見出し画像

野村克也/ありがとうを言えなくて

「そうか、もう君はいないのか」
と書いたのは、城山三郎。
妻のことを偲んで書いた書物だ。
野村克也が妻を想うと、こうなる。
「ありがとうを言えなくて」
どちらの言葉も、二人の歴史を感じさせる。
空虚、後悔、茫然。
突然、空っぽになってしまった自分に驚く。
当たり前に横にあったものが、
ある日なくなってしまう。
あの人がまさかいなくなるなるなんて・・・

野村克也が想う相手は、ご存知の野村沙知代。
強烈なキャラクターで毀誉褒貶あった。
どちらかというと悪い方が多かった印象。
相手が誰であろうと忖度なしの物言いを、
個人的には嫌いではなかったけれど、
近くにいたら大変だろうとも思う。
不快な思い、嫌な目をみることもあったのではと。

そんな人も愛する夫から見ると、
その実像は全然違う。
愛情深く、可愛いところもある。
といった話かと思ったら、
性格も物言いもテレビのままの人だという。
自信満々何とかなるさと突き進み、
夫だろうが都合の悪いことには嘘で蓋をする。
妻が要因でプロ野球の監督を2度もクビになり、
周囲のウケもよくない。

それでも野村克也は野村沙知代を愛し続ける。
悪いことは悪いと認めながら、受け入れる。
惚れる要素はほとんどないのだけれど、
被害というべき影響もたくさん受けるのに、
それでも愛することからブレない。
夫婦の姿はそれぞれ。
愛し続けられることが素晴らしい。
ひとつの理想形。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?