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3分で読めるレイルロオドのお話「日々姫先生のデコレエション教室」&セリフではなく、絵に語らせる


本日は音声作品の収録がありました。

音声作品とは

「耳だけで、音と物語とを楽しむコンテンツ」であるといえましょう。

文字情報の表記なし。
画像表示なし。

ヘッドホンorイヤホンだけを耳にして、なんならお布団に横になりながら目を閉じて。
そのようにして楽しむコンテンツでございます。

ですので、音声コンテンツのセリフにおいては、
「そこで鳴っている音がなんであるか」を説明する必要がございます。

例えば、擬音で書くと「ざーーーーーーーっ」という音。
ホワイトノイズ。

これはもう、周辺情報なしに聞くと

・TVを消し忘れて放送終了してしまった

のか

・滝の近くにいる

のか

・イヤホンジャックが接触不良を起こしているのか

――もう、まるで判断がつきません。

のでので、セリフで状況を説明してあげる必要が生じます。

それも、できるだけ「説明に聞こえないように」です。

「TV、放送終了しちゃってるよ?」

などというセリフを吐く人間は、恐らくこの世にいません。
そういうセリフを書いてしまうと、リスナーさんも
(あ、説明されてる)と感じ、物語への没入度を下げてしまうような気さえいたします。

放送終了したTVの前で、そのホワイトノイズを流しっぱなしにしている人間。
その人を目の前にしたときに出てくる自然な言葉は恐らく

「どうしたの? つけっぱなしで」

とか、それに類するものになります。

それだけだと説明がたりないな、という場合には

「リモコン……あれ? どこ」

とかやって、なんならごそごそと探しものする音をいれて。

しかるのち

「あった」

の一言と同時にホワイトノイズを止めれば、恐らくほとんど全てのリスナーさんに

「放送終了後もつけっぱなしだったTVが消された」

ということが、比較的自然に伝わるのではないかと考えます。

で。

わたくしここ数年で音声作品のシナリオを結構書いておりましたので――
こういう感じの台詞回しが、くせになってしまっていたようなのです。

しかし。
WEBTOONにおいては ↑のシーン、セリフは一つですみます。

「うわ?! なにしてんの」

とか、そういうので。

TVに砂嵐が表示されてるのも、リモコン探すのも、見つけてTVを消すのも、全て
「絵」で処理できるからです。

なんならTVつけっぱなしの人をみつけてぎょっとするのも絵だけで処理=説明できます。
けれどもそういうシチュエーションでは「声が出ちゃう方が自然だしわかりやすい」ので、セリフがあったほうがいいかと思います。

のでので、わたくし内部では、WEBTOON作品におけるセリフは

『できうるかぎり、絵に説明させる』

『その上で、声が出たほうが自然なケースや、セリフの補強が必要な場合は、セリフを言わせる』

『セリフで説明はしない。込み入った説明が必要な場合は、ナレーション(天の声)にまかせてしまう』

という感じで扱うように、最近は改善こころみております。

結果、見やすく、テンポよくもっていけてるかな? という感がございますので、
この辺今後も意識して、より自然で魅力的なセリフを喋ってもらえるように、がんばっていきたく思います。

そんなこんなの試行錯誤の成果物である
WEBTOON作品『レヱル・ロマネスク0』のネーム群は

どなたにも無償でご確認いただける0~7話のネーム

および、メンバーシップ特典として公開されているそれ以降のネーム

としてまとめていってございますので、
もしよろしければご笑覧のほどいただけますと幸いです。

さて、今回は「絵が語れることは絵に語らせる」がテーマの記事でしたので、
短いお話も同じテーマで書いていきたく思います。

タイトルは
「日々姫先生のデコレーション教室」

どなたにも無償でお読みいただけますので、どうぞご笑覧いただけますと幸いです。

■日々姫■

右田一酒造元の次女。双鉄の義理の妹。
本人は酒造の一員になるつもりだったが、
画才にあふれていたがため、デザイナーの道を歩むことになった。

■ハチロク■

御一夜鉄道8620形8620号蒸気機関車専用レイルロオド。
自身の専門分野についてはスペシャリストである上に、
新しいことに0から挑戦する気概も持ち合わせている。

■「日々姫先生のデコレエション教室」■

(あらすじ)
台所からの唸り声。
いぶかしんだ日々姫が覗いてみると、
そこには固まっているハチロクの姿がありました。

///

「……ぅぅ……あ――ん……」

なに、これ?
お台所――

「誰かおると?」

「あ!? え? わたくし――」

「聞こえたと、唸り声。まさかハチロクとは思わんかったけど」

「あうっ、お騒がせしてしまいすみません」

真っ赤になって目ば落とす。
って――

「そいば、ケーキ……の――」

「キットでございます。市販のスポンジケエキとクリイムとフルウツを重ねるだけで、
スコップケエキというものが作れると、真闇様から教えていただきまして」

「にぃにのお誕生日に?」

「はい。このやり方でしたら人間のみなさまの食べ物を食せないわたくしにも、
間違いない物がつくれるのではないかと考えまして」

「なるほどなるほど」

ハチロクの手元にはチョコレート。
機関車の形ばしてる、市販の立体チョコ。

「けど、飾り付けに悩んで手がとまっちゃったと?」

「!」

びっくりした顔。
のろのろ、頷き。

「はい――お恥ずかしいことに」

「恥ずかしくなんかなかとよ! 
新しいことにチャレンジするの、とっても素敵なことやけん」

しかも、にぃにの笑顔のために。
そんなん絶対! 応援しなきゃいけんけん。

「やけん、ちょこっとだけアドバイスしてもよかと?
デコレーションもほら、デザインの範疇にあることやけん」

「デコレエションも、デザイン――」

ぱってハチロクの顔が輝く。

「なるほど確かに! でしたら、こちらこそお願いします。
ぜひとも、わたくしにご教示を」

「ん。じゃ、まずいちばん最初にやることは
『主役を決める』」

「主役、でございますか?」

「そ。ケーキの中の主役。
にぃにに一番見て欲しい要素って、なに?」

「それはもちろん、このチョコの機関車でございます!
C12なのが残念ですが、なかなかの出来でございますので」

「主役がきまったら、次は見せ方。
クリーム、生とチョコとがあるでしょお」

「はい」

「そいば、どぎゃんふうにつかいたい? つまり、機関車。
土の上を走らせるのか、雪の上を」

「あああ!」

ぶんぶんぶん、すごい頷き。

「土です! 土にいたします!
そうしましたら、フルウツたちが――」

「ん! 森とか花とかにも見立てられるとよね!」

主役が決まって、コンセプトばきまったら、
あとは要素の整理と整列。

この辺はハチロク、きっと上手にできそうやけん――

「しばらくの間は居間におるけん、もしもなんかあったら声かけてよかよ」

「はい、ありがとうございます! 日々姫」

目線はずーっとケーキの上。
よか感じに集中できてる。

やけん――気ばちらさんように、だけど一言、
どうしても言っときたいけん、そっと呟く。

「仕上がり、楽しみにしとるけん!」

;おしまい

///

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