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東村アキコ/私のことを憶えていますか(7)

もし、あの日あの時あの場所で、
あの出来事が起きなかったとしたら、
起きたとしたら・・・
一体どうなっていただろう。
どうならなかっただろう。
すべての物事は変わり続ける。
そもそもが不安定な人間は尚更、
ちょっとしたことで、些細なことで、
瞬時に変わっていく。
次の瞬間、次の一瞬、どこにいるか分からない。
変わらないと思っていたものが、砕け散る。

登場人物たちの距離感・関係性は、
どんどん変わっていく。
近づいたり遠のいたり。
ただ高速で走る人の横で高速で走ると、
そのスピードを感じられないように、
あまりの変化の大きさに、
さ中にいる登場人物たちにとって、
その変わりように気づいてないのかもしれない。
一方、高速で走る者同士がすれ違うと、
高速が倍になるように、
読者が感じているより登場人物たちは
もっとショッキングに、
もっと衝撃を受けている可能性もある。

いずれにしろ動いている人も動いていない人も、
誰もが独楽のように高速で回り続けている。
独楽同士がぶつかれば、互いに弾け飛ぶ。
それは刹那の出来事だ。
だから一瞬だって、物語から目が離せない。

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