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ニッキーの原点回帰。強気な姿勢でラップしまくるニッキーを読む。(Nicki Minaj - "Barbie Tingz")

Writer:@raq_reezy

ニッキー・ミナージの新作『Queen』がリリースされました。

ということで、今回はニッキー・ミナージの新作アルバムに収録されている「Barbie Tingz」を解読していきましょう。

こちら曲は4月にはYouTubeでも公開されていたものです。

さて、ニッキー・ミナージといえば、女性ラッパーのカーディBとちょい揉めしたという事件がありました。

二人が共演した「MotorSport」で「ニッキー・ミナージが自分ののバースを聴いた後にバースを変えた」とカーディBがインタビューで言って回ったり、PV撮影に際してスケジュール調整の都合でニッキーだけ別撮りになったことで不仲が噂されたためです。

ニッキー・ミナージも登場時にはリル・キムとビーフになったことがあります。女性ラッパーは人数が少ないために、どうしてもリスナーから比較されて揉めがちなのでしょう。先日も、Bhad Bhabieがインタビューで女性ラッパーの比較をやめるようにと発言しています。

いずれにせよ、キャラも濃いカーディBが「Bodak Yellow」で女性ラッパーのソロ曲としてローリン・ヒル以来のビルボードの1位を獲得するなど、新星の女性スターとして快進撃を続ける中で、世間の一部では2010年頃から活躍してきたニッキー・ミナージを「それに焦っている古い女性ラッパー」として面白おかしく扱う流れがあり、ニッキーは大変苦しい立場に追い込まれました。

思わず涙を流してしまった以下のインタビューの様子からも、その辛さが想像できます。

しかし、そんな中でも、ニッキーは世間の期待を上回るかのうように、他の女性ラッパーを所詮は私の物真似と言わんばかりにバシバシと攻撃するような曲をドロップしていきます。「Barbie Tingz」はそんな1曲です。

ニッキーは、この過程でインスタグラム等を見るのを一度止めて、初心に戻り、5人程度で製作を始めたようです。いかにニッキーが精神力の強いアーティストであるかが垣間見えるような気がします。

ニッキーは、そもそもレーベルメイトであるリル・ウェインなどのプッシュもありシーンに出てきましたが、カニエの「Monster」への客演でとんでもなくラップが上手いことが世間に広く知れ渡りました。

「Barbie Tingz」などは、そんなニッキーが「とにかくラップをする」ということに回帰した曲でもあるとbeats 1のインタビューで述べています。

それでは、内容を見て行きましょう。

1バース目

Uh, I'm in my prime, Optimus
Sagittarius, so you know I'm an optimist
Man, keep it all real, I'm a prophetess (okay)
So at least you took an L off your bucket list (bucket list)

【意訳】
私はまだ全盛期、まるでオプティマス・プライムみたいに
射手座だから、めちゃくちゃ楽観的なのよ
さあ、私は全てを実現する、私は預言者なのよ
だから、最低でも人生のやることリストから敗北は取り除いておくことね

1バース目の入りから、強気モード全開のニッキーを堪能できます。

まず「Prime」は全盛期を意味しますが「Optimus Prime(オプティマス・プライム)」との言葉遊びにもなっています。

オプティマス・プライムは、車がロボットに変身して戦う『トランスフォーマー』に登場するオートボットです。

そして、自分の発言を自分で実現するから、自分は預言者であるとも歌っています。これも強気です。

リストから「L」を取り除くと歌っている箇所については、「L」は「Lose」の「L」を意味していると思われるので、人生から負けを取り除くと解釈できます。

It's time to make hits and it's time to diss
How you still dissin', still can't find some hits? (Okay)
Was it worth it, dummy? I ain't mind a bit
Still on that show gettin' no chips, time to dip

【意訳】
ヒットを作って、ディスを放つ時間よ
未だに一発も当たらないのに、よくディスを続けられるわね?
ご満足かしら、おバカさん?私は少しも気にしない
まだそんな番組にノーギャラで出てるの?去りどきよ

ここはニッキーをディスっているレミー・マーなどの女性ラッパーへの応戦をしているのだと思われますが、「一発も当たらない」というのもダブルミーニングになっています。

(1)ディスが一発も自分に当たっていない(効いていない)というのと、(2)あなたは私レベルのヒット作を一発も当ててないという2点です。

そんな番組というのは、『LOVE & HIPHOP』のことを指していると思われます。

『LOVE & HIPHOP』はヒップホップ業界の女性に焦点をあてたリアリティ番組で、レミー・マーやカーディBなどが出演していました。

ニッキーには、そうしたものに頼らずに勝ち上がってきたという自負があるのでしょう。

I, I, I, I-I, I-I, I (okay)
I'm still fly, just bagged a white guy (okay)
Ritchie like Guy and I still eat Thai
Want the Nicki cheat code? Come on, bitch, nice try

【意訳】
私は今でも羽ばたいてる、またお金を稼いだわ
ガイ・リッチーみたいにお金持ち、私は今でもタイ料理を食べるわよ
ニッキーのチートコードが欲しいって?無理よ、ビッチ、ナイストライだけどね

「白人をカバンに詰めた」(bagged a white guy)というのは、初めて知りましたが、お金を稼いだという表現だそうです。ここで「白人」というのは、紙幣に印刷されているベンジャミン・フランクリンなどを指すのだそうです。

ガイ・リッチーはイギリスの映画監督であり、マドンナと結婚したこともあります。

サビ

Let's be real, all you bitches wanna look like me
Wanna be in demand, get booked like me
Wanna run up in the lab and cook like me
But ain't nan you hoes pussy good like me

【意訳】
本物になりましょ、あなたたちビッチはみんな私みたいな格好をしたがる
私みたいに需要があって、仕事がある女になりたいのね
ラボに行って、私みたいに上手に料理をしたがる
だけど、あなたたちのプッシーは私みたいに良くないでしょ

ここでは女性ラッパーたちがスタイル面でもラップ面でも自分の真似をしている点を指摘しています。

ニッキー・ミナージは、リル・キムなどの「バッドなビッチ」路線を引き継ぎつつも、自身を「バービー」とも呼ぶように、ギャングスタラップの世界観ではなくポップな路線を追求することで、トップスターの座を手に入れました。

多くのラッパーがそうしたニッキーのスタイルや、ニッキーのラップのフロウを真似して、人気になり、仕事を得ようとしていると言います。

最後の行は「Nann Nigga」という曲のTrinaというラッパーのバースを参照しています。

Pussy so good his ex wanna still fight me
Face so pretty bitches wish they could slice me
She just mad 'cause he never bought her ice like me
I cut all my niggas off, but they would still wife me (still wife me)

【意訳】
私のプッシーは、彼の元カノが突っかかってくるくらいに具合が良いのよ
私の顔は、可愛いビッチたちが切り刻みたいと思うくらいに良いのよ
彼女は怒ってる、彼が私には宝石を買うのに、彼女には買ったことが無いから
私は、全員を捨てたけど、今でも彼らは私を妻にするわ

この宝石云々の部分は、ニッキーがナズと恋愛関係になったときに、ナズの元妻であるケリスがチクリと苦言を呈したことに触れているのではないかと言われています。

画像1

誰もJay ZとBeyonceの安っぽいウォルマート版を演じている偽物カップルのことなんて気にしないわ。ケリス、そのまま進みなさい、私は自分のことを誇りに思っているわよ。(略)

ニッキーとナズは、お揃いの宝石ペンダントを付けているところが目撃されているからです。

画像2

2バース目

Rap bitches tell they team, "Make 'em like Barbie"
Had to come off IG so they can't stalk me
All they do is copy looks, steal music too
Want to see what bitches do when they lose the blue-print

【いやう】
ラップする女たちは、制作チームに「バービーみたいにして」と指示する
私をストーカーするためにインスタグラムを始める
彼女たちがすることといえば、ルックスを真似て、音楽をパクること
ブループリントに負けたときに女たちが何をするか見てみたいものだわ

「青写真」というのは設計図のことです。Jay Zの『BluePrint』のようなシーンの基準となるアルバムのことも意味します。

ここでは、ニッキーの真似をするものの、ニッキーのつくった青写真を超えられないと悟った女性ラッパーたちがどうするのか見ものねという意味でしょう。

I mean the pinkprint, ho, let it sink in
I spoke to Jay the other day, he's still the kingpin
He's still the only nigga that I woulda signed to
If I ain't sign to Wayne's perfectly designed crew

【意訳】
違った、ピンクプリントね、身に染みるまで理解してね
私は先日JAY-Zを話したわ、彼は今でも王様よ
彼は私が契約をする可能性がある、たった一人の男
もし私がリル・ウェインの完璧な集団と契約していなければね

実際に、ニッキー・ミナージは『The Pink Print』というアルバムをリリースしています。

ここでは、先ほどのブループリントのくだりからジェイZの名前をドロップしています。

'Cause we the big three, don't need a big speech
We made the biggest impact, check the spreadsheet
That's Lil Weezy, the Barbie and Drizzy Drake
Niggas gettin' more cheese, kissy face

【意訳】
だって、私たちがビッグ3よ、大々的なスピーチも必要ないわね
私たちほど大きな衝撃を与えた3人はいない、スプレッドシートをチェックしなさい
ビッグ3ってのは、リル・ウェイン、私、ドレイクの3人よ
私たちはお金を稼ぎまくってる、キス顔を送ってる

さて、ここのビッグ3、リル・ウェイン、ドレイク、ニッキー・ミナージというのは、ヤングマネーというクルーのメンバーでもあります。

当時、売れに売れまくっていたリル・ウェインがヤングマネーの一味としてフックアップする形で、ドレイクやニッキーもシーンに登場しました。

その後は、お互いに積極的に客演しながら、ドレイクやニッキーもそれぞれバカ売れしてトップスターとなりました。

たしかに一つのクルーから、ここまで売れたラッパーたちが3人も登場した例は過去にないでしょう。

ちなみに、ドレイク等との不仲でクルーを去りましたが、タイガもヤングマネーに一時所属しています。

I'm a bad bitch, fuck the bitch (uh)
Bitch get slick, I'ma cut the bitch
I'm a bad bitch, suck some dick (okay)
If that bitch get slick, I'll cut the bitch

【意訳】
私はバッドなビッチ、他のビッチなんて糞食らえ
口が達者な女は切り捨てるわ
私はバッドなビッチ、ディックをいくつか舐めて
もしあのビッチがペラペラ喋るなら、切り捨てるわ

バッドなビッチ自慢が飛び出しています。

I'll cut up the bitch, I'll gut the bitch (okay)
Had to fuck up the bitch, man, fuck the bitch
Won't shoot her but I will gun-butt the bitch
When we say "Fuck the bitch," dick up the bitch

【意訳】
私は、ビッチを切り刻んで、内臓をとる
ぶちのめさないといけなかったの、糞食らえよ
撃ちはしないけれど、銃バットでお尻を叩くわ
彼女が「ビッチ、糞食らえ」って言ったら、ディックをブチ込むわ

ここでも攻撃的なバースが繰り広げられています。

She was stuck-up so my niggas stuck up the bitch
Still draggin' her so don't pick up the bitch
Get the combination to the safe, drug the bitch
Know the whole operation been bugged the bitch

【意訳】
彼女は自分が一番だと勘違いしてたから、立ち往生させてやった
彼女は足を引っ張られてるから、拾いあげないことね
安全へのコンビネーションを手に入れなさい、ビッチを薬漬け
オペレーションを全て知ってる、まるで操縦桿に乗ってたみたいに

ここもレミー・マーへの攻撃だと思われます。

レミー・マーはインターネットで攻撃的な言動をすることで知られているようで、インターネットに足を引っ張られていると表現されています。

3バース目

When it come to stealin' flows, these birds is fluent
But they stutter when get asked 'bout the queen's influence
When it's clear they bite me, I'm flattered they like me
I don't wanna check bitches, tell 'em wear their Nikes

【意訳】
フロウをパクることに関しては、このビッチたちは、とても上手
だけど、女王である私の影響について聞かれると、途端に吃りだす
もし影響が明らかになると、私に噛みつき出すのよ
それから、私のことは好きだと煽て始めるのよ
私はそんなビッチたちをチェックしたくもないわ
ナイキを履いておけと伝えておいて

ここでは他の女性ラッパーたちの生々しい態度が描かれています(笑)。

ニッキーのフロウをパクっているのに、ニッキーの影響について訊かれると、自身のキャラを守るためにいきなりニッキーに対して攻撃的になるようです。一方で、ニッキーに攻撃されないように、ニッキーも好きだと付け加えることは忘れません。

ここまで言われると、他のラッパーたちはめちゃくちゃやりにくい気がしますが(笑)。

Barbie tings, that's Barbie tings
Big Barbie tings, that's Barbie tings
Big Barbie tings, that's Barbie tings
Uh, Barbie dreamhouse, Barbie rings

【意訳】
それがバービーのやり方、それがバービーのやり方
バービーの理想の家、バービーの指輪

That's Barbie beach house, Barbie Benz
Uh, Barbie white picket Barbie fence
All tea, all shade, bitch, all offense
If you ever try to confiscate Barbie's Ken

【意訳】
それがバービーの海の家、バービーのベンツ
バービーの白いフェンス
私は気にくわないことを言う、攻撃態勢よ
もしも私からバービーのKenを没収しようとするならね

バービーのKenというのは、以下の左側の人形のことです。右側がバービーで、ニッキーはこのバービーにインスパイアを得て自身のキャラクターを作り上げてきました。

画像3

I'ma put you in the box where my dollies been
Chop it up and the next stop garbage bin
'Cause you hoes too old to be gossipin'
I'm just tryna find out when the new Porsche come in

【意訳】
私は、あなたを人形箱にしまっちゃうわ
切り刻んで、次はゴミ箱行きね
だって、あなたたちはゴシップを話すには年増すぎるわ
私は新しいポルシェがどこに来るか思い出してるだけ

このゴシップを話している年上のラッパーというのは、クイーン・ラティファのことではないかと予想されているようです。HOT 97で、ニッキーとレミー・マーのビーフについて色々と意見をしていたようです。

その間も、ニッキーはしっかりとお金を稼いで、新しいポルシェを買うと自慢しています。

ということで

原点回帰して、バービーを前面に押しだしながら、めちゃくちゃ強気でラップしまくるニッキー・ミナージを堪能できる「Barbie Tingz」でした。

やっぱり、ニッキー・ミナージめちゃくちゃ良いですね!

アルバムもぜひチェックしてみてください。

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