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「コロナ禍を経た今でも重要なメッセージが詰まっている作品」〜舞台『NO TRAVEL, NO LIFE』〜須田誠×渡辺和貴×吉田武寛 座談会<後編>

世界は、教科書には書いてないことで溢れていた。

『NO TRAVEL, NO LIFE』(須田誠)


写真集としては異例の25,000部を突破したフォトエッセイ『NO TRAVEL, NO LIFE』(原作:須田誠)が、2023年5月に4度目の舞台化を果たします。

世界中を放浪しながら自由を探し求める旅人・須田誠を主人公とし、総勢6名のキャストが一度も舞台から捌けずに様々な役を演じ分けながら作品世界を作り上げる本作。

程なく稽古が始まるタイミングで、原作者の写真家・須田誠さん、主演の須田誠役・渡辺和貴さん、脚本&演出・吉田武寛さんの3人に話を聞くことができました。

この座談会の模様を前編・後編に分けてお届けしていきます。
後編では、写真集をどのように舞台化していったのかという創作秘話や、作品の持つ普遍的なメッセージ性について熱く語っていただきました。(前編はこちら

「この本にあるのは、常識から抜け出せるような新しい発想だと思うんです(吉田)」


ーー初演時、台本はどのように作っていかれたんですか?

吉田:まずは須田さんと新宿駅南口のミヤマカフェでお会いして、こんな風にいろいろお話を聞かせてもらったんですよ。 それを元に書かせていただきました。

須田:はいはい、覚えています。たった1時間くらいのインタビューでこんな台本を書いちゃうなんて、やっぱり脚本家ってすごいなあと思いましたよ。

吉田:本当ですか?

須田:うん、めっちゃいいシーンになってるなあって感動しました。僕、最初の舞台版が1番好きなんです。もう最後は号泣しましたから!

ーーいざ舞台化するとなったとき、写真集を立体化するという点で意識されたことはありますか?

吉田:最初は「写真集の舞台化ってどうやってやればいいんだろう」と確かに僕も思いました。けれど、須田さんの写真集にはメッセージがたくさん書かれているんですよ。須田さんが旅を通して得た新しい発想のようなものが。日本で生きていると囚われてしまう常識みたいなものってあるけれど、この本にあるのは常識から抜け出せるような新しい発想だと思うんです。それをお客さんに届けたいなと思って作っていきました。今回も変わらず伝えていきたいポイントですね。

ーー須田さんが旅をされたのは90年代、『NO TRAVEL, NO LIFE』が出版されたのは2007年、そして今は2023年です。時と共に作品のメッセージの捉え方は変化していますか?

須田:僕自身はもちろん変化しているんですけれど、読み返すと今でも生きている言葉がたくさんあるんです。例えば「明日、地球が滅びようとも、今日、ハンモックに揺られる」なんてね。あと僕がよく使う「時代にピントを合わせてちゃ遊ばれるだけ。自分のハートにピントを合わせなきゃ」とか。例えば最近まではマスクをするかどうか考えるとき、他人にピントを合わせてきた人が多いでしょう。でもこれからは自分にピントを合わせていかないと、どんどん流されちゃいますよね。「世界は、教科書には書いてないことで溢れていた」という言葉もあります。コロナなんて教科書に書いていなかったじゃないですか。でもいきなり来ちゃったでしょう。世界ってそういうことがたくさんあるんです。

こうして一周回って、コロナ禍を経た今読んでも重要なメッセージが詰まっている作品だと思います。自分で言うのはちょっと照れ臭いんですけどね(笑)。

ビジュアル撮影時の様子

「今こそ『No Choice』から希望を見い出してほしい(須田)」


ーー本作はキャストが一度も舞台から捌けず、総勢6名で様々な役を代わる代わる演じていく演出だとうかがっています。渡辺さんは演じ手としてそういう舞台の経験はありますか?


渡辺:舞台から捌けないこと自体はあります。ただ、自分だけがそのままの役で他の人だけ変わっていくというのは今までなかったですね。自分も一緒に変わっていくようなことはあったんですけど。

吉田:そうそう、須田誠役の人はずっと須田誠で、須田誠以外の役の人たちがどんどん変わっていくんです。

須田:その演出スタイルには、何かこだわりがあるんですか?

吉田:こだわりというか、初演のときの劇場が小さ過ぎてそもそも捌ける場所がなかっただけなんです(笑)。そこから逆転の発想で、じゃあ捌けずに行こうっていう。

渡辺:そうだったんですね(笑)。6人が一度も捌けずにやる舞台を約2週間の稽古で突き詰めていくのは、過酷な旅になりそうだなあ(笑)。

吉田:僕も台本を書きながら「今回は過酷かも」って思いました(笑)。本編はそんなに長くないかなと思っていたんですけど、1時間半くらいはあるので。これまで以上に過酷になっているかもしれません(笑)。

ーー初演時は上演時間が70分程だったそうですが、今回は長くなっているんですね。台本自体も結構変わってきているのでしょうか?

吉田:そうですね。初演が70分くらいで、その次がちょっとだけ伸びて、今回はさらに台本を書き足しています。結構書き足しちゃったので、今ちょっと悩んでいるところです(笑)。

渡辺:それは大変そうだなあ〜。開幕まで1ヶ月を切っているので、時間ないですからね(笑)。

須田:僕、毎回思うんですよ。よくできるなあって。役者さんって本当にすごいですよね。

渡辺:本当ですよ! 僕も毎回思います(笑)。

須田:だって役者さんって、まず膨大な台詞を覚えなきゃいけないじゃないですか。やっぱり普段の生活でも物覚えはいいんですか?

渡辺:いやいや、日常ではただのポンコツです(笑)。台本を覚えている期間はずっとそのことばかり考えてしまうし、稽古に入ると「あそこのシーンはこうした方がいいかな」とかつい考えちゃうんですよね。そうすると他のことが疎かになっちゃって、ごはんを食べることすら忘れたり。台詞が頭に入ってくるまでは次の台詞を追ってしまって楽しめないので、まずは必死に覚えます。

須田:そして今回は、須田誠になりきってくれるわけですね。

渡辺:はい、頑張ります!

吉田:でも僕、根本的に2人は似ているんじゃないかと思っているんですよ。

須田: 顔が?(笑)

吉田:中身が(笑)。割とこのまま素の渡辺くんでいけるんじゃないかなって思っているんですよね。渡辺くんも海外でいろんな人と話せそうな陽な感じがあるから、役作りはそんなにいらないんじゃないかって。

渡辺:確かにコミュニケーション能力は高いかもしれません(笑)。 きっと演じる人が違えばそれぞれ違う須田誠さんになると思うんです。なので、須田さん自身にもその違いを感じて楽しんでもらえたら嬉しいですね。

吉田:まずは、頑張って台本をちゃんと完成させなきゃですね。

渡辺:ええ、もうすぐ稽古も始まりますからね!

ーー最後に、お客様に向けてメッセージを一言ずつお願いします。

須田:最近、改めて自分の本を読み直してみたんです。本の中に「No Choice」という言葉が出てくるのですが、これは僕がニューヨークで生活に行き詰まったときに書いた言葉なんです。で、ここ数年はコロナ禍で世界中が「No Choice」になっちゃったじゃないですか。家からも出られない、旅行にも行けない、仕事を辞めちゃう人もいる・・・・・・まさに「No Choice」の状態でした。それが3年も続いちゃったんです。この本は2007年に出版されたものですが、今こそコロナ禍を経て「No Choice」から希望を見い出して生きていってほしいなと思います。

渡辺:須田さんはこうやって普通に話してくださっていますが、写真を見る限り、旅ではきっと危険なことや普段僕たちが経験しないようなことばかりだったと思うんです。須田さんが実際に命懸けで行った旅を舞台を通じてお客様に体験していただくことで、新たな人生を開いていく気持ちになってもらえたら。「旅に行ってみようかな」でもいいと思いますし、何かいつもと違うことをやってみたいという気持ちが生まれたらいいなと思います。劇場に来る前と来たあとで、少しでも気持ちの変化が起きていたら嬉しいですね。

吉田:日常に新しい刺激が欲しい方や、新しい発想を取り入れたいなと思う方にぜひ観ていただきたい作品です。もしよかったら、僕たちと一緒に旅に出ましょう!

(左から)須田誠、渡辺和貴、吉田武寛

取材・文・撮影 = 松村 蘭(らんねえ)

舞台『NO TRAVEL, NO LIFE』2023 公演情報

【原作】
NO TRAVEL, NO LIFE(著:須田誠 出版:A-Works)

【脚本・演出】
吉田武寛

【上演会場】
六行会ホール

【上演期間・タイムテーブル】
2023年5月11日(木)~5月14日(日)
5月11日(木)19:00
5月12日(金)1400 19:00
5月13日(土)13:00 18:00
5月14日(日)12:30 16:30

【出演】
渡辺和貴
大谷誠
馬嘉伶(AKB48)
込山榛香( AKB48)
中村裕香里

【公式サイト】
http://www.no-travel-no-life2023.site

【お問い合わせ】
info@illuminus-creative.net
(ILLUMINUS運営事務局)

【企画・製作】
ILLUMINUS

須田誠写真教室

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