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世界観説明のコツ~WEBTOON作品『レヱル・ロマネスク0』第9話シーン3ネーム&字コンテ公開

世界観。
物語の背景世界設定を表す言葉です。

「どこにでもある現代の学園を舞台にした」とかであれば深い世界観説明は必要ないのかもしれませんが、ファンタジーやSF等――
「いま、ここ。あるいは想定読者の誰もが共通認識として知っている世界」以外を舞台とする物語においては、どうしても「読者に世界観を伝える」必要が出てきます。

わたくしはわりと世界観がシンプルではない物語を書くことが多いので、世界観の説明には、いつでも苦労しています。

本日は、その苦労の中から見出しました、わたくしなりに意識しているポイントをいくつか書いてみます。

■世界観を見せる順番を意識する

古い作りの物語ですと、「創世神話」を最初にどかん、と書くようなものも結構あったかと思います。
けれどもいまどきそれは、よくても読み飛ばされる、悪くすれば最初から見切りをつけられ他の物語へと食指を伸ばされてしまう――などの結果になりがちなのではないかと思われます。

なぜなら、そういう作りの商業作品(≒編集者さんが売れる/売れないをシビアに判断し、修正を加えている可能性が高く思われている作品)が、ほとんどないように思われるからです。

わたくしの主戦場であったゲームシナリオ作成上においても、「想定プレイヤーさん」がどうこうという点について。結構あちこちでお聞きしたり、話し合う機会にめぐまれたりいたしました。

そうした場面においても、ごく最近のプレイヤーさんの傾向として
『ストレスの無い展開が好まれる』ということを、しばしば耳にしました。

物語冒頭は、まだキャラクターも動かず、なんの魅力も読者さんにお伝えできていない状況ですから、
そこでいきなり「僕の考えた最強の世界観」をお披露目しても、それはストレスとなるだけな可能性が高いのではないかと思われます。

ので。
まず見せるべきは「キャラクター」であり、その魅力となるわけです。

キャラクターを見せ、魅力を伝え。
そこから世界観を見せていくなら、世界観説明が「ストレス」となる可能性を大いに減じることができるはずです。

■世界観は、できるだけ自然に見せていく

例えば、特殊な因習を持つ村が舞台の物語だとします。

これを、例えば大学の先生が「この村には特殊な因習があり」みたいに紹介し、主人公がそれに興味をもって――的な導入はありえます。

けれどこれも、どちらかというと、わたくしの好み的には「創世神話方式」に近いよなぁ、と感じられてなりません。

つまり「読者を身構えさせてしまう」つくりとなってしまっているのです。

もちろん身構えさせておいた上で、大上段から予測だのなんだのをぶった切る!!! という筆力・構成力があるなら、あえて身構えさせるやり方は、
めちゃくちゃ有効に機能するのでございましょうが……わたくしはそういう腕っぷし型ではないので、
「できるだけ読者を身構えさせないで」世界観を見せていく方が、好みのつくりかたとなります。

具体的には
「キャラクター同士の自然な会話の中で、世界観を見せていく」といった方法です。

わたくしの代表作(「ものべの」「まいてつ」)では、まったく同じ作りの導入で、世界観を見せていっています。

つまり 「長期の不在からの帰還」 という作り方です。

「帰還者、あるいは来訪者の視点」があると、会話によって「気になるところ」≒「その世界観独自の要素」を自然に説明することができます。

会話は、キャラクターの魅力を大いに打ち出せる場面ですので、
そこで行う世界観説明は、バランスコントロールが大変しやすいのではないかと感じています。

いわゆる異世界転生ものは「主人公=来訪者」であるケースが多く思われ。

この「世界観説明を自然に、会話で」を非常にクリアしやすいので、世界観を自然に見せるやり方と、相性がよいジャンルではないかと思います。

■世界観は、できるだけ小出しに見せていく

どんなに魅力的な世界観だとしても、それをわーーーーーっと押し付けられてしまうと、
「説明されるストレス」>「キャラクター等の魅力」
となり、物語を中断されてしまうリスクがあがりそうに思います。

ので、世界観はできるだけ小分けにして見せていくのが重要です。

分量の具体的な目安としては『1シーンにつき、ひとつの用語』くらいが限界なのではないかと思います。

例えば「大廃線」という用語と「エアロクラフテック機関」という言葉をいっぺんに説明するのだと重すぎて。

「エアロクラフテック機関――いわゆるエアクラを利用した新交通システムの発展により鉄道網が崩壊した。これがいわゆる大廃線でございます」

「その、『エアロクラフテック機関』というものはなんだ?」

「それは――」

「あの! すみません!!!」

「おや、お客さんだ」

的に、

・1語を説明したら、それ以上の世界観説明は詰め込まない

・「この新しい語はなんだろう?」という疑問を、むしろヒキとして使って、別のシーンでまたその語だけを説明する

……くらいにバランスとっていくと、
「キャラ等の魅力」>「説明を受けるストレス」
という不等式を保ちつづけることができ。
結果、物語から離脱されてしまうリスクを軽減できるのではないかと思います。

■まとめ

<世界観は、見せる順番が大事>

<世界観は、自然に見せることが大事>

<世界観は、小分けに見せることが大事>

というのが、わたくしなりの「世界観説明」における三大ポイントとなります。

どなたかの御役にたったり、反面教師にしていただける部分がございましたら幸いです。

そんなこんなで本日も
WEBTOON作品『レヱル・ロマネスク0』の第9話
「赤井宮司とニイロク」のネームを掲載してまいります。

先日公開のシーン2

につづきましてのシーン3です。

こちらはメンバーシップ会員さま限定での閲覧物となっておりますが、
字コンテの方はどなたにも無償でご確認いただけますので、
どうぞお楽しみいただけましたら幸いです。

また、0~7話までのネームの方もどなたにも無償で公開しておりますので、
よければどうぞ、あわせご確認いただけますと幸いです。

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どうぞご笑覧いただけますと幸いです。

『赤井の説明』

(あらすじ)
隈元銀行の狙いについてニイロクに説明する赤井。
その巧みさにすっかり感心したニイロクは、
説明上手の秘訣を、赤井に尋ねます。

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