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三村集落の散策

 別に桜を目当てに散歩したわけではないが、行く先々で満開の桜と出会った。戦国時代の城跡に行くことにした。狭い坂道を上ったら小学校があった。城跡が小学校になっていたのだ。でも、いやに静かだ。広い校庭にも校舎にも人影がない。ただ、校庭の周囲の桜だけががひっそりと咲いている。ペンキで派手な色に塗られた遊戯の上に花びらが舞い落ちていた。校舎前の花壇のパンジーの色鮮やかさが目立つ。一人でその景色を眺めていたら、春の陽が溢れているというのに、なぜか物寂しくなってきた。後で聞いたら、先月末で廃校になったという。

 この三村城は、当地を治めていた常陸大掾氏の平貞国が、対立する常陸南西部を治める小田氏に備えて、南部の守りとして1558年に築城したのだが、小田氏に攻められ1573年に落城した。その時の城主 平常春は若干25歳で自害している。しかし後に、その小田氏も佐竹氏に攻められて滅びた。

 城跡の南東にある「萬降山 常春寺(じょうしゅんじ)」に寄った。ここは城主 平常春の菩提寺である。参道の桜が満開であった。薄日も差してきて輝いている。お参りしようとして本堂に入ったら、住職から「甘茶」をいただいた。「今日4月8日は花祭りだから」という。本堂の正面には、可愛いブッダの像が安置されいて甘茶をかけられるようになっていた。
 「花祭り」とは「降誕会」とも言って、お釈迦様が誕生した時に、9匹の龍が天から降りてきて甘露(かんろ)の雨を降らせたことに因んで甘茶をかける。それにしても、私たちはクリスマスを誰でも知っているのに、「花祭り」をしらない人がいるのはオカシナことだ。いただいた甘茶の甘さには驚いた。これがアジサイの変種である「アマチャ」の葉を乾燥させて煎じたものとはさらに驚く。


 常春寺の境内には、カヤの巨木がある。でも、幹の半分ほどは枯れている。隣の鐘つき堂を建立した時から弱ったという。このカヤは樹齢が6、7百年であるから、この寺が建立された頃(1571?)に植えられたものかそれ以前からのものだろう。幾度の戦火にも耐えて、城主の自害や城の盛衰を見ただろう。何とか持ち直して、再び集落のこれからを見て欲しい。

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