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"永遠の新人"、ジェイ・エレクトロニカが10年かけて遂にリリースしたアルバムを読む。(Jay Electronica - "Shiny Suit Theory" feat. JAY-Z、The-Dream)

Writer:@raq_reezy

今回は、ついにリリースされたJay Electronica(ジェイ・エレクトロニカ)のアルバム『A Written Testimony』から「Shiny Suit Theory」を解読していきたいと思います。

「Shiny Suit Theory」自体は2010年にリリースされた曲ですが、それからこのアルバムが出るまでに、なんと10年の期間を要したことになります。


ジェイ・エレクトロニカは、アンダーグラウンドシーンでカルトチックな人気を博して、同業者ミュージシャンたちからの評価も上々。2010年には、ジェイZのRoc Nationと契約を結んで、「Shiny Suite Theory」などをリリースしていました。

しかし、その後、アルバムは一向にリリースされず、ケンドリック・ラマーのバースが話題となった「Control」への客演など、たびたび姿を見せるものの、その活動は謎に包まれた状態が続いており、「永遠の新人」と呼ばれたりしていました。


そんな中、ついにリリースされた今作『A Written Testimony』

ほぼ全ての曲にジェイZが客演参加するという万全のサポート体制となっております。

「アルバムを出すのが怖いなら、俺様が全部の曲で客演してやるよ」とでも、ジェイZが背中を押したのでしょうか(笑)。

何れにせよ、ついにアルバムがめでたくリリースされた訳です。


ということで、「Shiny Suit Theory」の内容を見ていきましょう。


イントロ(Jay Electronica)

One two, one two, yeah, uh huh, yeah

【意訳】
ワンツー、ワンツー、イエー、アハ、イエー


コーラス(Jay Electronica)

I'm sailing on a cloud, they trailing below
My shrink told me, "It's a feeling they'll never know"
I pack up all my sins and I wear 'em to the show
And let 'em go, let 'em go, let 'em go, let 'em go

【意訳】
雲の上を漕ぎ進む、あいつらは下を進んでる
俺のセラピストが言うには「これはあいつらには分からない気持ちさ」
俺は自分の罪を全部詰め込んで、ショーに着ていくぜ
そんで、全部吐き出すのさ、吐き出す、吐き出す、吐き出す

*この曲では、大胆不敵な夢を持つ自分たち罪人に例えています。その罪をラップの中で解き放つことを宣言しています。


1バース目(Jay Electronica)

1バース目では、ヒップホップシーンでも90年代に大活躍して、その後は実業家としても大成功しているパフィが、ジェイ・エレクトロニカにメジャーシーンで活躍するよう説得するシーンが描かれています。

内容を見ていきましょう。

In the land before time
A land before altar boys, synagogues, and shrines, man was in his prime
Look how far I go in time just to start a rhyme
The method is sublime, you get blessed with every line
I'm in touch with every shrine from Japan to Oaxaca
The melanated carbon-dated phantom of the chakras

【意訳】
ずっと昔の土地、オルターボーイズやシナゴーグ、神社よりも前の土地
そこでは、男は今よりも素晴らしかった
俺がライムを始めるためだけに、どこまで遡るか見てみろよ
俺のメソッドは崇高、全てのラインでお前は祝福されるぜ
俺は、日本からオアハカまで、全ての神社と接している
メラニン化されて、炭素年代測定されたチャクラの幻影

*オルターボーイズは、キリスト教のミサに参加する侍従を指すようです。シナゴーグユダヤ教の会堂のことです。キリスト教やユダヤ教、神道が存在する前の土地ということで、あらゆる宗教が誕生するよりも前の時代に遡っているのでしょう。随分と昔ですね。そのまま「俺がライムを始めるためだけに、どこまで遡るか見てみろよ」に繋がっています。

*オアハカはメキシコのオアハカ州の州都です。

*炭素年代測定は、炭素14の存在比率から年代を測定する方法です。

Me and Puff, we was chilling in Miami
He said, "Nigga, fuck the underground, you need to win a Grammy
For your mama and your family, they need to see you shined up
You built a mighty high ladder, let me see you climb up

【意訳】
俺とパフ、俺たちはマイアミでチルしてた
あいつは言った。
「おい、アンダーグラウンドなんかで満足してんなよ、
お前はグラミー賞を勝ち取らなきゃ。母親や家族のためにも。
お前の家族は、お前が輝くのを見なきゃだめだよ。
お前は強大で高いハシゴをつくりあげた、それを登るのも見せてくれよ。

*パフは、ヒップホップでも実業でも大成功しているパフ・ダディ(本名:ショーン・コムズ、愛称:パフィ)のことです。

*ジェイ・エレクトロニカは、アンダーグラウンドシーンでカルトチックな人気を博していましたが、もっとポピュラーシーンで活躍するようにと、成功者であるパフィは提言しています。

*「強大で高いハシゴ」は、ジェイ・エレクトロニカのスキルやファンからの支持を喩えたものでしょう。それを登るというのは、メジャーシーンで活躍するということです。

Nigga, what you scared of?
Terrorize these artificial rap niggas and spread love, pollinate they earbuds
Like you supposed to, spit it for the culture
Pay no attention to the critics and the vultures
They rather have a shot of Belvy just to spite you
They casting judgments 'cause they feel they got the right to

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