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プロゲーマーを目指す何者でもない人たちへ

(総文字数:約5000文字、記事を読み終えるのに必要な時間:約12分)

プロチームを目指すアマチュアゲーミングチームが、様々なゲームシーンで見られるようになった。

Rainbow Six Siege、League of Legends、Overwatch、Rocket League、Counter-Strike: Global Offensive、Hearth Stone……

タイトルを挙げればきりがない。

数年前ではあり得なかった光景で、e-sportsが盛り上がっていて非常に良いなー、今後が楽しみだなーと思ってる。

その一方で、乱立されるアマチュアプロゲーミングチームと、それに参加をする(一部の)人たちの考えの甘さが気になるようになっている。

以上の文章と以下の文章は、プロゲーマーでも、プロゲーミングチームのオーナーでもない「何者でもない人」が、周りの人たちの話を聞きながら考えた文章です。

なお、執筆の際には以下の方々にご協力を頂きましたが、本記事は特定のチームの意見を代弁するものではありません。

ゲーミングチーム「Unlimited e-Sports」のオーナー add0neさん
ゲーミングチーム「思考行結」のオーナー 猿魔ashさん

ご協力いただきました方々には、この場にてお礼申し上げます。
ありがとうございました。

プロゲーミングチームの定義とは

プロゲーミングチームの定義とはなんだろうか。

大きな大会で優勝したら?
「プロゲーミングチーム」と名乗ってるチームに所属したら?
オーナーがついたら?
プロゲーマーと名乗ったら?

プロゲーミングチームで調べる限り、明確な定義は定まっていない。
※日本eスポーツ連合の「プロライセンス」に関してはここでは触れない。

個人的には、プロゲーミングチームの定義としては「スポンサーがついているかどうか」という点だと思う。

ゲーミングチームにスポンサーがつくのは、企業がそのチームに投資することにメリット(価値)があると認めたことに他ならない。

ここで言うメリットは、端的に言うと「金」になるだろう。
※純粋にそのチームを応援したくて、スポンサーに付く人も中にはいます。

ゲーミングチームに投資をすることで、自社製品(サービス)の宣伝につながり、自社の売り上げにつながる。

また、チームウェアなどに自社のロゴを掲載し、彼らが大きな大会に出れば多くの人がそのロゴを見ることになり、それも宣伝になる。

企業には「広告費」や「宣伝費」と呼ばれる予算が存在しており、自分達にメリットが無いチームには投資をしないし、途中でメリットが無くなれば投資はやめる。

企業はビジネスライクなので「好きだから応援する」ということはあり得ない...とは断言しないが、数は少ないだろう。

繰り返すが、ゲーミングチームに企業スポンサーがつくのは、企業にとって利益になるからにすぎない。

アマチュアゲーミングチームの定義とは

一方、アマチュアゲーミングチームの定義とはなんだろうか。

プロゲーミングチームの定義がスポンサーがついていることだとすれば、アマチュアゲーミングチームの定義はスポンサーがついてないチームだと言える。

では、何故スポンサーがつかないのか?

答えは簡単で、企業がそのチームに対して投資をするメリットを感じてないからにすぎない。

つまり、企業からすると、アマチュアゲーミングチームに所属してる人は「何者でもない人」になる。

もしかしたら、あなたはそのゲームにおいてそこそこ結果を残しており、顔が知られてるのかも知れない。

オフラインイベントに足を運べば「●●さんですか!?」と声を掛けられるかもしれない。

それでも、「アマチュアゲーミングチーム」に属してる限り、企業からするとあなたは「なんかゲームがうまい”らしい”人」に過ぎない。

そしてアマチュアゲーミングチームは、なんかゲームがうまいらしい人たちの集団に過ぎない。

その「なんかゲームがうまいらしい人たちの集団」から、「企業が投資をするに値すると判断した集団」になるには、どのような壁があるのだろうか。

プロゲーミングチームになれないのはオーナーのせい?

アマチュアゲーミングチームの中には、クランやギルドなどと異なり、オーナー(代表者)がチーム名とロゴマークを掲げて「プロゲーミングチームを目指してます!」と宣言してるところも多くある。

最近は、高校生や大学生などでも、そう言ったチームに属してる人も多くいると思う。

だけども、Twitterとかを見ていると、プロゲーミングチームを目指してるとは思えない、つまり「本当に企業から支援(スポンサー)を受ける気があるのか?」と聞きたくなるような発言や行動が見られるようになった。

選手のアビューズ行為、チームの内部情報の流出、八百長、差別発言や他選手に対する侮辱などによる炎上。

また、選手に対して「不誠実」な対応を行い、内部告発によって炎上をするオーナーも存在している。

色々とリツイートなどで回ってくることも多いため、一度は見たことある人も多くいると思う。

また、ちょっとした不満があったり、オーナーから叱られた(指摘された)だけですぐにチームを抜け、他のチームを探す人も一定数存在するするらしい。 

ゲーミングチームが乱立してることもあり、選ばなければ、ある程度はどこかに入りやすい環境が今は整っている。

2018年4月現在では、約40チーム※のゲーミングチームにスポンサーがついているらしい。

※参考
【完全版】日本の「プロゲーミングチーム(eスポーツチーム)」を一挙紹介、プロゲーマーが所属するチーム一覧 | PUREG

では、スポンサーがつくゲーミングチームと、つかないゲーミングチームの違いは何だろうか?

実力・運・縁・カリスマ性・オーナの営業力...

様々な要因が存在しているのは確かだと思う。

だけども、一つだけ考えてほしい。

今、アマチュアゲーミングチームに所属しているあなたたちは何者でもない。

プロゲーマーと今、名乗れていない以上、あなたはゲーム業界を知らない第三者からすれば「ゲームが好きで他の人より少しゲームがうまいらしい人」に過ぎない。

そんな中で、アマチュアゲーミングチームがプロゲーミングチームになるには、オーナー必死になってスポンサーを見つければ良いのだろうか?

オーナーが選手たちの練習スケジュールから体調管理、メンタル管理をすれば良いのだろうか?

アマチュアゲーミングチームに属してる以上、あなたたちはまだ何者でもない。

それは企業目線に限らず、アマチュアゲーミングチームのオーナーからしても同じ。

当然、自分のチームの一員だから心配はするしサポートもするだろう。

だけど、アマチュアゲーミングチームの主人公はオーナーではなく、所属する選手一人一人。

選手が先陣を切って、前に前に進むからこそ、オーナーは君たちのサポートが行えるし、選手たちが頑張るからこそ、オーナーも「スポンサーを探そう」「大会情報を集めよう」「スクリム(練習試合)を組む相手を探そう」となるのだ。

オーナーが頑張るから選手たちが頑張るのではなく、選手たちが頑張るからこそ、オーナーも頑張れるのだ。

そこを理解しておらず、ゲーミングチームには入れば、何をしなくとも練習スケジュールが組まれ、なんとなく毎日練習していれば上達し、うまくいけばスポンサーがつくなんて甘い考えを持ってる人は今すぐその考えを捨てた方が良い。

君たちは何者でもない。
逆に言えば、君たちは何者にでもなれる。

世界に羽ばたくプロゲーマーを目指すのも、青春の思い出としてアマチュアゲーミングチームに属するのも、ストリーマー(配信者)として所属するのも自由だ。

自分の目標にチームが合ってないな、と思ったら移籍するのもありだろう。 

ただし、「本気でプロゲーミングチームを目指してる」アマチュアゲーミングチームに、生半可な気持ちで応募をするのはやめた方が良いと思う。 

プロゲーミングチームになり、スポンサーがつく、と言うことは金が動くということ。

金が動くということは、そこに責任が発生するということ。

その全責任を持ってるのは選手ではなく、チームを運営するオーナー。

何かあれば責任を取らせられるのは選手ではない、オーナーになる。

ゲーミングチームのオーナーは、選手たちがゲームに専念し、より強く、そして活躍できるように守ってくれている。

その期待を裏切るような発言・行為はやってはならない。

たとえそれが軽い気持ちであってもだ。

ルールを整備しないゲーミングチームのオーナーの責任

ここまで一方的に「考えの甘い選手が悪い」といったようなニュアンスを感じた人もいると思うが、ゲーミングチームを運営するオーナーに対しても責任がないとは言い切れない。

そもそも、Twitter等で炎上するのを防ぐのは非常に簡単で、チーム内で「これをやってはダメです」というルールを定めて、破った場合の罰則を決めればいいだけのこと。

「チーム情報をSNSでつぶやいてはダメです」
「八百長、チーミングに加担してはダメです」
「他のチームの選手を侮辱してはいけません」

こういったルールを「明確に」記載し、「選手たちに徹底して伝えている」ゲーミングチームはどれくらいあるのだろうか。

「え?そんなことまで言わないとダメ?」

と思うオーナーも居るかもしれないが、そんなことさえ伝えられてないから数々の炎上が起きている現実から目を離してはならない。

ゲーミングチームを運営する人の多くは、社会人経験を積んでいる人の方が多いと思う。

彼らは会社の内部情報、取引先情報をTwitterに流したらどうなるのか、下手すれば裁判・賠償沙汰になることを理解している。

また、ネットの発展と共に人生を過ごしている人も年齢的に多くいるため、「ネットリテラシーとは」といった授業を受けたのを覚えている人もいると思う。

一方、今の学生たちは「ネットが発展し終えた」時代を生きている。

今の社会人たちには「本名で自己紹介サイト(通称:プロフ)に痛いポエムを書いた」といった、今思えば枕に顔を突っ込んで悲鳴を上げたくなるような黒歴史を持っている人もいるのではないだろうか。

私たちはそれらの経験を得て、ネットで言って良いこと・悪いことを「多少やらかしても日本全国に広がりはしない場」で学習したが、今の若い人(主に学生)はそれを学べる場が少ない。

昔はネットが発展していなかったため、他人を侮辱しても、チートをしても、ズルをしても、大っぴらに大々的に叫ばなければ、それが多くの人に広がることは少なかった。

しかし、今はすでにネットが発展しており、差別発言を行えば3秒後にはもうリツイートされて日本全国に広がることになる。

そのため、ゲーミングチームを運営するのであれば、しっかりとルールを定める必要があり、そのルールの下で選手たちを守ることが大切になるのではないだろうか。

最後に

日本ではまだまだe-sportsが発展してないですが、それでも数年前に比べたら急速に成長を遂げて、認知度も高まってきています。

「やっぱりゲームをする奴はダメだ」と言われるのも、「日本のプロゲーマーってすごいじゃん」って言われるのも、今後の各チーム・選手・コミュニティに属する人たちの立ち振る舞いが大切になるような気がしています。

と、偉そうなことをつらつらと書いてますが、そんな私も何者でもない一人です。

それでも、いつか何者かになれるように、選手ではなく、プロ/アマチュアゲーミングチームを支援する立場から、様々な選手たちの活躍を応援できるように様々なコミュニティで頑張りますので、よろしくお願いいたします。

執筆:Rainbee
協力:add0ne(Unlimited e-Sports)
   猿魔ash(思考行結)

なお、繰り返しになりますが、本記事は特定のチームの意見を代弁するものではありません。

本記事に関して特定のチームに問い合わせを行っても対応は行えませんので、何かあれば私のTwitterにお願いいたします。


頂いたサポートは血となり肉となり日本のeスポーツ業界へ落ちていきます。GG.