のフルコースみたいな人も本当にいたりする。……っていうか、自転車の危険運転は罰金の対象じゃなかったっけ? 日本全国のお巡りさんは、これをちゃんと取り締まって罰金を取り立てたほうがいいよ。そのお金で自転車の安全運転をしっかりと啓蒙してほしい。これだって何年も前から問題になっていたけど、こっちがよく見えていたので早めに察知し、ぶつからないように充分な余裕を持ってい避けてあげていただけのことだったのだ。

【自転車編】みんな知らずに捕まる道路交通法15選!家族に教えてあげたい
歩行者にベルを鳴らすの禁止 / 自転車に乗って犬の散歩禁止 / スマホ(ながら運転)禁止 / 傘さし運転禁止 / イヤホン・ヘッドホン禁止(地域により判断は異なる)/ 自転車の2台並走禁止 / 夜の無灯火運転禁止 / 右側通行禁止 / 自転車は歩道を走るの禁止 / 自転車も飲酒運転禁止 / 自転車も一時停止無視禁止 / 自転車も一方通行無視禁止 / 進路変更時の合図もすること(地域により判断は異なる)/ 児童のヘルメット未着用禁止 / 罰則!3年以内に2回以上摘発されたら?

それ以外にも、「見えなくなると見えてくる」ことって、本当にたくさんある。たとえば、「アスファルトに埋め込まれた電球で街路樹を照らす、ちょっとオシャレな照明は、視力が低回しているととても眩しく感じる」とか「エスカレーターの乗り口・降り口はかなり直前まで来ないとわからない」とか「段差があるところに限って照明が行き届いていない」とか。

少し前に、ユニバーサルデザインを謳う「誰でもトイレ」に「ペダルを踏まないと蓋が開かないゴミ箱」を設置していたことが問題になったりしたけど、当事者にならないとわからないことって本当に多い。世の中のどうでもいいクレームなんかより、こういう声こそ遠慮なく発信できて、それをちゃんとすくい上げるシステムがある世の中になってほしいと思うばかりだ。

そして今日も、歩きスマホと自転車の危険運転に怯えながら、僕は夜の街に繰り出すのだ。

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