【感想記録】「ありがとう、俺を信じてくれて」/舞台「ルームメイトと謎解きを」


初日のみ行くつもりだったのに、気が付いたらリピチケを5枚買ってしまった。こわ。
別に推しという推しもいなかったんだけど。とにかく楽しかった。

※公演終了しているため、完全にネタバレを含みます。また、あらすじの説明もないです。観た人にしかわからない、あくまで自分のための感想記録です。


1.公演概要

日程:2023年11月18日〜26日
劇場:サンシャイン劇場
原作: 楠谷 佑 「ルームメイトと謎解きを」(ポプラ社刊)
脚本・作詞・演出: 板垣恭一
音楽: 桑原まこ / 桑原あい

https://musical-roommate.com/cast.html

2.総括

お話の感想


完全に私の中の話の軸がエチカになるので総括と言いつつエチカの話になります。

エチカの「ありがとう、俺を信じてくれて」に全て集約される「男子高校生2人の固い友情の話」だと思った。

「信じ合えるものを信じ合えるうちに。限られた時間の中で」と歌って終わったからなのか、観劇後の感想としては「良い青春を浴びたなあ………」という気持ちになる。

エチカは多分、前の学校で冤罪(恋人に手を出した、カンニングした)をかけられるたびに、論理的な説明(推理)で言い負かしてきたから「人に信用してもらうこと」を諦めてきた人間なんだろうなあ。
信用される必要はない、推理の上で動機(心情)を考えることは無意味、だって理解できない動機で自分に悪意を向けてくるじゃん、そんな考え方。
両親もいないし身近に信じられる人もいないだろうし。

ヒナタという「信じる才能」がカンストしている人に出会えて、事件を通して「信じること」を教えてもらえたこの構図が最高で。
エンディング前のオチが「ありがとう、俺を信じてくれて」になる納得感とこのまとまりの良さ、気持ち良すぎる。

ヒナタは「500円玉のときにエチカが俺のことを信じてくれたから俺はお前を信じる」って言ってたけど、多分当時のエチカは信じるとかより単純にわかったから言ったくらいだったと思う。
ヒナタは「お前が悔しがらないことが悔しい」ってエチカの分まで感情的になってくれる、そんなところから影響を受けたんだなと思う。
逆にヒナタはヒナタでエチカの推理力を借りながら、物語をぐんぐん進めていってくれた。
お互いがお互いに作用していく様子大好き。


このありがとう〜の前の流れも大好きで!
その直前、エチカが「お前が俺に礼を言う必要はない」って言うのが、「やっぱりこいつは客観的視点で見た事実を伝えることのほうが得意で、自分の気持ちは伝えられない子かも…」って思わせてからの、「好きにしろ」「悪かった」やネクタイの「ありがと」とは全く違った、あの時の彼の精一杯のまっすぐな「ありがとう!」が来る あそこで毎回スタオベしたかった。

エチカは最初園部が突き落とされた事件の時に「明確な悪意があるんだろう」ってそこは察せるんだけど、自分の席に牡丹の花が飾られていたときには「悪意を読み取る必要はない」って言う。
自分の話になるとスンッッて感情切り離すように意識してんのかなあ〜……と思って辛かった。

動機が息子へのいじめで、親の愛から起こってしまった今回の殺人事件。エチカはこの動機についてどう感じたのかな……
推理中には「俺にはさっぱりわかりません」と前置きした上で犯人と希の親子関係を指摘した。
何か続編で深堀があればいいな。

ミステリーと曲について


ミステリーをミュージカルにした、ということはあまり深く考えず、高校生達の心情の変化にどっぷり浸かって鑑賞していた。
テンポが早く進められたり、空気感がよく伝わったり、園部の心情がとにかく伝わってきたり、ミュージカルであることでプラスに作用する場面はたくさんあった。

ただ、歌にすることで説明が冗長になったり分かりづらさが出てしまった部分もある気がしていて、やっぱり「歌がある意味」が明確に理解できない場面はどんなミュージカルでも少し違和感を覚えるなと初見のときは思った。

もちろんサイコ〜〜〜のミュージカルだ〜〜〜‼️となる部分のおかげで今となっては頭の中ずっとメイ解きの曲。
歌になることで情感が乗るようになり、人間関係がきらきらする。
平和な日常が愛おしくて、有岡さんの「お前らー!!毎朝遅刻だぞーー!!」の怒号が鳴ってるときにあのBGMはどんなに有岡さんの声が怖くて何言ってるかわかんないほどになっても(笑)ぜったいにニコニコしてしまう。
限りある、愛おしい時間だったなーって思い出せる。

コードとメロディは配信と現場の記憶から耳コピして控えてあるので自分で再現して何度も繰り返したい。

このnoteで語ることでもないけど、ミュージカルってこうした記憶のお土産が残しやすいところが大好き。セリフの一言一句を正確に覚えることはすごく難しいけど、多分何年後かにも「このフレーズなんだっけ?」ぐらいの記憶は残るだろうし、それがフックできっと今回のあすなろ館の日々も思い出せると思う。

役者さんについて

キャストさん達について、また後ほど詳しく書くが、とにかく歌が強くて慣れているキャストさん達の印象を受けた。
げんじぶの中では年上メンバーの武藤潤が1番赤ちゃんで…笑

2.5次元舞台のカンパニーにあるような運動部っぽさは感じないけど、それぞれが自分の仕事としてふざけて当ててくる、ちゃんとウケる、アドリブに毎回わくわくする、安心感のある方々だった。あんまり詳しくないけど。
何度見ても楽しいのは、その瞬間瞬間に価値を作ってくれる演者の皆様の技量だなあ。

言いたいことがまとまらずバラバラしていて申し訳ないが、とにかく目が足りない。
生徒会長初登場のときに、上手ではエチカは朝が弱いから寝ぼけてて会長の空気を察してないし1人で行進から浮いている。下手では財津先生が生徒の「理事長の息子、〜〜彼に見つかった生徒が去年退学になった」あたりであわあわしてる、とか、
推理ターンなんて特に浅香希との関係から各々が思っていることを表現していて……あと30回観たかったなあ。
かといって今見るべき場所がどこか、どこを見せたいのか、はもちろん観やすい。初見も複数回目の観劇も楽しい。

特に園部は1幕序盤から表情で語ってた部分が多くて、初見は完全に園部が犯人だと思ってしまった。私の頭が悪いから、この人何か抱えてる!つまり犯人では!?!?って思ってた。はずした。

総じて、内容としては殺人、いじめなど暗い題材を扱っていたにも関わらず温かい気持ちになれる、いつもより信じたい人を信じようと思える、明るい気持ちで劇場を後にできる、そんな作品でした。

3.出演者

今回目当ての人がいたわけではないので、フラットに観られた分とにかくキャストさんみんなすごい!!って気持ちが強い。

全員分3000字くらい好きなところ書けるけど流石に長いので、長江さん、Wヒナタについて。

長江さん


正直、6割くらい長江さんのソロを目当てに通いました………
別舞台で歌が最強な方なことは知ってた!けども!!
お芝居にそのままメロディが乗ったようで、いい意味で、ここをCDとして売っても意味がないと思える。劇中で歌い始めないと、ここを見ていないと、だめだから劇場に来て!って十分誘い文句として成立する歌だった。

まずソロ入る前の「わかった、話すよ」のテンポが好き。
エチカに詰められて、目を閉じて諦めるまでの過程がわかるところも好き。
先輩と僕は親しかった、の入りが恐る恐る話し始めるようで、ずっと言えなかったんだな、とすぐ園部の心境に寄り添いたくなる。
長江さんって声高いんだな、と思ったのも束の間、「五月頃」で「先輩と」の「と」の1オクターブ下出てくるのは何????ワンマンズドリームのメロディーか?どこまで出るんですか??
九月の〜以降、少し声が大きくなり、「原因はいじめじゃないのかも」でさらに声を張るとき、「多分セリフで言うときも、話しながらだんだんせきこむように加速していって、当時の自分に言い聞かせるように多少の焦りも含めた原因はいじめじゃないのかも、がくるんだろうな」とか容易に想像がつくというか…お芝居として歌い方がとにかく自然。
「少し様子をみることに」の後の、自分の行動の愚かさを俯瞰していて、かつもうすでに何もすることもできない無力さを痛感した笑い声が入って、鳥肌が立った。
浅香先輩の件について、本当に何もできない人じゃなくて、ちゃんと何かしてあげたかった子、それぐらいの関係値があったのが園部なんだ、と感じた。
そして長江さんのサビ、フォルテッシモーーー!!!!がとにかく沁みて忘れられなくなってしまった。マジでどっから出てるんあの声。
生オケなのも相まって、生で浴びた時の、圧が、すごかった。なんで明日も浴びられないの。毎日やってくれ。
「そんなのは所詮言い訳 行動しないことの正当化」
総括でも書いたけど、この舞台のおみやげとしてずっと頭に残るフレーズになった。
この盛り上がりがあるからこその「死んでしまった」の取り返しがつかない感覚が、劇場内の観客全員で共有できる。偉業すぎんか。
終わった後の園部は過去を思い出してか少し気分悪そうにするところまですごく好きだった。

他の面でも園部の魅力はたくさん感じられた。
はじめは文化部のおとなしい気弱な男の子、という感じなのかと思ったけど、意外と同室の棗に対して「足組むな」って注意して直させていたり笑(ちゃんと同室やってんだなって感じ 棗のこと世話してやってそう)

細かいことはチラシの裏にでも書いておきます。また歌聞きたいなあ。

W雛太の違い

Wキャストだった小野塚さんと武藤潤さん、かなり違っていて比較して見ることが本当に楽しかった。
何より雛太だけでなく周りの接し方もだいぶ変わるなと思った。
小野塚ヒナの場合はエチカより年上に見えるが、武藤ヒナのときはエチカが兄に見える。
園部も小野塚ヒナのときは柔らかくてより静かそうに見えて、武藤ヒナの場合は語気が強めというかしっかりしていて、ヒナのぽんこつっぽさが際立つ笑

Wヒナそれぞれの個人の価値観も違うんだろうな、といろんな場面で思ったが、印象的なシーンの差で言うと、
「ありがとう、俺を信じてくれて」→小「ぶるるるるる(震える)」武「当たり前だろおおおおお(泣)」
どっちも本当に大好き!!
悪く言いたい訳ではなく、純粋に小野塚ヒナの反応は平成っぽい。テンポ良くて、関係性が自然で、平和に見下し合って、とにかく笑えて、やっぱり雛太がちょっとエチカよりも精神年齢が上に見える。エチカを可愛がってやっているし、ネクタイ結んであげる関係がしっくりくる笑 多分ずっとぎゃんぎゃん言い合いしているのに隣にいる関係なんだろうなあ。エチカの可愛さや幼さを引き出したのは小野塚ヒナだろうと思う。もちろん小野塚ヒナ本人もバカで思いやりがあってみんなに好かれる理由がよくわかる可愛いキャラ。
逆に武藤ヒナは相手を絶対に馬鹿にしない、貶さない、そういった考えが根底にあるようで令和っぽい。エチカの行動にいちいち振り回されているだろうし、感情の起伏が本当に素直でにこにこする。がんばれーって思わず声かけたくなるし、千秋楽で周りに「ありがとう!ありがとう!」と声かけ回っていたのを見た時は「楽しかったんだね、最後演じきれて良かったね。」って謎の親目線にどうしてもなってしまった。天性の才能でしょ。


鈴木壮麻さん

圧巻としか。
歌も演技ももちろん全部素晴らしい方なのは前提として、特に鳥肌立ったシーンを一つだけ記録。
推理ターンの際に、確か多分残り3人になり、曲が始まりヒナが歌っている際に上手でエチカがすっごい郷田を睨むんです。中央見てたら気づかない程度に。それに気づいた郷田が諦めたように声出して笑ったんです。もうそれ見た瞬間舞台楽し〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!ってサイコ〜の気持ちになった。
メインの話が別で進んでいて、みんなは誰が犯人だ!?ってところに注目している中、ここでのみエチカと郷田は「お前だろ」「わかられているんだな」の話を進めている。何この舞台たのしすぎんか。
目が2つついていてよかった。

そして26日千秋楽の際におっしゃていた言葉があったかかくて……
「才能のある素敵な若者と出会えて嬉しいです。彼らの今後の活躍を強く見守ってあげてください。」
舞台の業界がこれからもこうやって素敵な俳優さんから次の世代へ引き継がれていきますように。
好き!って思った俳優さんでも、もしかしたらどこかの誰かにはものすごくケチをつけられるかもしれない、ってどこか思ってしまう節はあるんだけど、鈴木さんのような俳優さんに認めてもらえることも、「強く見守って」と客に役割を与えてくれるのも、優しくてあったかくて力一杯拍手で応えた。

4.まとめ

2023年多分観劇納め!
私はやっぱり物事の解決よりも誰かの価値観の変化に惹かれるんだろうなと思った。配信12/9まであるのでよかったら。

https://live.nicovideo.jp/watch/lv343345880 (小野塚千秋楽回)
https://live.nicovideo.jp/watch/lv343345879 (武藤回)



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