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20 家に置いてきた猫の話

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マガジン「闘わないで楽しい入院生活」
原因不明の病気で腎臓を患い突然2ヶ月の入院生活を余儀なくされたアレクサンダーテクニーク教師の楽しい入院日記です。しょっぱなから闘いを放棄し、病院で三食を美味しくいただきながら人生を振り返ったり、病院の風景を観察したりしながら自分を癒す過程を綴る。2017年10月〜12月までの日記です。

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2017/10/20 @病棟

病院では毎朝6時起床、7時に朝食。そして8時にシャワーに入っている。シャワーは予約制。紙に書いたもんがち。今朝はなぜかシャワーが大人気で、いつも余裕なのにきっかり30分でシャンプーしなければならなかった。がんばったんで疲れた!猫のこと書いたら休むー!

わたしと猫の気持ち


今、猫だけが足りない。
といったら、「あなた入院中!治療とか、真面目に考えて!」って誰かに言われそうだが、主観的にはそうだ。私は病気のわりに幸せで満ち足りているけど、猫だけが足りない。

夫が猫の写真をLINEで送ってくれる。私の留守中に、猫好きの友達がうちの猫たちを撫でに訪ねて来てくれて、写真や動画を送ってくれる。これまでは、それを見ながら「いるいる😀」「はいはい😁」って、ほほえましく思っていた。うちの猫は兄妹猫で、捨て猫保護活動をしている方から生後2ヶ月頃の子猫を譲り受けた。もらった当時から二匹でずっと遊んでいて、人が留守でも大丈夫だった。たちまちのうちに小さな二つの生命が家の主役となり、まるで人間の方が居候で、家主である二匹の猫のお世話をさせてもらっているかのようになった。体が大きく成長した今もそれは同じで、居候の私だけが家主を置いて留守にしているわけだ。

猫側の気持ち

ふと、2,3日前に気づいたのは、私は「自分が猫に会えないこと」ばかりを考えていて「猫のほうが私に会いたいんじゃないか?」ってことは想像した事がないってことだった。考えたら、きっと向こうも私に会いたいんじゃないかと気づいた。
病気が発覚した当時は一大事であった「初入院」が、何度も延期になったせいで、この世の別れのごとく「お留守番よろしくね😢」って涙ながらにお別れするシーンを何度も繰り返しすぎて(何度も出戻りした件はマガジンの初めの記事に書いた)、実際に出発するときには猫の方も「もういいからはやく行ったら?」て感じで、しれーっとしていた。

でも、10日も経てば流石にそろそろ、私がいないってことに気づいているんじゃないかな、と想像するのである。いや、もしかして、もう私の存在を忘れているってこともあり得る。動物はとても賢くて「今現在」に対して驚くほど真摯に生きていると思うから。特に猫はそう。餌をねだったり、遊んで欲しい時にはしたたかに試行錯誤するけど、いざ、もらえないとわかれば、さっと気持ちを切り替えてあきらめる。執念深いところもあるけれど、意外とあきらめるときは潔い。

私がいないことを受け入れて「あー、そっか。いないのか。」って思っていてくれたほうが、私としては気が楽だな。。。って思う。

だって、二匹は私のことが大好きだったんだし、あんなに健気なかわいらしい生き物に、私のせいでさみしい思いをさせたくないもの。。。

ミロン君のこと

うちの猫たちを紹介する。二匹ともお客さんが大好きで、友達や生徒が来たら絶対に顔を出して「撫で」を要求する。フレンドリーだと定評がある。一匹はミロン(オス)。あっけらかんとしてのそのそしている。甘え上手の男の子だ。ミロンはきっと友達が次々訪ねて来てくれるので、
「あー!今日も女の人がきた!わーい!うれしーなー!撫でて撫でて〜!
 遊んで遊んで〜!わーい!女の人がいっぱい❤️!
 もっと遊ぶ?君も遊ぶ?君も僕と遊ぶ?
 じゃあ、おなかなでて?もっとなでて?もっとなでて❣️」
ってな感じで、「お客さんウホウホ!ラッキー♪」と思っていたと思う。週一回は、大好きな私の妹も泊まりに来てくれるし・・・。
「でも、なんかへんだな?」と思っているかもしれない。ボヤッとしたところがあるミロン。だいたい私が家にいる時だって、すごく甘えてきたりするくせに、ふとした瞬間に
「きみ、だれ?」って顔をしてキョトンとすることがあった。
ミロンの世界は時間が時々リセットされているんじゃないかと思う。ミロンは甘えん坊でかわいい奴なのだけれど少し「獣」っぽい感じがしていた。よく私のおなかやわきの下にくっついて、子猫みたいにゴロゴロ言いながらモミモミしていた。

そして賢いキノコが奥の手を

もう一匹、ミロンの妹か姉か、一緒に拾われてきたキノコは、女の子らしくてミロンとは全然違った感じ。
だいたい猫を飼ってる人に聞くと、女の猫はやっぱり男の猫と違うという。キノコは頭が良さそう。ブラックジャックのピノコみたいに「あたち!」って言ってる感じがする。「あたちヤダ!」とはっきり好き嫌いを示す神経質な子。すごくマイペースで、きれい好きで、フッカフカのおでぶちゃんで、食いしん坊。ミロンが眠りこけているのを見計らって私のところへ来て、ホイップクリーム状にトロトロになって甘えてくるけれども、ミロンが起きてこっちに来ると(ミロンはキノコが可愛がられていると必ず間に入って来て「僕も!」とアピールする😁)「イヤ!あたちもういい!」ぷりぷりぷり
っと、お尻をプリプリ振ってご機嫌を損ねてどこかへ消えてしまう。仲よくする時もあるけれど、気に食わない時は気が強く我慢しない。
キノコはそんな風にマイペース。だけれど、人間を動かすことに長けていて感心する。言葉も話せないのに、キャットフードを人の手に乗せてそこから食べたいとか、布団には抱っこして入れてほしいとか要求する。今となってはどうやって意思を通じさせたのか謎だが、いろいろ要求されて面倒だけれど、あまりにかわいいのでつい言うことをきいてしまう。

キノコは神経質で私と似たところがある

私はキノコの気持ちは半分くらいよくわかる。私もそれくらい神経質なのを押し殺して生きてきたから、キノコの性格には自分と似たものを感じる。だから、何があっても妥協しないキノコの素直さに感心する。

キノコがあったかーい体を丸めて私の股の間に挟まってすやすやと眠っている時に、(あ、もしかしてキノコは私が産んだ子なんでは!?)なんて想像したりするくらい、私と心が通じてる、と、私は思っていた。

写真からわかったこと

ミロンはフォトジェニックで、いい写真がたくさんあるのだけれど、キノコはなかなか写真を撮らせてくれない猫だ。カメラがわかるのか、すぐそっぽを向いたり素早く動いてしまって、撮るのがほんとうに難しい。ところが、夫が最近LINEしてくれた写真を見ると、キノコはこちらをカメラ目線でじっと見ていた。それで、私は

(あ、キノコはカメラを通じて私のことを見ている)って感じた。

キノコは頭のいい猫だから、訳は分からずとも私が遠くに行ったことがわかっているのかもしれない。。。
その写真を見つめながら私は、夫が私に見せようとしてカメラを向けた瞬間、キノコはきっとカメラの向こうの「私に向かって」視線をくれたんだと察して、心臓をずぎゅーん!と射抜かれ、涙がとめどなく流れてしまったた。(書きながらまた泣いてる!)

キノコの心は澄んでいるから、キノコの気持ちは直接私の心に伝わってきたんだ。そうなんだと感じてしまった。それで、大きな喜びというか、大きな切なさというか、胸がいっぱいになって、私は途方に暮れて、ただ暖かい涙が流れるままにしていた。アイってすごいなって思いながら。。。。

家にいた時、毎日、猫を撫でながら「きのちゃん、ミロンくん、いいこだね。大好きだよ。うちに来てくれてありがとう。今日も会えてうれしいね。ずっと一緒だよ!」って言っていた。
病院でも、エアーなでなでしながら、もう一度唱えよう。お念仏のように。。。。

すごく泣いちゃったので、次は面白い話が続く。

キノコ201710


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