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こざき亜衣/あさひなぐ(30)

スポーツ選手には怪我がつきもの。
才能ある選手、将来を有望視された選手が、
どれだけ怪我によってその道を諦めただろう。
トップレベルになればなるほど、
ぎりぎりの線を攻める。
練習や稽古でどこまで自分を追い込めるか。
どれくらい過酷な練習を積めるか。
どこまで量をこなせるか。
それがトップ選手になる条件だったりする。
だからトップ選手ほど、壊れやすい。
両側に谷底が覗く細い道を、
全力疾走しているようなものだ。
一歩どころか半歩道を踏み外せば、
バランスを崩して真っ逆さまに墜ちる。

我らがエースを怪我が襲う。
夢を追い求める物語であれば、
勝負どころに来て都合よく治ったり、
無事にやり過ごせたりするものだけど、
肝心なところで怪我の影響が出る。
致命的決定的に怪我によって敗れる。
敗れた事実もこたえるが、
思ったように動かない身体へのやるせなさが、
それ以上に心と身体を蝕む。
それでも日々は続いていく。
これまで出来たことが出来ない。
思う存分やれたことが出来ない。
相手や勝負や技能のこと以外、
自分の身体のことを、
怪我をまず考えなくてもいけない。

愛されてきた者がその愛を失う瞬間。
その時、見放された者はいかに生きるか。

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