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3分で読めるレイルロオドのお話「整頓好きのニイロク」&『セリフ整頓のルール』の重要性

WEBTOON作品のネーム作成にあたり、わたくしは日々新しい作品に触れ、あるいは新しい知識に触れているのですが、
先日、非常に端的でわかりやすいアドバイスをいただきました。

それは
『セリフは1画面にひとつが基本。多くてもふたつ』
というものです。

WEBTOONはテンポよく、わかりやすく進行していくことがキモのひとつだと、わたくし最近感じるようになりました。

なのに、一つの画面に例えば3キャラの台詞がワっと集まってしまうと
テンポの良さもわかりやすさも減じられてしまう――

ので、『セリフは1画面にひとつが基本。多くてもふたつ』というアドバイス、すっきりと腹落ちしました。

しかし、わたくしはもともとゲームシナリオライターで、
「声優さんが魅力的に演じてくださるようなセリフを書く」
ことも、仕事におけるポイントの一つでした。

のでので、ほとんど手癖として

「掛け合いを多くする」
「名前(キャラ名)を多く呼ぶ」

というのを、持ってしまっております。

まったく何も考えずに書いたセリフはその癖がもろに出てしまっているものとなります。

先日ネーム公開した#11の、例えばシーン4のネームと字コンテとを

見比べてもらえれば、わたくしが「いかにセリフを削っていったか」を見ていただけるかと思うのですが、
ネームはメンバーシップ特典となってしまいますため、メンバーシップ不参加の方にもおわかりいただけますようにと
「修正前と修正後のセリフ比較」を作成してみました。

こちらで具体的に「わたくしがどんなこと考えながらセリフ修正していったか」を再現してみましょう。

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C1: 「ハチロク」に話しかけていることは絵で自明なので、そこをカット

C3-C6 : セリフをまとめることにより、1カット分のセリフを削減

C4-C9 : セリフをいいかえまとめることにより、1カット分のセリフを削減

C10 : 「……(無言)」を、こころの声にして&一度口にしたセリフを繰り返すことにより、わかりやすさをアップ

C14-C15 : 「もう一度」「もう一度」になってたので、もう一度を一回ですませるべくブラッシュアップ

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こんな感じです。

このシーンではなかった要素も加えると、わたくしがセリフ整頓にあたって強く意識してるのは

『不必要なキャラ名の呼びかけを削る』

『「はい」とか「うむ」的な”受けのセリフ”をできるかぎり省略する』

『省略した要素を補う形で、セリフをいいかえ、まとめる』

――の3点となるかなぁと思います。

表現媒体によって「何が必要で、なにが重要度低くなる」のかはかわってくるかと思います。

ので、「その媒体にあった、セリフ整頓のルール」を自分の中で定めておくと、推敲の効率を大きく向上させられるんじゃないかな、と思います。

少しでもどなたかの参考になったり反面教師としていただける部分ございましたら幸いです。

さて、今回は整頓がテーマの記事でしたので、
短いお話も同じテーマで書いていきたく思います。

タイトルは
「整頓好きのニイロク」

どなたにも無償でお読みいただけますので、どうぞご笑覧いただけますと幸いです。

■ニイロク■


旧帝鉄クハ26特急形電車試験編成先頭車両クハ26 000の専用レイルロオド。
ハイスペックだが過去の事故により表情を動かせなくなっている。
整理整頓に関してはかなり神経質。

■赤井清春■
ニイロクのマスター。
元試験運転士であり極めて優秀なのだが、
抜けているところも少なくはない。


■「整頓好きのニイロク」■

(あらすじ)
トイレから出てきた清春。
その足元を見て、ニイロクは静かにブチ切れます。

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「……清春。スリッパ」

「ああ、すみませんニイロク。いま考え事をしていて」

「スリッパ。トイレの。それで出てくるのは大変に不衛生」

「えっ!?」

ああ――これはうっかりしていました。
考え事に集中しすぎて、ついつい足元がおろそかに。

「!!? いま抜いだら素足に雑菌がつきかねない」

「っと――それではどうすれば」

「清春はスリッパを履いたままトイレに戻る。
自分が清春に移動した場所の全てに雑巾がけをする。
それが完了したら、清春はスリッパを脱いでトイレから出る」

「なるほど、理にかなっています――が、しかし」

「しかしもかかしも無い。速やかにトイレに戻って」

「いえ、私はすぐに仕事部屋に入りたいのです」

「!!?」

「考え事の整理がつきそうに思いまして、
すぐにでもメモをとらなければ、アイディアのかけらがどこかに霧散しかねない」

ああ――
これは、話の運び方を間違えましたか。

ニイロクの目が、どんどん座り始めてきてしまっています。

しかし私も――ここで引くわけにもいきません。

「素足になって、元の箇所を移動するから不衛生なわけです。
ですので、スリッパを脱ぐと同時に、未踏の床へと大きく一歩踏み出せば」

「残った不潔なスリッパを、自分にそのまま押し付けるつもり?」

「っ」

ニイロクをこう――人間と変わらぬ自我を持つようにと。
そして願わくば感情の成長に伴って表情を取り戻せるように――と、教育したのは私です。

いままでの積み重ねをここで無視して
「レイルロオドなんだからそのくらい」と口にしてしまうことは、
私とニイロクの信頼関係を崩壊させかねない行為であるとは理解できます。

(しかし……)

この逡巡の間にも、アイディアのかけらはどんどん揺らいでしまっています。

ひとまずニイロクを無視してでも――

「はい」

「え? ――ああ!」

――さすが、私のニイロクです。

たった一つのアイテムで、彼女自身の要求と私の切実な要求とを、同時に満たしてくれました。

「でしたら、私は」

「戻って、すぐに、トイレに」

「ええ」

今ならトイレに戻っても、アイディアを流すことなく、しっかり書きとめられるはずです。

トイレには、なにせいくらでも紙があり。

そうしてわたしの右手には、ニイロクが渡してくれた筆ペンがあるのですから。

;おしまい

///

いかがでしょうか?

ニイロク&赤井宮司もすでに登場済みのWEBTOON作品『レヱル・ロマネスク0』。

無償でご確認いただける0~7話ののネームはこちらとなります。

よろしければどうぞご笑覧ください。

(それ以降のまとめはメンバーシップ特典です)

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【メンバーシップ限定記事のご案内】

『レヱル・ロマネスクnote』メンバーシップ『御一夜鉄道サポーターズクラブ』

にご参加いただきますと、レイルロオドたちにかかわる詳細な内部設定資料や掲示板機能などをお楽しみいただくことができます。

『レヱル・ロマネスクゼロ』の字コンテ掲載時には、その字コンテがネーム化されたもの、および推敲過程でボツになった未公開ネーム画像などがあるときには、そうしたものも公開していきたく思っております。

どうぞご参加ご検討いただけますと幸いです。

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