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弓は調整してもらうべきものと確信

本日(3月11日)に弓職人「大瀬国隆氏(75歳)」レクチュアーが文京楽器にてあるということで行ってきました。早起きは三文の得という諺がありますが、かなり早めにいって大正解。大瀬さんの弓づくりの実演をみることができました。コンクールを目指される音大生の方も見えていたのですが、何やらコンクール用に弓を調整してほしいとのようでした。弓に対して弓が吸い付くようにとか、音を強くしたいとかかなり細かくオーダーを出しており、それを受けて大瀬さんが細かく調整していくのですが、グイグイと理想の弓に近づいているのがよくわかりました。大瀬さんもなんかノリノリで楽しそうに作業されていましたね。最終的にあの最高傑作の三浦弓と同等レベルの弓に変化(覚醒!!)しました。弓の調整でここまで変化するとは驚愕の域でした。

ふと思ったのですが、良い弓を探して数年かけて無駄にお店巡りをするよりも、素材のよい弓を弓職人さんに調整してもらう方が遥かによい結果になるということに気づきました。アルシェの最高級Soloモデルであっても万人向けに作られているので平均値にすぎず、自分の運弓スタイルに合わせたカスタマイズが必須。そのために弓に対してオーダーを出せるレベルになるように自分がなることが大事なんだということですね。

他、大瀬さんと今回初めてお話しすることができたのですが、印象的な言葉を以下に記します。

良い弓の素材(フェルナンブコ)は持ったときの温度でわかる。冷たい素材が最高である。暖かい素材は空気が入っているので密でないということ。

弓は最初8角形にして削っていくが、弓のかかる方向を考えて8角形の一片で圧力がかかる方とその反対側の長さを微妙に変えながら削っていく。それによって強い弓を作ることができる。

フシのある材料の場合、どのようにするのかと質問者への回答。
フシのある場所を考えて弓をつくる。特にペカットのオリジナル弓には結構フシがあるがフシがあることによって強くなっている。フシを削る特殊工具が削りも問題ない。

フェルナンブコの色による違いはとの質問者への回答
特に色にはこだわりがないが、黄色ぽい色はペカット弓に黒いものはトルテ弓に使いたい気がする。フェルナンブコは目が詰まって密度が高いものがよい。

古楽器の弓にも挑戦してみたことがあるが、音が良すぎて使えないという古楽器奏者からの評価を得てがっかり。補説:フェルナンブコでつくったらしい。古楽弓はスネークウッド、アイアンウッドを使うことが多い。フェルナンブコは古楽の世界では新しい素材。

フェルナンブコには毒性がありそのアレルギー反応によって弓職人になれない人もいるが私は大丈夫だったので幸運だった。

弓職人にとっては嫌なお客はどのような人かという質問を受けて
なまじ知識があっていろいろと尋ねてくる人(聴衆笑い)。面倒ですが質問されたら丁寧に教えますよとのこと。

●弓の調整作業

弓を左右にくるくると回しながらアルコールランプであぶり
弓を膝でぐいぐいと曲げ
120万の弓なので見ているとビクビク
反りを見て
全体を見て、さらに炙るを繰り返します。
こちらはおまけ。フェルナンブコの削りかすを水に入れると数分で染料に

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