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ウィットに富んだ言葉遊びで伝えるストリートでの日々を読む。(Morray - "Quicksand")

written by @vegashokuda

今年もXXL Freshman Classが発表されましたね!

その中の一人=モレイ(Morray)は、教会の聖歌隊に所属していたこともあるラッパー/シンガー/ソングライターで、J・コール(J. Cole)と同じくノースカロライナ州ファイエットビル出身です。そんなコールのアルバム『The Off-Season』収録の「m y . l i f e」にも21サヴィッジ(21 Savage)と共に客演していましたが、彼自身のミックステープ『Street Sermons』も今年4月にリリースされていることを忘れてはなりません。

今回は、『Street Sermons』にも収録されており、モレイが一躍注目を集めるきっかけとなった楽曲「Quicksand」の歌詞を読み解いていきます。

今回解読する曲
Morray - "Quicksand"
Produced by Hagan & Ant Chamberlain

サビ

Since a jit stood tall with a kickstand
Thinking of a plan to get quick bands
Falling in deep with the quicksand
Flag out my ass, no quick brand

和訳:
ガキの頃から堂々と立ってた
早く金を手に入れられる方法を考えながら
深みに沈んでいってた
ケツから旗をぶら下げてた 簡単に手に入るブランドじゃねぇ

【解説】

*"kickstand"「(自転車・バイクなどの)スタンド」ですが、スラングでは「勃起した陰茎」の意味もあるのだそうです。前者で捉えれば「何か支えになるものを必要としながら立っていた」という意味になりますし、後者で捉えれば「多感な思春期に勃ちながら立っていた」という意味になります。

*"quicksand"は「流砂(液状化した土砂)」ですが、流砂のように抜け出すのが困難な状況を指すこともあります。4行目の"flag out my ass"と合わせて考えると、ストリート・ライフにのめり込んでいたことが窺えます。

I was packing on the pounds, got my weight up
Had beef on the streets, had to stay up
Betty Crocker showed me how to bake a cake, bruh
Doing that put everything I love at stake, bruh

和訳:
ヤクを詰めて 大人になった
ストリートではビーフが絶えず 起きてなきゃならなかった
ベティ・クロッカーは俺に金の稼ぎ方を教えてくれた
そうすることで愛するものすべてを危機に晒した

【解説】

*"weight"は文字どおり「体重」と捉えてよいかと思いますが、薬物の重量の単位である"pound"と縁語でもあります。

*「ベティ・クロッカー(Betty Crocker)」は食品ブランドおよびそのキャラクターであり、文字どおり「ケーキ(cake)」に関連しますが、ここでの"cake"は「お金」の意味でも捉えることができます。そう考えると、ベティ・クロッカーの商品であるミックス粉をドラッグになぞらえているとも考えられます。また、4行目の"stake"も"steak"と同じ発音であり、食べ物に関連したワードプレイであることに気づきますね。そして、食べれば結果として体重(weight)が増えるので、1行目から同じテーマでのワードプレイが展開されていたことに気づくのです。

1バース目

Back in the day, man a nigga had rip jeans
Couldn't afford a new pair, I had broke seams
Couldn't think about the money, I had broke dreams
Outfit was the match of a crack fiend

和訳:
昔は裂けたジーンズを穿いてたさ
新しいのが買えなくて縫ってた
金のことなんか考えられず 果たせない夢を抱いてた
クラック中毒みたいな格好してたな
I was tryna be fly, I couldn't take off
Clothes falling off my ass, lost weight, dawg
No jacket in the winter, had the shakes, dawg
Then I said, "Fuck it," 'cause something gone have to shake, dawg

和訳:
イケてるカッコしようと思っても飛べなかった
服は俺のケツからずり落ちた 痩せたんだ
冬もジャケットなしで震えてたね
「クソ」って呟いた 何かを売り払わなきゃならなかったからな

【解説】

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