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「ブラックロック-iシェアーズS&P500」投信が実は凄い件

1. はじめに 

 S&P500を対象とした投資信託は多数存在します。純資産額が大きなファンドだと「三菱UFJ国際-eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」や「SBI-SBI・V・S&P500インデックス・ファンド」が有名です。 

 今回はこれらのS&P500ファンドではなく「ブラックロック-iシェアーズ 米国株式(S&P500)インデックス・ファンド」を取り上げます。(以後、iシェアーズS&P500と表記) 

2. なぜiシェアーズS&P500なのか 

 iシェアーズS&P500は少し変わったファンドです。2022年8月3日に信託報酬を従来の0.4125%から0.0938%(税抜 年0.0880%)まで引き下げました。この引き下げは大きな変化ですが、一般投資家にはあまり広まっていないかもしれません。 

 同時にベンチマークも「S&P500 指数(円換算ベース)」から「S&P500 指数(税引後配当込み、円換算ベース)」へと変更されています、ベンチマークの配当込み指数への移行は昨今のトレンドです。あわせて、つみたてNISA適格となりました。

 最後に重要な変更点ですが、投資対象が自社のETFに変更されました。ETF型はSBI Vシリーズにように対象指数に連動するETFを購入する形式です。これによって低コスト運用体制が可能となります。

 投信を通じて自社が運用するS&P500連動ETFを購入することで低い信託報酬でも利益が確保出来る仕組みを構築しています。これは運用報告書を見ると分かります。画像は6/22に交付された直近の運用報告書の費用にかかる記載の抜粋です。

iシェアーズS&P500運用報告書から抜粋

 注目点は総コストを0.10%に抑えている点です。これはeMAXIS Slimよりも若干安いです。特に注目するべき点は販売会社の手数料を0.05%に設定している点です。
 
 総コストが同水準のSBI Vの場合、販売会社の手数料は0.02%です。この販売会社の取り分の違いが別の形で投資家に影響を与えます。iシェアーズS&P500のSBI証券での投信マイレージのポイント付与率は0.042%です。一方SBI Vは0.022%と約半分です。
 

SBI・V・S&P500運用報告書から抜粋

 SBI証券の投信マイレージの原資は販売会社の手数料です。よって総経費率が安く、販売会社手数料が高めに設定されているファンド(iシェアーズS&P500)はポイント還元分を差し引いた、実質コストにおいてNo1となります。
 
 これはSBI証券で保有した場合の限定的な方法なので楽天証券やマネックス証券など、他のネット証券を利用されている場合には上記3ファンドの総コストに有意な差は生じません。

 ただし、最安コストでの運用を追求する投信投資家の方はポイント還元率も含めた実質コスト最安ファンドを見極め投資するのもよいかもしれません。とはいえ差はほんの僅かであり積極的に乗り換える必要はありません。

 新規購入分から変更を検討しても良いという程度です。ここまでiシェアーズS&P500を持ち上げてきましたが、懸念点もあります。それは純資産額が少ない点です。6/22時点で約200億円です。

 投信市場の平均値と比較すると200億円の残高は少ない水準ではありません。しかしながら、S&P500というメジャー指数を対象とし業界最安水準の手数料率という条件を加味すると低すぎると言えます。

 私はこの一年で1,000億円くらいまで残高が成長するのではないかと期待していたので少し残念です。0.0938%(税抜 年0.0880%)という水準はeMAXIS SlimやSBI Vシリーズと並ぶ低コストであり、本来はもっと注目されてもよかったと思います。ブラックロックはマーケティングが下手なのかもしれません。
 
 投信運用は純資産額が重要です。運用額が大きければ固定で発生するコストの全体に占める割合が低下し、総コスト率の引き下げが期待できます。信託報酬は運用残高に応じ%で徴収するため、運用額が1,000億円・1兆円・10兆円ではそれぞれ損益分岐となる手数料率も大きく変化します。

 運用会社としては純資産額が大きければ、手数料を引き下げても利益を出すことが可能です。iシェアーズS&P500は今回の決算で「コスト」という観点では見事に期待値を満たしてくれました。来年は「規模」の観点でも期待を上回る成果を目指して欲しいと思います。
 

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