インセイン「或る探偵の死」

マルチジャンルホラーRPG・インセインのフリーシナリオです。
探偵になって犯人と一騎打ちができる楽しいシナリオです。
これと言って関係ありませんが、好きな推理作家は麻耶雄嵩です。

2019.7.23:公開

「或る探偵の死」
シナリオタイプ:特殊型
ワールドセッティング:自由選択
PL人数:1人
リミット:4サイクル
使用ルールブック:『インセイン』『インセイン2 デッドループ』
プレイ時間:1~2時間(ボイスチャットあり)、2~3時間(テキストのみ)程度

 やあ、ようこそ、名探偵。きみとこうして差し向かいで話ができて嬉しいよ。
 こう見えても私はきみの能力に敬意を払っている、素晴らしいと思っているんだ。きみは無能な警察よりよっぽど神々しく、輝かしい。ここまで私を追い詰めたんだから。
 でも、それも今日でお終い。

 なぜって、きみは今日ここで死ぬんだからね。

●ハンドアウト
PC1
あなたは探偵だ。
気がついたらこの部屋に閉じ込められ、椅子に座らされていた。
机を挟んだ反対側にはひとりの男――彼は、あなたが追っている連続殺人犯であると名乗った。
あなたの【使命】は、この状況を切り抜けることだ。

※修得不可アビリティ:【嘆願】【早業】
 NPCは便宜上男性としていますが、性別はなんでも構いません。やりやすいように改変してください。






———以下GM情報———








●シナリオ背景
ひとりの探偵がいた。その探偵は同じく探偵であるPCと自身の才能の差に、醜い妄執を育て続ける。やがてその妄執は自らその対象に傷をつけようと動き出すまでに至った。
 NPCはかつてPCと同じく探偵であったが、いまは連続殺人犯である(殺人事件については自由に概要を決定してよい。導入フェイズで語れば雰囲気が出るだろう)。すべてはPCに追い詰められるため、そしてこの状況を作り出すための殺人だった。
 NPCはPCとの勝負の中で死ぬことで、犯人を死なせたという汚名をPCに着せようとしている。それに失敗してPCが死亡したとしても、PCを自身の手で死なせることができれば重畳だ。どちらにせよ、NPCはPCの人生に大きな疵をつけることができる。PCと勝負を始めた時点で、NPCに敗北はない。
 PCがNPCに勝つには、勝負の土俵から降り、別の観点からNPCの上に立つ必要がある。すなわち、彼の用意したハンドアウトに手を付けず、それ以外の行動を取ることが探偵の勝利だ。
 NPCの用意した筋書きに踊らされ、勝負に乗ってしまった時点で「名探偵」としては決定的な敗北だ。エンディングではそれを忘れずに描写してほしい。

 「或る探偵の死」とは、PCの死、あるいはNPCの死、そして探偵であることをやめ連続殺人犯になったNPCのことを指している。

●狂気カード
 4枚(「闇からの祝福」は入れないこと)

●導入フェイズ
 PC1は薄暗く、狭い部屋で目を覚ます。自分は椅子に座らされており、左手首と右足首をそれぞれ手錠で椅子に繋がれている。
 《緊縛》で恐怖判定を行う。
 目の前には机、その向こうにはNPCが座っている。
 NPCは自身がいまPCが追っている連続殺人事件の犯人であると名乗り、ゲームをしようと持ちかける。できる限りゲームに乗りたくなるように、PC/PLをそれらしい言動で煽ること。凶悪殺人犯になったつもりで大仰に。
 PCがなんらかの反応を示し、RPが一段落したら導入フェイズは終了となる。
 ハンドアウト「NPC」「リボルバー」「杯」「縄」を開示する。
 その際、NPCから「自分が提案するのはこの三つだ」という趣旨のことを発言させること。NPCがするのは提案である。強制ではない。

●メインフェイズ
 NPCは「勝負」「ゲーム」に対して「生死」という表現は使ってよいが、「勝敗」という表現は使わない。「生死」こそPCの手に委ねているが「勝敗」をPCの手に委ねる気はさらさらないからだ。
 「リボルバー」「杯」「縄」の調査判定に成功したとき、【秘密】の公開前にそれぞれのゲームの方法についてNPCの口から説明させること。

・ゾーキング
 NPCの目を盗んで部屋を見回すと、視界の端にきらめく銀色が見える。《物陰》での補助判定に成功すれば、「プライズ:ナイフ」を獲得できる。
 この判定は成功するまでは1シーンに1回、何度でも行える。

・マスターシーン
「時計の針」
発生条件:2サイクル目の終了までにNPCに感情判定を行う、戦闘を仕掛ける行動を取っていない
タイミング:2サイクル目が終了する
 NPCは腕時計の盤面に目を落とし、「もうじき時間だ、きみとゲームをするのが本当に楽しみだ」「愛しているよ、名探偵! 犯罪者と名探偵は表裏一体、同じコインの表と裏なのだからね」と暗鬱な悦びに満ちた笑みを浮かべる。
 《時間》で恐怖判定を行う。

「焦燥」
発生条件:3サイクル目の終了まで回復判定を行い続ける
タイミング:3サイクル目が終了する
 泰然とし続けるPCにNPCは焦りを露わにし、激昂して机の上のものを払い除けて詰め寄る。
 《破壊》で恐怖判定を行う。
 だが、怒りはやがて力ないものになり、NPCは「こうなってもなお自分を見てはくれないのか」顔を覆って座り込む。
 「NPC」への調査判定が可能になる。

「或る探偵の死」
発生条件;NPCの【秘密】を獲得する
タイミング:4サイクル目が終了する
 NPCは自身の心情を吐露し、PCが自身の用意したゲームに乗らなかったことを嘆いたのち、以下のような内容のことを話す。
 「だが、ほんの少しだけ嬉しかった」「きみが僕をこんなふうに見てくれて」「僕がほんとうに望んでいたのは、もっと違ったことだったのかもしれない……すべてはもう遅いけれど」「僕は、探偵としては死んだのだから」
 NPCはPCの拘束を解く。PCはクライマックスフェイズに「戦闘を行う」ことを選択できるようになる。

●クライマックスフェイズ
▼PCが「ロシアンルーレット」を選択した
 交互に1d6→1d5→1d4→1d3→1d2と振っていき、先に1を出したほうが死亡する。
 先攻と後攻はPCに選ばせてよい。

▼PCが「モンティ・ホール」を選択した
 シークレットで1d3を振り、出た目を記録しておく。これが毒杯の番号となる。
 PCに番号を選ばせ、残ったものから毒杯でないものを取り除く。そののち、PCはふたつの杯からどちらにするか選び直してよい。
 最後に、PCとNPCが同時に杯の中の液体を飲み干す。毒杯を呷ったほうが死亡する。

▼PCが「気狂い果実」を選択した
 シークレットで1d2を振り、出た目を記録しておく。これが首吊り縄の番号となる。
 PCに番号を選ばせ、もうひとつをNPCが選ぶ。
 同時に首を吊り、首吊り縄を選んだほうが死亡する。

▼マスターシーン「或る探偵の死」が発生済み
 NPCが銃を取り出し、戦闘となる。NPCは6にプロットする。

●結末
▼PCがゲームで死亡した
 PCはずるりと椅子に崩れ落ちる。命の灯火が失せる刹那、NPCのどこかさみしげな笑みを視界の端にとらえながら。

▼NPCがゲームで死亡した
 眼前には物言わぬ死体がある。その懐から手錠の鍵が転がり落ちた。
 PCはもとの生活に戻るだろう――だが、連続殺人犯を捕らえる機会をむざむざと逃し、死なせてしまったという事実は、PCの経歴に赤黒い小さな染みを残し続けるに違いない。

▼PCがクライマックス戦闘で勝利した
 NPCは敗北を認め、処遇をPCに委ねる。希望通りにエンディングを演出すること。

▼NPCがクライマックス戦闘で勝利した
 NPCはPCの命を奪わず、自殺する。

▼NPCをクライマックス戦闘で殺害した
 探偵としてあるまじきことを行ったPCは永遠に表舞台から姿を消すだろう。それがNPCの望みであったかどうかはわからないまま。

●ハンドアウト
PC1
あなたは探偵だ。
気がついたらこの部屋に閉じ込められ、椅子に座らされていた。
机を挟んだ反対側にはひとりの男――彼は、あなたが追っている連続殺人犯であると名乗った。
あなたの【使命】は、この状況を切り抜けることだ。
【秘密】
ショック:なし
あなたは目の前の男の顔にどこか見覚えがある……ような気がする。
どこで見たのかは定かではないし、そもそも記憶違いであるかもしれない。
だが、探偵としてのあなたの勘がささやくのだ――この状況、なにか裏がある。

「NPC」
あなたは連続殺人犯だ。
探偵であるPC1によって追い詰められたあなたは、先んじてPC1を殺すことにした。
だが、ただ殺すだけでは能がない。
あなたの【使命】は探偵とのゲームに勝つことだ。
このキャラクターの【秘密】への調査判定は、現在は行うことができない。
【秘密】
ショック:PC1
あなたは探偵だった。
だが、PC1と違ってその実力は比ぶるべくもない。
あなたが地面を這い回る間、PC1は輝かしい実績をあげ、称賛の眼差しを受けている。
あなたは彼が妬ましい。彼になりたい。彼を愛している。彼を憎んでいる。彼の視界に入りたい。爪を立ててかきむしりたい。
塵芥のような自分でも、彼の経歴にひとすじの傷くらいつけられるのだと証明したい!
……それによって己の命を失うとしても。
あなたはPC1に対して「妬み」の【感情】を獲得している。
あなたはPC1が自身に対して感情判定を行ったとき、必ずプラスの感情を獲得する。
▼《愛》で恐怖判定。

※【秘密】を獲得する条件
①「記憶」の調査判定に成功し、条件を満たす
②【居所】を獲得して戦闘を仕掛け、戦果で選択する(5にプロットすること)
③3サイクル目まで回復判定を行い続ける

「リボルバー」
黒々とした六連式回転拳銃。
【秘密】
ショック:なし
シリンダーには弾丸が1発だけ込められている。
あなたはクライマックス戦闘として「ロシアンルーレット」を選択できるようになる。

「杯」
赤ワインの注がれた三つの杯。
【秘密】
ショック:なし
この中にはひとつだけ毒杯が紛れている。
あなたはクライマックス戦闘として「モンティ・ホール」を選択できるようになる。

※「本当は怖い現代日本」以外のワールドセッティングの場合は適宜「モンティ・ホール」を「三人の囚人」「ベルトランの箱」などに変更すること。

「縄」
頭上で揺れるふたつの首吊り縄。
【秘密】
ショック:なし
片方の首吊り縄には切れ目が入っており、人間ひとりの体重に耐えられない。
あなたはクライマックス戦闘として「気狂い果実」を選択できるようになる。

「プライズ:ナイフ」
銀色のナイフ。
このプライズの使用を宣言したとき、クライマックス戦闘でのダメージロールに+1d6することができる。
このプライズの効果によって生命力が0になったキャラクターは自動的に死亡する。
このプライズに【秘密】はない。

※以下はPCがNPCに感情判定を行ったシーンの終了時に開示する。
ハンドアウトが開示されたのが第3サイクルだった場合、手番を消費せずに《追跡》で調査判定を行ってもよい。この判定に対して再挑戦は行えない。
「記憶」
やはり、この男をあなたはどこかで見た気がする。
彼と話をして、それは確信と呼べるまでに強固になった。
今なら、彼をどこで見たか思い出せるかもしれない。
【秘密】
ショック:PC1
彼は……あなたの同業者、探偵ではなかっただろうか。
それなのに、なぜ彼はこのようなことをしているのだろうか……?
▽NPCの【秘密】への調査判定が可能になる。

●エネミー
NPC
脅威度:3
属性:生物
生命力:10
好奇心:暴力
特技:《破壊》《恋》《恨み》《追跡》《罠》《死》
アビリティ:【基本攻撃】攻撃/《恨み》
【装甲】装備/p.183
【急所外し】攻撃/《恋》/【火炎瓶】相当(ダメージロールは1D4にすること) デッドループp.161

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