スクリーンショット_2018-02-26_22

「父親は銀行強盗だった」、吹っ切れたCaleborateの本音を読む。(Caleborate - "Bankrobber")

written by @raq_reezy

最近、ヘビロテで聴いているラッパーがいます。

昨年『Real Person』というアルバムをリリースした、Caleborateです。

まずは何と言っても、こちらの曲"4 Willem"がビートもラップも超気持ちが良くて最高です。

「Sun Don't Shine Everyday(太陽は毎日輝かない)」なんて歌ってて、ちょっと暗さが気になるんですが、アルバム『Real Person』(リアルな人間)という名前の通り、等身大を描きつつ、前に進もうとしている様子にも心を打たれます。

過去にはJ.Coleのプロデュースしたビートでラップをした曲もあり、J.Coleのレーベル「ドリームビル」のYouTubeチャンネルにあがっています。

そんなCaleborateの『Real Person』から、先日新しいミュージックビデオが公開されました。

"Bankrobber"です。

こちらの"Bankrobber"は、"My daddy was a Bankrobber"(俺の父親は銀行強盗だった)という強烈なインパクトのあるラインがサビで歌われる曲で、アルバムの中でもパワフルでキャッチーな曲に仕上がっています。

イントロ

Yeah Yeah Yeah
Me and Drew Banga, Came back from the hiatus
I'm not high so, Imma try to just actually really feel it

【意訳】
そうさ、イエー、イエー
俺とDrew Banga、活動休止から戻って来たぜ
俺はハイじゃない、だから本当に感じるままに行くぜ

今回の曲は、大麻でハイになった状態ではなく、素面の状態で、本当に普段感じていることを全部ぶちまけるぜ、といったところでしょうか。

サビ

My daddy was a bankrobber, bankrobber
He taught me how to get money, get money
See I don't wanna hurt nobody, yeah
I just love to live this way, aye

【意訳】
俺の父親は銀行強盗だった、銀行強盗さ
俺に金の稼ぎ方を教えてくれた、金の稼ぎ方さ
分かる?俺は誰も傷つけたくはないんだよ
俺はただこんな感じで生きるのが好きなのさ

サビはなんとも強烈です。

先ほど紹介した"4 Willem"でも、しばらく父親とは話していないというラインがあり、Caleborateの父親は銀行強盗で捕まって服役しているのではないかと思われます。そんな逆境の中で、Caleborateは音楽で勝ち上がろうとしているのです。

それに、Caleborateの曲には彼のナイーブさや優しいであろう人柄が現れています。この弱肉強食の世界で勝ち上がりたいけれど、誰も傷つけたくはないといった具合に。

1バース目

I've been out hear lowriding, lowriding
Hanging out with nobody, nobody
Cause i got my own problems, own problems
I'm young and black with no college, no college

俺はこの底辺でずっと暮らして来た、底辺でな
誰ともつるまずに、誰ともだぜ
だって俺には自分の問題があった、自分の問題さ
俺は大学も出てない若い黒人なんだ、大学を出てないんだ

ここからは、言いづらかったことをぶちまけて楽になろうとするかのように、次々と本音が語られていきますが、まずは底辺で暮らしているけれど、誰ともつるんでいないという孤独が語られます。

But fuck em cause the streets is where i graduate
Momma gon congratulate
Tell me that she love me but i gotta make it out this place
Niggas die here everyday
Or they get stuck working jobs

【意訳】
だけど、そんなの糞食らえさ、俺はストリートを卒業したんだ
俺のママは俺を祝福してくれるはずだ
ママは俺を愛してると言ってくれるけど、俺はここから脱出しなきゃいけない
だって、ここでは毎日のように人が死ぬんだ
それか毎日の仕事に埋もれるのさ

ラッパーはストリートでビジネスを学んだということを往往にして述べますが、Caleborateもまた、大学には行っていないけれど、ストリートというビジネス・スクールを卒業した人間の一人です。

また、どんな状態であっても母親は自分を愛してくれますが、それに甘えて、この危険な場所で暮らし続けていてはいられないという決意が読み取れます。

Caleb get your own job then get your own state like tom
Get Del Niro like Rob and get a black girl too
And make sure you don't forget what your daddy used to do
Never be like them niggas and they'll wanna be you
And don't fuck with hoes that don't do shit but look cute

【意訳】
Caleb、自分の仕事を探せよ、それでトムみたいに自分の心を取り戻せ
ロブみたいにデル・ニロを手に入れて、それから女の子も手に入れるぜ
それに、父親が何をしていたかを忘れないように気をつけるんだ
人の真似をするなよ、そうすればみんなお前になりたがる
それから可愛いだけで何もしない女とは関わらないことだな

ここでは、自分に何をすべきかを言い聞かせています。

まずは仕事を探して働いて自立すること。それから、父親が銀行強盗をして捕まったことを忘れないこと。人の真似をして後ろばかり追うのではなく、自分の道を進むこと、それからルックスだけに惹かれて女の子を追いかけ回さないこと。

1バース目では、必死に生活を立て直して、何とかしようとする、リアルなCaleborateの像が浮かび上がってきます。

2バース目

Ayy, first off, fuck Donald Trump, I don't care he's not my president
Nigga i ain't scared of shit
You can't even tell him shit

【意訳】
エイ、まずはドナルド・トランプなんて糞食らえだ、あいつは俺の大統領じゃない
俺は何ひとつ恐れちゃいない、お前らはビビって何も言えないんだろ

続いて、政治的立場も表明しています。ドナルド・トランプには、多くのラッパーと同様に反発しているようです。

What's the point in hiding just be honest for the hell of it
I know my truth gonna set me free, So tell it
Look
Yeah i watch porno
I grown as fuck but still ain't got no dough

【意訳】
自分を隠す意味なんてあるか?正直になれって話さ
俺についての真実を明かせば、俺は自由になれる、だから言っちまうぜ
いいか、俺はエロ動画だって見るぜ
俺は年齢だけ一人前だけど、まだ全然金はない

Caleborateは隠していることが多くて、毎日が生きづらいように感じているのかもしれません。真実を話して、みんなが知ってしまえば、そのことによって不利益はあるかもしれないけれど、精神的な自由を得ることができる。それが父親の犯罪のことまで曝け出したサビに繋がっているのでしょう。

それに、ここでは随分と正直に自分の現状を語っています。エロ動画も見るし、一人前だけどお金を稼いで自立することは出来ていないのです。

I'm living with my aunty, I ain't got no hoes
I beat my dick sometimes when she don't answer my calls
I'm self conscious bout my size and how i look with clothes on
But i'm still cold as frozone
When i spit this oxycodone

【意訳】
俺は叔母さんと住んでて、ヤる女もいないんだ
彼女が電話に出ないとき、俺は自分のちんこをしごいてる
俺は自分のサイズを気にしてる、服を着るとどんな風に見えるかもな
だけど凍りついた湖みたいにクールを通り越してイケてるぜ
オキシコドンを服用してラップするときにはな

自分の家を借りることもできないため、叔母の家に住んでいて、今は満たされない気持ちを抱えているのでしょう。また、自分の身長にもコンプレックスがあるようです。

しかし、そのように数々のコンプレックスを抱えていたとしても、Caleborateのラップはリリシズムもフロウも素晴らしく、ラップをするときは、めちゃくちゃにイケてることに間違いはありません。

Cause i admit that i ain't shit and everybody follows
To make it big in this world you can't be in your sorrows
Fuck what happened yesterday, you could blow up tomorrow

【意訳】
だって、俺は自分がクソ野郎じゃないって自分で認めてやるんだ、それでみんな付いてくる
悲しみにくれてたって、この世界じゃ大物になることはできない
昨日何があったかなんて糞食らえさ、明日には死ぬかもしれないんだからな

ケンドリック・ラマーの"i"でも、まずは自分を愛することの重要さが歌われていましたが、Caleborateも同じことを感じているのでしょう。

どれだけ自分がダメな人間だと思えるような要素があったとしても、まずは自分で自分を認めることが第一歩です。結局のところ、僕たちひとりひとりが与えられたものは、自分の命だけであり、それを使って、成りたい自分を目指すしかないのです。

If you keep your eyes on the prize that night
Said my daddy back at high school when i would write
Now i'm recognized and God damn that nigga was right
That nigga was right

【意訳】
「もし今夜の賞金にしっかりと目を向けておけば手に入るはずだ」
俺の親父は、高校生の俺が歌詞を書きはじめたときにそういったのさ
今じゃ俺はシーンに認知されはじめてる、俺の親父は正しかったんだ!
俺の親父は正しかったって言ってんだよ!

銀行強盗をして捕まった父親ですが、Caleborateの文才には早々に気づいて、彼の背中を押してくれたようです。今は近くにいないけれど、父親が心の支えになっているのでしょう。

自分のネガティブな側面も全てぶちまけて、吹っ切れた状態で夢を追うCaleborate。

今後の活躍も楽しみです。

ここから先は

0字

¥ 300

「洋楽ラップを10倍楽しむマガジン」を読んでいただき、ありがとうございます! フォローやSNSでのシェアなどしていただけると、励みになります!