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将道最速理論~思考・上達について~

壁を越えてさらにその上の領域に向かうためには、正確な理論に裏打ちされた走りが必要だ。速くなるためには知識が必要だと、自分でも気が付き始めているんじゃないのか?

『頭文字D』高橋涼介

はじめに

再考、「読みとは、棋力とはなんなのか」

昨年、将棋ウォーズで昇段しました。
四段=将棋できる人のイメージとともに、「ウォーズ四段」は初段の時分からの大きな目標。自分の上達道程は一区切りと言えるでしょう。
十年近くの停滞を打破したのは練習方法の変化です。(後述しますが、ほぼ通信将棋しかしていません)

もう一つ目標があるとすれば、将棋について自分の考え・体系を何らかの形で完成させること。
本記事は、昇段や通信将棋・七盤などの体験をした私の読みや棋力向上について自説を記していきます。(「お前に教えてやる。これは講習会 セミナーだ」)
まだ書き足りないこともありますが、私には将棋についてこれ以上の価値がある記事を作ることはできないでしょう。

書き始めてからすっかり年を越してしまいましたが、誰かの上達(辰?)の助けになれば幸甚。

今日のまとめ(先出し)

今回用いる3つの図を先に掲示しておきます。解説は後ほど。

この記事のポイントのまとめです。
「棋力のカギである読み(探索)にメスを入れるべき」
「勉強法が乱立しており、それぞれ成功した人がいる。つまり、大事なのは勉強法ではなく、知識のインストール(明晰知化)という過程」
「通信将棋はいいぞ!」

思考の「棋」モデル①
読みと知識の2軸で考えると分かりよい気がします。
思考の「棋」モデル②
「いかに暗黙知を明晰知化できるか」が大事
今回のまとめです。勉強法は独断と偏見

思考の「棋」モデル

Ⅰ「読み」=探索+評価

今回も将棋ソフトが探索部と評価関数に分かれていることに倣い、
人間の読みを論理的思考である”探索”、感覚的思考である”評価”に分けて取り扱うこととします。(探索-評価モデル)
探索は性質上、他のボードゲームでも共通する部分が多いです。逆に評価は将棋独自の調整機能と言えるでしょう。

「将棋が強い人は読みが深い(≒探索部が優秀)」
「将棋が強い人は他競技でも強い(≒探索部の共通)」
蓋然性が高いことからもわかる通り、将棋そのものの強さ・棋力において”探索”の重要性は高いと考えられます。

五反田えぬ様などがご指摘している「評価(枝狩り)」の重要性について。後述しておりますが、本記事は「評価の精度を上げるためにも強い探索が必要」という立場を取っております)

Ⅱ「知識」=明晰知+暗黙知

次に、人間側の理解を分類すると、
いわゆる「知識」とされる(完全)明晰知、そして「感覚」とされる暗黙知。そしてどちらとも言えない不定形の知識(不完全明晰知)の3区分になります。
今回は、この完全明晰知不完全明晰知暗黙知の三段階に3区分に「幹」「枝」「葉」の役割を与えた木(棋)のモデルを使って考えていきましょう。(明晰知-暗黙知モデル)

幹(完全明晰知):今回の「明晰知」は言語・論理化された知識や、脳内盤の確かな思考など、完全に自分の中に納まった知識や理解を指します。
(今回は高い解像度で理解することを指すため、アプローチは言語化以外でもよい)
見落としもありますが、基本的に最も精度が高いです。

例)論理的思考の基となる論理(探索の章で後述します)、ルールおよびそれに類するもの(駒の動き、詰み)、確実な思考(駒の価値、戦法・囲いなどの知識・手筋・詰みパターンなど)

枝(不完全明晰知):明晰知になりかけの知識。言語化、構造化できる知識を基にした感覚・評価。
パターン化されていたり、優先度や例外もあるものの正しいことが多い。

例)自分の中で完全に論理化されていない言語、方針や形。理屈が立ちそうな感覚

既に理解している完全明晰知、自分の手の及ばない暗黙知より”不完全明晰知をいかに明晰知化していくか”が大事だと思っています。

感覚が鋭い将棋指しは初心者。知識を極めて中級。上級者ともなれば、明晰知でも暗黙知でもない、第3のポイントで差をつける。そのポイントを極めることこそが、オレの最速理論のメインテーマだ

『頭文字D』高橋涼介さんの名言を拝借

葉(暗黙知):説明がつかないけどこう指したいといった感覚的な思考。正しいかの保証はないが、最も複雑な処理を行うことが可能。「飛躍」

例)「なんとなくここは▲28角打」「たぶん一手すきで勝ち」といった感覚的な手、速度計算など

Ⅲ この木なんの木、思考の「棋」モデル~One Two Tree~

下図が、将道最速理論において最も重要である「探索-評価モデル」と「明晰知-暗黙知モデル」を複合した「思考の棋(木)」です。

「探索-評価モデル」と「明晰知-暗黙知モデル」を複合した「思考の棋」

「思考の棋」モデルを用いて、将棋の上達を木で考えると分かりやすいでしょう。
木を大きくするためには、まず幹(完全明晰知)を大きく太くするところから。太い幹を中心に枝、葉を茂らせていきます。=探索主眼上達アプローチ

完全明晰知を直接増やすことはもちろん、不完全明晰知や暗黙知を完全明晰知化することは実力向上に欠かせません。

(もちろん、今回は取り上げませんが葉を基準に光合成で木を大きくしようというアプローチもあると思います=評価主眼上達アプローチ)

明晰知化の例として葛山わさびさんの「将棋Vtuberと学ぶ『現代相掛かり概論』」が挙げられるでしょう。
定跡の一手一手を自分の中で咀嚼・体系化していくことはあまりに素晴らしい明晰知化です。


「思考の棋」のポイントは、探索・評価の両面において
「いかに暗黙知を明晰知化できるか」にある

実力向上:探索と飛躍

基本方針=Learning(学習)

前章の結論である「いかに暗黙知を明晰知化できるか」を踏まえて、
ボードゲームの実力向上の基本的な方向性を一言で表すと、AIの教師データを用いた学習と同じく

良質・適切なデータを自分に”インストール”する」
の一言に尽きるでしょう。(探索・評価共通で)

これには①良質さ(精度)②適切さ(出現率など)③インストール(明晰知化)の3要素があります。
①の精度も大事ですが、とりわけ③インストールが重要です。

【基本は「深く読む」こと】
実際に我々が勉強のために扱うKIF(棋譜・局面)データは人間脳内のデータ形式と異なるため、論理や言語、感覚といった別の形式に置き換えての学習となります。(もちろん、これは言うまでもないことですが、言葉や文章など近いデータ形式、より強い人から教わる・考え方の動画や本を見ることはとても有効だと思います)
つまり、知識のインストールに際して、知識や感覚を吸収するだけでなく、時間をかけて奥にある考え方を自分の中に組み込むことが効率的な学習の基本となるわけです。(Not ダウンロードして満足!)
⇒ 考え方を理解する=深い読み(探索)を入れよう!

1万1千回転まできっちり回せ!

『頭文字D』藤原文太

【「飛躍」=知識を仕入れるべき箇所】
理論上、深く読むことで得られる理解(良質(精度)・インストール(明晰知化))はどこまででも進みます。
しかし、実際はどこかで止まってしまったり、深く読むことが難しくなるはずです。そこが(思考段階の)飛躍」です。「飛躍」が発生してしまった箇所に対して深く読んで答えを出すのは非効率的なので、おとなしく正解を調べる・知識を仕入れてみましょう。

探索=Rules(論理)

探索は実際の思考であり、論理の積み重ねです。
なので「明晰知」がメインで、自分の論理の中にある不完全明晰知を完全明晰知にする工夫が必要です。
探索力強化は深く読むうちに”どこで引っかかっているか”、漠然とした部分やコツを論理・言語化していく作業となります。場合によっては以下の探索機構に個別のアプローチを行う必要があるかもしれません。

脳内盤の精度:【深度・範囲・速度】
脳内盤で「より深く」「より広い範囲で」「より速く」読めるよう鍛えます。例えば、詰将棋は深度を要求しますが範囲は狭い、など。

手番的問題:逆算思考・詰めろ
手番に関する論理・理解。詰めろや一手すき、王手による防御。
ターン・勝利条件を前提とした考え方は、他のゲームにも通用します。

結びつけ(重みづけ)
形の良し悪し、駒の価値といった評価、を作る働き=枝狩りをする機構(評価パロメータそのものではない)

評価=Knowledge(知識)

評価は感覚であり、脳内に潜む知識の塊です。
したがって「暗黙知」がメイン。自分の論理の外にある暗黙知を不完全・完全明晰知へと引き上げていくことが必要です。
基本的に、探索を利用してパラメーターを改良していくことになり、評価のみを強化することはあまり考えません。
ただし、「飛躍」が発生した部分はすぐに明晰知化出来ないことも多いです。最初は感覚として理解することを繰り返していくのも手かもしれません。

まとめ&練習法について

今回のまとめを以下の図に記しました。

◎・◯・□で勉強法にド独断とド偏見でランクをつけています(□はものによる)
もちろん、表の上部にあるまとめを踏まえることでどれも効果が出ると思います

①思考の「棋」モデル:「いかに暗黙知を明晰知化できるか」が大事
②明晰知化のために:良質・適切なデータを自分に”インストール”する
③学習について:基本は徹底的に深く読む(探索)ことで自分の中で将棋を論理・言語化していく。その過程で現れる難しい部分(飛躍)は知識や感覚を外から仕入れるのが効率的

【勉強法について】
上記①~③を前提とした勉強法であればどれでも問題ないと思います。
(どのような勉強法であっても成果が出る、出ないは①~③の工夫次第)

が、個人的には長い時間をかけて考える「通信将棋」がおススメです。

良質・適切なデータを自分に”インストール”する」ことを考えると、通信将棋で長く深く考えること自体が「より強い自分に直接将棋を教えてもらう」ことに相当するので、精度(参考:思考時間とRの関係)・出現率・身につきやすさ全てにおいて良いと考えています。

ただ見せただけさ、オレが自分で走り込んで作り上げたコースの攻略を。
アイツは自分の走りとどこが違うのか直感的に理解して走ってるんだ。

『頭文字D』高橋涼介

さいごに

将棋で速いやつが一番カッコイイんだ。イケてるぜお前!

ここまで長文をお読みいただきありがとうございます。
読みと棋力向上についての所見でした。
漠然とした部分が多いですが、なんとなく掴んでいただけると……!(通信将棋もぜひ)
将棋道、私もわからないことだらけです。
速く、とにかく速く、目にも止まらぬスピードで走り抜けてください!

あと、頭文字Dの要素があんまりに少ないことが反省点です。(文章がヘタクソってことさ!)今後加筆していければと。

参考にした(?)記事・方々

・かわいいかわいい将棋Vtuberの秋月もみじさん
(ぜひチャンネル登録をお願いします)
彼に通信将棋の考え方を聞かれたのが記事制作の切っ掛けのひとつです。
なんと、1年以上待たせた挙句、本記事でも執筆の過程で内容が逸れに逸れ全く質問に答えておりません……!!!! やる気はあったんですごめんなさい。

・五反田えぬ様
個人的推しVtuber(推しという言葉はあまり好きではありませんが、他に適切な言葉も見つからず便宜上)
棋力向上について「枝狩り大事だよね~」という記事を拝見しました。

・葛山わさび様
理論派居飛車党の人。ときどき風変わりなASMRをしてくださります。
『現代相掛かり概論』、筆者の頭脳スペックではまだ理解できておりません……ガンバリマス。

・ぽるんが様
お将棋めちゃつよの人。将棋の上達法比較について動画が大変参考になりました。
七盤も非常に上手で、私も以前”惜敗”(強調)してしまっております。

・やねうら王様
ソフト将棋が好きなのでわりと拝見させていただいております。
思考時間とRの関係についての記事です。

おまけ

おススメしたので一応の責任は持ちましょう。
通信将棋のリンクを貼っておきます。(lishogiレート戦、一手5日)
(筆者は容赦なく長考するタイプです。じっくり愛を深めませんか……?)

https://lishogi.org/SbMb2DNt

https://lishogi.org/NTY1TxiO

https://lishogi.org/NTY1TxiO


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