見出し画像

ハトとオノマトペ

先日、友達と展示を見に行って、そのあと食パン屋で焼き立ての食パンを1斤買った。そのお店は30分か1時間ごとにパンを焼いていて、その時の焼き立てはレーズンパン。焼き立ての食パンはとても暖かったので、なるべく熱を逃がすまいと大事にかかえていたら、その部分がすこし凹んでしまった。形が変わってしまったパンを見せて、「しっとり感がちょっとなくなったかも」と伝えると、「ふんわり感がなくなったんじゃない?」と言われた。確かに。パンに含まれていた空気が抜けて、弾力がなくなってしまった状態は、ふんわり感が失われていると表現した方が正しそう。なので「そっか、じゃしっとり感はむしろ上がったね」と返事をした。

パンはスーパーで売ってるやつみたいに切られてないので、ふたりの真ん中に置いて、手でちぎりながら食べた。するとぞろぞろとハトが集まってきた。全部で20羽くらい。ハトにはもったいないレベルの食パンなので、当然あげることもなくパクパク食べていると、1羽が背後からホバリングしながら襲い掛かってきた。僕ら人間は悲鳴をあげて、パンを持って逃げた。5mくらい移動して、同じ公園内の、背後を取られなさそうな場所に腰かけ、食事を再開。しばらくすると、また奴らがぞろぞろと向かってくる。一度あげたらもっと催促されることは分かっているので、知らないふりをして食べ続けた。一度横を見てるときに、友達がパンをハトから隠そうとして、包み紙をふわっとパンにかけたんだけど、それが白いハトが飛んできたのかと思って、ひとりで悲鳴を上げた。

パンを期待していたハトたちは「ワクワク」かな。もしかしたらもらえるかもしれないというわくわく。「ウキウキ」は少し違う。ウキウキはワクワクと違って、うれしい出来事が確定しているときの言葉だから。だからパンをもらえることが確定していれば、その時はウキウキかも。行儀よく列をなすかも。「いそいそ」も少し違う。ほかの人のところにパンをもらいに行ったらいそいそだけど。でも飛んでいくだろうからやっぱりちょっと違うかな。いそいそは、支度をして早歩きで向かうイメージ。

求愛行動を素っ気なくスルーされて、ゆっくり離れていったオスハトは何だったんだろう。「トボトボ」かな。でも、トボトボという言葉が持つ、落ち込んだ雰囲気ではなくて、あーやっぱダメですか、くらいの感じで、割とまっすく前を見ながら歩いてた。じゃあ「てけてけ」がいいかも。気にしてない様子ながらも、「てくてく」ほど無傷ではない感じ。心はすこし傷ついてるけど、それを気づかれないように、無理してしっかり歩こうとしてる。メスから見えないところからはトボトボ歩き出すかも。

一方、メスはぼーーっとしていた。友達は「どうしていいかわからなくなってるんだよ」と言ってたけど、どうなんだろう。確かに少しきょろきょろはしていたけど、僕にはけっこう平然としているように見えた。「のほほん」とか「けろり」といった感じ。いや、もしかしたら内心は「どきどき」していたのかも。いや、というか「もじもじ」していたのか。表情を読み取ることはできないが、「ほくほく」していたのかも。でも本当は「うとうと」していただけかも。

そんなこんなで、パンを完食。最後のほうは少しハトにもあげた。一斉に群がるときの風圧がすごい。

ハトはかわいいけど、襲われると怖い。数が多いと怖い。2,3羽だと「ひょこひょこ」で済むが、20羽もいるとやはり「ぞろぞろ」という感じであり、さらに今日のようにこちらがパンを持っている場合には、「であえであえ」になる。と思う。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?