フッドの家庭における不和と、その解決への姿勢を読む(Boogie - "Whose Fault" ft. Christian Scott aTunde Adjuah)

Writer: @vegahokuda

ブーギー(Boogie)いいですよね、ブーギー。エイ・ブーギー・ウィット・ダ・フーディ(A Boogie Wit Da Hoodie)もいいですが、今回解説するのはブーギーです。エミネム(Eminem)率いるレーベル=Shady Recordsに昨年サインした、コンプトン出身の新人ラッパーです。

その現在29歳についての説明はPlayatunerさんのこちらの記事に譲るとして、本記事では、彼が先月リリースしたアルバム『Everythings for Sale』に収録されている「Whose Fault」という曲を読み解いていきたいと思います。

"whose fault"は直訳すれば「誰の責任」とでもなりましょうか。クリスチャン・スコット・アトゥンデ・アジュアー(Christian Scott aTunde Adjuah)によるトランペットの音色が美しい本曲で、そのラッパーはどんなことを語っているのか。内容を見ていきましょう。

スキット

(I will tear this whole fuckin house down)
I'm bettin' you won't do shit
(Oh, really? Try me. Try me!)
Yeah
(Come on, try me!)
Fuck out my face!
(Try me, bitch! Then come on and try me!)
Get out my fuckin face, move!
(What you gonna do? Come on, don't stop here. No, I'm tired of you)
Go 'head, go
(Go 'head, stop)
Yeah, whatever
(I have had enough!)
Shut the fuck up!

【意訳】
(こんな家ぶっ壊してやるんだから!)
おう、やってみろよ
(マジで? 言ったね? 言ったね!)
ああ
(ねぇ、言ったね!)
いいから失せろ!
(言ったね! 覚悟しなさいよ!)
だから失せろって、あっち行け!
(どうするつもりだっていうの? 何か言いなよ。あんたにはうんざりよ)
じゃあ行けよ
(で、止めるんでしょ?)
何でもいいさ
(もううんざり!)
うるせーわ!

*本曲は男女の口論で幕を開けますが、この内容だけを読んでも、何が原因で口論に至ったのかは分かりかねますね。続きを見ていきましょう。

*なお、後段に登場する「コンプトン」「息子」というあたりから、これはブーギーの実体験に基づく話ではないかと推測できますが、定かではないので、本記事では「男性」「女性」という表記で進めさせていただきます。

1バース目

Don't put your hands on me, uh
Fuck out my phone, I already told you she my damn homie, uh
You know the buttons still hurtin', and then you gon' stand on 'em, uh
And have the nerve to say you'll call another man on me, whoa

【意訳】
俺に手を上げるな
俺の電話に触るな 彼女はただのホーミーだって言ってるだろ
(電話の)ボタンはまだ痛んでるけど、そこに立とうってのか?
俺を始末するために別の男を呼ぶって、どんな神経してるんだ?

*「彼女はただのホーミー」という男性の台詞から、彼が女性に浮気を疑われていることが窺えます。先にネタバレしてしまうと、この女性は男性のベイビー・ママ(子供の母親)です。

*「ボタンが痛む」はあまり聞かない表現ですが、金欠で生活が苦しいことを"pocket hurts"などと言うことから類推するに、生活が苦しくて電話代も払えないということかと思われます。男性のベイビー・ママは、そんな彼に追い討ちをかけます。

I was aware of your hurt, but I didn't know what your vengeance like
How the role of the killer switch to the role of the victim?
Like why the fuck you keep yellin', "We can't afford no eviction"? Uh
On my momma, you trippin' bitch, don't be bringin' my kid in this

【意訳】
お前が傷ついてるって知ってたさ、でもお前がどう復讐するか知らなかった
殺し屋が犠牲者を演じるってどういうことだよ?
なんでずっと叫んでるんだ? 「もう立ち退きなんてできない」って
間違いなくお前はどうかしてるよ、ビッチ、俺の子供を巻き込まないでくれ

*男性の言い分では、この女性は「殺し屋(並みの加害者)」であり、そんな彼女が犠牲者ぶっているのを理解できずにいるようです…が、リリックを読み進めていくと彼女の言い分も説明されています。

She say, "Nigga you ain't shit, shoulda left you where you stand
Shoulda never let you hit, I shoulda chose up on your friend
Wish your daddy was around and taught you how to be a man
'Cause you a, motherfuckin coward, nigga, let go of my hand

【意訳】
彼女は言う 「あんたなんてクソ、見捨てればよかった
あんたにヤらせたのは間違いだった あんたの友達のほうがマシだった
あんたにお父さんがいて、男とは何たるかを教えてくれてればよかった
だってあんたは臆病者だから あたしの手を離してよ

*ここからベイビー・ママの台詞が始まります。

*「あんたにお父さんがいて…」が象徴的なラインです。映画『サウスセントラルLA』(原題:Baby Boy、2001年)などで描かれるようなステレオティピカルなフッドの家庭には、父親がいません。それはすなわち、子供(特に息子)にとってロールモデルとなるような大人の男性が家庭にいないということを意味します。

I swear I hate you, I hate how you think you dumb poppin'
Nigga, fuck Compton, act like you don't see your son watchin', uh
I'm done watchin' you fuck him up, keep it pushin', go do you
Like he don't copy your movements and he ain't lookin' up to you
That shit is boo-boo, I hate it

【意訳】
あんたなんて嫌い バカのくせしてイケてるって勘違いして
何がコンプトンよ、クソ あんたの息子が見てるっていうのに
あんたがあの子をダメにするのを見てらんない どうぞご勝手にやって
あの子があんたの動きを真似て、あんたを見て育たないとでも思った?
そんなのクソ、嫌い

*女性は、後ろ姿を示すべき息子がいるにもかかわらず、ストリート・ライフに身を投じる男性を非難しています。

Know it's actually kinda crazy how you fucked your homegirl and then actually tried to blame me, like
No, I'm laughin' because I'm angry, you salty 'cause I been dating don't ask me to see your baby, fuckin' pussy"

【意訳】
ホームガールとヤって私に責任をなすりつけようなんて、狂ってる
うん、怒ってるから笑ってるのよ 私が別の男と付き合ってるから冷たいのね 子供に会わせようなんて思わないで、このプッシー野郎」

*ここまでが女性の台詞です。

インタールード

At the tone please record your message, when you finish recording you may hang up or press 1 for more options
(Look bro, I don't know what you been on
But this is the example you want to set for your son?
Like dude, get it together
I need me some time
Your son got practice on Friday and a game on Saturday
I need you to pick him up after school
Get out your feelings)

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