緩慢で、怠惰な、それでいて、ここが極地であると認めることができる瞬間

いくらでも一人でいることが平気なのに、いざ二人になると、相手が風呂に入る数十分の時間さえ寂しくなってしまう。

愚かだ。

***

きっと、風呂で色々とするだろうから、帰って来るのに時間が余計にかかるだろう。君が美しくあるために必要な手順なのかもしれないが、それはいらない。例え、必要な手順を省いて、少しばかし美しさに翳りが生じても僕が一生愛するのだからかまわないだろう?

そんな風に、考えていると彼女が風呂から出てきた音がする。

僕は、「もう少し一人で寂しがっていたかったな」などと思いながら、彼女を迎える。

少し、まともになりつつあった頭が、また混濁していく。しばらく経てば、すっきりとただの阿呆になれるだろう。

***

緩慢で、怠惰な、それでいて、ここが極地であると認めることができる瞬間までもう少し。

きっと射精のあとも、僕の頭は晴れないだろう。

それでいい。

死ぬまでは、随分と長い時間があるはずだ。

おそらく、多分。

かりに、思いがけない死にかたをするなら、それはそれでいい。

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