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アマゾン・プライムに『レニ』が来た

レニ・リーフェンシュタール90歳のときの記録映画。
『レニ』、すばらしかった。

3時間強あるが、だるくなるところがない。

レニが映像について語ると、必ず律儀にその映像そのものが出てくる。
これもレニ自身がきちりと管理して出してくるのだと想像する。

この記録映画だけで一冊の本が書けるくらいさまざまなことを感じた。

ベルリン・オリンピックを描いた『オリンピア 民族の祭典/美の祭典』の話だけしよう。

これはナチスが国威発揚に利用したとよく言われる映画だが、ヒトラーはあまりオリンピックに関心がなかったという。
しかし、レニは国から資金はいくらでも引き出せたので、巨額の予算で作っている。

レニは、この仕事を若者を集めて数ヶ月かけてカメラマンを養成するところから始めた。
30人のカメラマンを撮影に使った。
種目は180ほどもあり、会場も複数あった。
昼間の撮影立ち合いが終わると、この30人と1人5分ずつ翌日の打ち合わせをした。
それだけで2時間半になる計算だ。

カメラマンだけで30人。総スタッフは170人。
それをレニは指揮して自分の芸術を実現した。

穴を掘って低い角度から撮るなど、オリンピック委員会と交渉しながらダイナミックな映像のためにあらゆる工夫をした。
飛び込みの映像など、選手の肉体が純粋に切り取られて美しい。
村野四郎の『体操詩集』、「飛込」という作品を想起した。

いちばん衝撃なのが、撮影したフィルムが400キロメートルだという話。
時速100キロの車で4時間走行した距離のフィルム。
これをレニは1人で編集する。
2年間。
最初の頃は毎日8時間。終わりのほうは14時間編集作業したという。

2年間と一口にいうけど、長い。

その意志と肉体の強靭さには驚くしかない。

(90歳にしてダイビングして海中撮影するくらいだから半端ない超人である)

その妥協なき追求の結果が非常に硬質な映像になっている。

これを超えるオリンピック映画は不可能だろう。

*
……これは語りたいことのごくごく一部だ。
アマゾン・プライムにはあるから見られる人は見たほうがいい。

レニのナチスへの協力については、映画の中で本人が語っている。
インタビューするほうも遠慮なく聞いている。
僕としては、彼女の話には、若干の自己合理化があるかもしれないが、論理的だし一貫していると思う。
そして、したこと以上の罰と苦しみを十分に引き受けたと思う。

その話も書き出すと長いのでこれ以上しない。

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