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サッカー五輪代表のオーバーエージに学ぶ 「年長者が若い組織で付加価値を発揮する」 3つのパターン

オリンピック終わりましたね。一番注目して見ていてのは男子サッカーでした。金メダルを本気で期待していただけに結果は残念ですがすごく感動しました。久保の最後の涙は本当にもらい泣き寸前で、色々と思うところがありますが、森保監督やサッカー協会への批判はケイスケホンダさんに任せておきつつ、自分はスタートアップの人事という立場から彼らから学び取ったことを記録しておきたいと思います。

「メダル」という結果は出ませんでしたが、その過程に至るまでのプロセスにおいてチームというテーマでいろいろなことを考えさられましたし、勇気をもらった代表チームでした。選手の皆さんと運営に携わった方に本当にお疲れ様でしたという感謝の気持ちを伝えたい気持ちでいっぱいです。

<こんな人に向けて書いてます>
・これまでの経験を生かして新しい環境にチャレンジしたい気持ちはあるもののスタートアップなど平均年齢が若い組織に飛び込むことに抵抗がある人
・学び直しなどで自分より若い人たちと協働する必要がある人
・若手主体の組織に経験がある人を融合させシナジーを出したい人事
・次のパリ五輪でオーバーエージを狙ってる人

<こんなこと書いてます>
・サッカー五輪代表のオーバーエージたちに学ぶ、年長者が若い組織で付加価値を出す3つのパターン(時間ない人は下のスライドのみご覧ください)

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オーバーエージの融合とToB向けStartup組織の共通点

サッカー五輪代表を語る上で欠かせないのが、「オーバーエージ」の存在でしょう。よくご存じではない人に説明しておくと、サッカーには年齢制限があるのですが、本大会に限って年齢制限を超えた選手を3人まで招集することができます。ただし、予選を戦ってきた組織に急に実力者を3名加えて、そのまま戦力がアップするかというとそういうわけでもないのが組織の面白いところ。融合し成果を出すまでのリードタイムが足りなかったり、場合によっては若手が萎縮してしまったりと一筋縄ではいかないのがオーバーエージです。

ビジネスの世界では、大企業で経験がある人やスタートアップでの複数の経験をひっさげて、若手中心の勢いのある会社にジョインする機会が増えております。サッカーのオーバーエージ同様、経験者の知識やスキルをうまく融合し、成果を出せるパターンもあれば、意外とうまくいかないこともあったりします。特にToB(会社向けのサービス)では、業界のルールや規制など、経験値でビジネスをレバレッジすることができるパターンがあり、経験者の採用し活躍してもらうことは組織運営上非常に重要です。構造が似ている部分があったので、今回のオーバーエージ3名がどのように付加価値を出したのか?を整理してみました。

「いや、お前誰やねん」というツッコミが飛んできそうですが、五輪代表の普段の様子をTeam Camというロッカールームやホテルでの様子がノーカットで放映される最高のyoutubeチャンネルを全部チェックしたり、各選手のインタビューやsnsを見てるだけの暇人です、はい。

吉田麻也:経験を"伝える"だけではなく、若手に"伝わる"まで行動で示し続ける

過去二度のオリンピック出場の経験がよく取り上げられてますが、経験そのものよりも、経験をうまく言語化し、伝承できるリーダーシップに価値があるなと感じました。ことあるごとに円陣やメディアを通じて士気上げることを発言してる機会をよく目にしますが、発言だけではなく、若手からの信頼関係の獲得の仕方がすごいなと。よくいる「口うるさいだけの年長者」ではなく、若手のグループに自分から話しかけたり、適度にいじられる関係をつくってるコミュニケーション力の高さを感じます。

また、最年長にもかからず、自らは全試合フル出場という行動で示しているところも特徴的です。というのも、やっぱりなんだかんだ言って「戦っていない」人の言葉ってどうも響かないものです。イキのいい若手の「心」を動かし、組織へのインパクトを出すには、過去の貴重な経験を「過去はこうだった」と伝えるだけではなく、「では、その経験を踏まえて今どうすべきか?」を共に考え抜き、同じゴールに向かって一緒に戦うこと。そこが機能して初めて組織の武器になっていくものだと思います。

残念なパターンは「言ってることは正しいと頭では納得できても、信頼を勝ち取れてなくて心にささらず行動につながらず、組織の価値に還元されない」パターン。吉田はその雰囲気を微塵も感じさせないキャラクター・コミュニケーションでした。溶け込みに行くコミュニケーション力はビジネスの世界でも重要です。

余談ですが、最年長の全試合出場の裏には相当なリカバリー力があると思うのですが、これは若い頃からの意識の高さの賜物だと感じます。彼は圧倒的に強度の高いプレミアやセリエでやりながら怪我が少ない。同年代ですでに引退している内田篤人にも FOOTBALLTIME で「若い頃から半身浴するなどのケアなど意識が高かった」と褒められてましたが、12個下の久保と共に戦える体は一朝一夕では作れません。

さらには、大会前に自らが批判されること覚悟で涙ながらに「無観客開催に異議を唱えておりました。これはおそらく全選手の代弁で、その姿に若手は「何があってもこの男についていくぞ」となっていたのではないでしょうか。リスクがあっても、スタンスをとって、言いづらいことを代弁できるリーダーは本当にかっこいいですよね。

メダルを逃したメキシコ戦を終え「完敗でした、胸を張って帰りたい」という姿に「十分頑張ったよ!!お前は悪くないよ!」とテレビに向かって叫んでしまいました。

感情的になってしまいましたが、まとめるとポイントの一つ目として、「経験を言葉で伝える際に、きちんと受け取ってもらうための信頼を獲得するための日々の言動」あたりがポイントでしょうか

遠藤航:「目線をあげて、言いづらいことも言う」

言わずと知れたドイツブンデスリーガで一対一ランキング一位のデュエル王こと遠藤航。やはり世界の一線級で戦っている男だけあって一つひとつの発言が頼もしく、「ブンデスリーガで自分が怖かった相手は一人しかない」と言い切る人が仲間になっただけでその心強さは半端なかったのではないでしょうか。

スタートアップでも、圧倒的なスキルと経験を持った人が「オレがいってるんだから間違いない」感を出しつつ、かついきなり成果を出してくれると一気に組織に勢いとモメンタムが生まれます。誰もが知るサービスのゼロイチフェーズにいたエンジニアや、グロースのど真ん中位にいたマーケターや、戦略コンサルのパートナーなどなど。

個人的なハイライトは、大会前の親善試合のあと、ロッカールームでチームメートの橋岡大輝に「ブチ抜かれんなよ、お前」と説教するシーン。「世界基準で見るとこれじゃダメ」とピシャッと伝える姿がteam camに載せられ話題になってました。ムードメーカー的な性格でちょっとヘラヘラ(してるように見えた)橋岡の表情が一気に凍りついてた姿が印象的でした。

そりゃ誰だって耳障りの悪いことなんて、言いたくないですよね。だけど嫌われる覚悟で言うべきことを言ってくれるのは組織の目線を上げる上で大事ですし、監督とかからするとありがたい存在だった思ったと思います。スタートアップで言えば「競合と比較したときに、そのクオリティはありえないよ、ちゃんとやろうよ」と言えるようなイメージでしょうか。こういう年長者が組織に与える付加価値は非常に高いです

遠藤と橋岡は過去レッズで一緒にプレーしていたこともありかつベルギーでのシントトロイデンのパイセンという信頼関係もあっての発言でしょうし、言われる側の橋岡も素直にFBを受け取る性格だからきつめのこと言っても大丈夫だったのでしょう。その橋岡のFBを素直に受け取れるキャラクターも素晴らしく、酒井宏樹が出場停止のニュージーランド戦で活躍する姿を見て本当に見ていていいチームだなと。橋岡のシントトロイデンでの成長も期待です。

遠藤航に話を戻すと、メダルがかかったメキシコ戦で3失点に絡んでしまいましたが、「批判は全部自分にして」と若い選手に批判が行かないように責任を全てを背負い込む姿がカッコ良すぎました。実力及びこれまでの貢献は誰の目からも疑いようもなく、最後は明らかに酷使されすぎての疲労の結果だけに見ていて痛々しく、「十分頑張ったよ!!お前は悪くないよ!」とYahooニュースを読んで叫んでました。(2回目)

まとめると、自分のパフォーマンスは前提の上で、「組織の目線を上げて、耳の痛いことも言う」ことで付加価値を発揮していたのではないでしょうか

酒井宏樹:圧倒的な個の力での弱点補強

「頼もしい」と書いて"酒井宏樹"と読む。サイドの一対一に関しては、まさにこんな状況だったのではないでしょうか。圧倒的な個の力でこのチームの弱点だった右サイドに完全に蓋してました。普段のフランスリーグの一線級でやってるだけあってべらぼうに一対一に強い。組織としての弱点を強みに変えるほどの圧倒的な個の力でした。守備面だけではなく、メキシコ戦の1点目につながった堂安への縦パス、フランス戦での2点目でのゴールと要所要所で攻撃面でも価値を出していたのはさすがでした。あまり自己主張をするリーダーシップ を取るタイプの選手ではないですが、背中で引っ張るアニキ感が半端なく頼もしかったです。

サッカーのように相手のある戦いだとどうしても「個」の力で突破せざるを得ないシチュエーション、もしくは相手が勝負を仕掛けてくるシチュエーションはあるのですが、属人的だろうがなんだろうが、力でねじ伏せるその姿は、チームに勇気を与えました。また、ここから先は推測ですが、五輪本番中、堂安のプレスバック力が飛躍的に上がっていたのは同サイドの酒井が最低限の守備をさせて攻撃に集中させるコーチングがあったのではないでしょうか。

スタートアップにでは、若い組織ではどうしても経験値がものをいう種類の不足の人材が不足しがち。例えば法務・人事・ファイナンス・監査・リスク管理など「修羅場をくぐってきている」経験値が業務の成果に直結する系の専門的な仕事に関しては、オーバーエージ的な経験値を持った人で補填できると非常に有効です。圧倒的な経験値や属人的な力でねじ伏せながら弱点に蓋をし、「〇〇さんに任せておけば問題ない。"頼もしい"と書いて〇〇さんと読む」状態は、年長者の模範的な価値発揮のスタイルかと思います。その上で、イキのいい若手を攻撃に集中させることができたらその組織の「酒井宏樹」を名乗ってください。

そんな酒井宏樹の泣き顔がアップで抜かれたときは、「十分頑張ったよ!!お前は悪くないよ!」とテレビに叫んでました。(3回目)

まとめ

年長者が、若い組織に入って意識すべきこと
1.経験値が「伝わる」ための信頼獲得するための日々の言動
2.嫌われることを厭わずに「目線を上げる」役割
3.圧倒的な「個」の力でわかりやすく組織貢献する

だらだらと書いてしまいましたが、オリンピック楽しかったです。W杯も楽しみです、応援してます。

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