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こざき亜衣/あさひなぐ(32)

高校生の試合は分からない。
揺らぎが実力を越えてしまうから。
実力ある者の自信を束の間奪い、
未熟だった者を瞬時に天井まで押し上げる。
まさにそんな瞬間が、我らがチームに訪れる。
実力以上の実力がチームに漲る。
実力者の足をプレッシャーが縛る。

けれど大人だって揺らいでいる。
いつもいつだって平常心ではいられない。
あっちへふらふら、こっちへふらふら。
見かけだけは年をとり、
身体もへばりつつあるのに、
精神だけは高校生の頃と変わらない。
背負うものが大きくなり、
失敗から負の経験が積み重なり、
足に重たい鎖を結ばれた分、
動きは緩やかになったものの。
それでも心は揺らいだままだ。

だとすれば、ある日突然、
僕だって飛躍する時もあるのかもしれない。
今の日々を脱して、
大空を飛翔することがあるかもしれない。
這いつくばった地べたから、
離れられる日が来るかもしれない。

そのためには、まっすぐ愚直に、
旭のようにひたすら前に進み続けることだ。
辛くて悲しくてどんな壁に阻まれても、
心折れても心乗らなくても、
ただただ進み続ける。
目の前の地平がどんなに情けなくても、
とにかく進むことだ。
そこにしか道はない。

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