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平成を駆け抜けた男 三浦春馬

ミニシアターとはいえ、スクリーンで映画を鑑賞するのは…たぶん娘と観た『ハリーポッター』以来だと思う。ポケモン以来かと思っていたがハリポタの方が後だとつい先日気付いた(笑)にしても10年以上にはなるわけで久し振りにワクワクするものである。

 『天外者』

冒頭、あっ!このシーンから始まるのか…予告動画で幾度となく見なれた追い掛けられる シーン。除け、除け…と我先に前のめりに走る2人にニンマリする。竜馬は分かるけど…なぜ才助まで追われてるの?予備知識を全く入れずに鑑賞しているからチョッと不思議でした。奇想天外な天外者だから、何かやらかしたのかな?とは思ったけどね  (^^;  どーんと利助にぶつかりガシャリ!あーあ!な万華鏡。この時はそのまま行っちゃうんだ!ほぅ、ほぅ!なんて皆さんが呟いてらっしゃるのと予告編動画を断片的に繋げていくらか想像はしてたので…あぁ~こういう事ね(笑)と思いながら観ていました。ノベライズも手に入れましたが、ここまで我慢してるなら読まずに行ったが新鮮だよ!と言われて納得。 
子どもたち相手に手作りの蒸気船を川に浮かべて無邪気に笑う才助と橋の上から身投げをしそうな『はる』が出会う。慌てて止めに走る才助をすげなく「勝手に触るな!」と跳ね返し、女郎と言えど武士相手にプライドの高さを見せる。これが最初の出会い。身体を売るのが商売の女郎でもただで勝手に触らせやしない!身体は売っても心は売らない!例え相手が侍だろうが関係無い。といった芯の強さを見せられて若い才助の心に石を投げ落とし、水面の波紋の如きさざ波が起きていたのかもしれない。   

次に出会うのは相も変わらず追いかけ廻されて逃げてる最中に一息ついていた時だった。置屋の女たちと地面に字(名前)を書いてお喋りしているところに、酔っ払った侍が通りかかり「遊女に字は要らぬ」と侮蔑される。二人連れの男相手に一歩も退かぬ「はる」に逃げてる事も忘れて、助けに入った才助だったが昼間とは言え色街ではご法度の刀を抜き才助に切り付けて来た勢いで腕に怪我を負わされてしまう。心配する才助にも追い付いてきた追手に気付き早く行けと急かすのだった。庇うつもりが怪我をさせてしまった事と、いくら酔っ払っていたとは言え刀を帯びた二人の侍相手に『夢ぐらい見たって良いだろう!』と啖呵を切る「はる」に心を掴まれてしまっていた。ある日客として部屋を訪れた男に落胆したように『助けて貰ったお礼』だと背を向けて帯をほどく「はる」だったが刀傷が気になっていた才助は着物の袖を捲し上げて傷を確かめる。 薄くなりかけた傷痕に安堵して洋書をプレゼントした。夢をみたいと言った女に見たことも無い様な本を手渡すのだ。自他共に認める風変わりな男、才助は『ひとの心が分からないけどお前の心は分かる』と戸惑うように外を眺めながら告げる。自分の気持ちを持て余したぶっきらぼうな告白である。 遊郭へ通いながら「はる」に字を教えたりしてしながら愛を育んでいた。ここまで観た時点で…これは純愛ラブストーリー?かと思ってしまうぐらい映画の中心に丁寧に置かれている。これは五代友厚と言う人間の純粋さを象徴する軸として「はる」との恋愛を据えて在るんだな…と感じた。才助との仲と言うよりもこの動乱の時代に翻弄されるように引き裂かれていく二人。時代の荒波を乗り越えた先を見ている才助と女郎と言う立場に居ても未来を夢見ているはる。お互いがお互いを想い護りたいと思う行動がますます二人を引き離してていく。武士と遊女の恋愛と言うのも時代劇では使い古されたパターンだが、激動の時代との対比を使いながら史実に当て嵌めて才助の人間性を描いてあった。人間関係に於いては無骨で不器用な男が、実らなかった愛を胸に時代に挑戦していく熱い姿でよりリアルな人間味を持たせて親近感を感じることが出来た。

その後出逢う「妻・豊子」に対しては人生のパートナーとして描かれ、恋愛部分を入れずに「友厚」としての芯の強さや粘り強さと人としてのしなやかさが表現された。家を抵当に金を借りてまで貸し出す…その時代を読む力は時に敵を作り、都合の良いように利用されては誤解を生み出していく。それこそ「制作委員会」が解きたかった誤解の一つであり終盤の「大阪商工会」のシーンに集約されていた。言い訳をする事無く、時代に埋もれていった時代の寵児『五代友厚』の早すぎる死はラストの葬儀のエピソードでその偉大さを表現した。『三浦春馬』は役者として…時代を先取りし過ぎた男の人間像を生き生きと人間臭い風雲児として現代に生き返らせた。 取り戻したかった人間性が恋愛と言うエッセンスを加えてより身近に感じさせることに成功したと思う。

『五代春馬』に恋をしたファンたちが映画館へと通うのは「三浦春馬」への喪失感だけでは無い と思う。彼が  表現した   『五代友厚』に『はる』の様に恋をしたのだ。若しくは、敢えて描かれなかった『豊子』との恋物語を感性豊かに妄想する事で自分に投影して観て居るのかも知れない。

昨年の12月11日の封切り後、途切れること無く再上映が繰り返され…春馬くんの誕生日や七夕には一斉に特別上映さえ行われた『奇跡の映画』となった。
これは春馬くんを愛するファンたちの彼との別れを惜しむ気持ちが全国のシアターに伝わり未だかつて無い奇跡を起こしているのだと思う。古い映画のリバイバルでは無く…近々の映画の再上映など初めて聞いた !      しかも彼の過去の作品もドリパスのリクエストシステムにより続々と上映が繰り返されている。映画館は新作の映画を観に行くもの。小さなシアターは古い映画のリバイバルと新作を織り混ぜながら運営されている所…だと思い込んでいました。現在では大きな映画館でさえ そのような流れになっている事を初めて知りました。この1年間その流れを見て来て改めて新旧問わぬエンタメの魅力を伝える映画界のマンパワーに驚かされました。

平成生まれの『三浦春馬』は役者として、その類い稀な才能と自らの人としての魅力で全力で平成のジャパン・エンターテイメントを駆け抜けて行ったひとりであったと思う。この作品は彼自身のファンのみならず沢山の人たちの努力や支えでここまで大きな…まさに日本の映画界の歴史を変えたひとつになったと思います。

『五代友厚』を演じた役者のひとりとして、その名を歴史に刻んだ作品になりました。 
『天外者』…彼が全身全霊を掛けたと言われるこの映画と共に「三浦春馬」は世界へ飛び立って行きました。 『五代友厚プロジェクト』と言う市民有志により作成された特異な映画で在りながら世界へ羽ばたいて行ったのです。「三浦春馬」のファンが彼の作品を観たいと思って望まれた映画ながら世界の映画祭への参加と言う快挙も起こっています。どこまでも「天外者」な作品となりました。



ゴールデンウィークに初めて鑑賞してから…何を書こうか?作品レビューは素晴らしいものが既に沢山あるから…迷っていて数ヶ月間下書きに埋もれていました。Blu-rayが来て…改めてやはり仕上げよう!と書き足し始めました。それでも気持ちが纏まらず…命日に?も間に合わず…やっと着地しました。ベストなのかと言われればそうでは無い気もしますが(笑)とりあえず書き上げたくて書いた。とりあえずですみません(^^;)))  まだノベライズも未読なので、読んだら少し変わるかもしれません。その時はまた書くかもしれませんね?

御拝読、ありがとうございました。

#三浦春馬

#天外者

#平成を駆け抜けて行った男


拙い文章への共感やサポートありがとうございますm(_ _)m