見出し画像

ドレイクとのビーフ、ニッキーとの破局などを経たミーク・ミルの想いを読む。(Meek Mill - "1942 Flows")【前編】

今回は、Meek Mill(以下、ミーク)の最新のアルバム『Wins and Losses』から"1942 Flows"を解読してみたいと思います。

ミークは、ペンシルバニア州フィラデルフィア出身のラッパーです。

画像1

ミークのデビューまでの流れについては、古いですがbmrの紹介を引用しておきます。

ヴァードー(Vado)やリック・ロス(Rick Ross)、T.I.に同郷のビーニー・シーゲル(Beanie Sigel)ら多数のゲストを迎えた“Mr. Philadelphia”などのミックステープ・リリースを経て、2011年にリック・ロスのMaybach Music Groupと契約。XXL誌のFreshmen特集にピックアップされて注目度を急上昇させている。

リック・ロス率いるMaybach Music Groupの特徴は(つい先日もリック・ロスの男尊女卑的な不適切発言が炎上していましたが)、男臭さであり、ミークの曲も男臭くて汚い言葉が多く使用されている印象です。

後に詳しく触れますが、そのキャラの違いが明確になったドレイクとのビーフも記憶に残っています。

ドレイクとのビーフや、ニッキー・ミナージとの破局など、様々な問題を乗り越えたミークが、改めて自分の想いを歌った曲が、"1942 Flows"になります。

この曲、ミークも気合が入っており、なんと1人で4バースもキックしております。

ということで、とても長いので、今回の前編で1、2バース目、次回の後編で3、4バース目を解読したいと思います

それでは、さっそく歌詞の内容を見ていきましょう。

1バース目

Started off poor with plans to earn more
Now we own stores and fuck the baddest whores
I was on tour with niggas that sold raw
Started sellin' white, we won't sell it no more

【意訳】
貧乏から始まって、稼ぎを増やすプランも無かった。
今では、俺たちは店を持って、誰よりも魅力的な女たちとファックしてる。
ドラッグを売ってた奴らとツアーをしてた。
そのときはコカインを売り始めたけど、もう俺たちはそんなもの売らなくていいんだ。

駆け出しの頃は、ドラッグの売人とツアーを周って、お金稼ぎのためにコカインを売っていたことを明かしています。それが、今では売れっ子のラッパーになり、自分の店も持って、ミュージシャンとして大成功しています。ちなみに、「Stores」は恐らくミークのファッションブランド「 Dream Chasers Clothing」のことで、オンラインストアはこちら。見事にSold Outが並んでいます。

画像2

Dream Chasers Clothing

I'm like, Trump ain't feelin' us, cops still killin' us
Niggas takin' shots, can't stop me, they ain't real enough
Cut her off, act like she's dead and it's killin' her

【意訳】
トランプは俺たちと分かり合えないし、警官はまだ俺たち黒人を殺すのを止めない。
俺に向けて攻撃してくる奴らもいるけど、俺を止めるにはリアルさが足りてない。
彼女を捨てて、彼女は死んだかのように振る舞うと、彼女は死ぬほど傷ついてる。

ここでは人種差別的な言動を繰り返すトランプ大統領や、警官の問題に触れています。アメリカでは、警官が普通の市民を射殺してしまう事件がたびたび生じています。Washington Postが公表しているデータによると、毎年およそ1,000人弱が警官によって誤って撃たれています。

画像3

この誤って撃たれてしまった約1,000人/年の内訳としては、だいたい約50%が白人、約25%が黒人、残りがヒスパニック等のその他の人種となっています。

一見すると白人の方が多く撃たれているので、ミークが歌っているような人種問題は存在しないようにも思えます。ところが、アメリカのそもそもの人種の割合を見てみると、黒人はアメリカの人口の13%程度に過ぎないため、やはり黒人の方が警官に誤って撃たれやすいということが分かります。(参考:Aren’t more white people than black people killed by police? Yes, but no. by Washington Post

俺に向けて攻撃してくる奴らというのは、たとえばビーフを繰り広げたドレイクがあげられるでしょう。

画像4

ドレイクとミークのビーフは、「渡辺志保 ドレイク VS ミーク・ミル ビーフ総まとめ」に詳しいですが、ドレイクがゴーストライターを使っていることを、ミークがツイッターで揶揄ったことで始まりました。

「俺をドレイクと比較するのはもう止めてくれ...。あいつは歌詞すら自分で書かないんだぜ。あいつが俺のアルバムについてツイートしてないのは、あいつがゴーストライターを使ってることを俺たちが突き止めたからさ!笑」

さらには、

「あいつは俺のアルバムに客演した曲の歌詞も自分で書かなかった。もし俺がそのことに事前に気付いてたら、俺のアルバムからあいつのバースを外してたのに...。俺は自分のファンを騙したりしない。めっちゃうける。」

と、自分のアルバムに呼んでおいて、言いたい放題(笑)。

その後、OG Macoというアトランタのラッパーがゴーストライターの実名(クエンティン・ミラー)まで暴露してしまったり、ミークの所属するレーベルMMGのボスであるリック・ロスが「ドレイク>>>>>ミーク」とまさかのドレイク側を誉めたたえるツイートしたり、ドレイクの宿敵であり、クラブで喧嘩した過去などもあるお騒がせ歌手のクリス・ブラウンが「今回ばかりは俺じゃない!!」と満面の笑みをInstagramに投稿したこともあり、どんどん広がりを見せていきます。

その後、ミークは「1人のファンとしてショックだったので、気が立ってツイッターで暴れてしまった、だけどドレイクはこれからもドレイクの道で頑張ってくれ」などと、ドレイクに声援を送るも、あったまってしまったドレイクは立て続けにミークへのディスソングを発表。

ミークの当時のガールフレンドが、ドレイクのレーベルメイトでもあり、トップスターでもあるニッキー・ミナージだったこともあり、「それはお前の世界ツアーか?それともお前のガールフレンドのツアーか?」(彼女の人気に便乗して世界ツアーを回ってるのか?)などと挑発的なラインを散りばめ、その後も事あるごとにミークをディスるようになります。

さらにはドレイクのファンたちが、ミークのSNSに糞リプを送りつける粘着軍団へと成長し、ネットリンチの様相を見せはじめます。正統派で真っ直ぐな男であるミークに対して、ドレイクは女々しいところも見せるからこそ、インターネットの住人と相性が良く、本人もそのファンも含め、すごく今の時代のインターネット的というか、 煽り体質なのです。

DrakeのファンがMeek Millに大量の花の絵文字を送りつける

ドレイク「Can't Have Everything」〜ネットリンチで人生を壊されるミーク・ミル

ちょっとした出来心でツイートしてしまったがために、世界的なポップスターでもあるドレイクにディスられ続け、ソーシャル界隈のネタにされ続ける状況にミークは消耗したでしょうが、それすらも「リアルじゃない」(あいつらインターネットで粋がるだけだし!)から、「俺を止めることは出来ない」と、ミークは歌っているのです。

New dawn, Hermes seat, I let the ceiling up
Just to get to kill 'em softly
Ooh, get them off me, try to crucify me
Like I'm Jesus the way she cross me

【意訳】
最新のRolls Roys Dawnにエルメスの席。
あいつらをそっと殺すためだけに天井を開ける。
あいつらは俺を張り付けにしようと試みる。
彼女が俺を裏切って、十字架に張り付ける様子は、まるで俺がイエス・キリストのようだ。

「New dawn」というのは、ミークの持っている最新のRolls Roys Dawnのことです。

Rolls Roys Dawnというのは、こちらですね。

画像5

車はあまり知らないので、勉強になります。

さてさて、ミークはその最新のRolls Roys Dawnの席をエルメスで装飾しています。要は車自慢ですね!

その後のラインは、おそらく破局したニッキー・ミナージに触れているのではないかと、Rap Geniusでは書かれています。ミークは、あまりパブリックな場所ではニッキーとの破局の詳細について語らないものの、ミークはニッキーに裏切られたと感じているようです。「she cross me」がダブルミーニングになっており、裏切るということと、十字架に張り付けるということが掛かっています。

I'm too bossy and too thorough to move like a weirdo
On point like an arrow, we started off with zero
Now I'm seeing M's, diamonds like water and they jumping out the gym
Shooting like Harden if your head was the rim
'Cause niggas wanna line me like a shape up in the trim, damn

【意訳】
俺は変人みたいに振る舞うには、あまりにもボスで、あまりにも綿密だ。
俺たちはゼロから始めて、矢のように的確にやり遂げた。
今じゃM'sやダイヤモンドを水のように視界に溢れてて、あいつらはジムから飛び出していく。
お前の頭がリングなら、ジェームズ・ハーデンみたいにシュートする。
なぜなら、どいつもこいつも、俺を芝みたいに整えて、おとなしくさせようとするからだ、糞くらえ!

最初のラインで触れている「変人みたいな振る舞いをするやつ」は、おそらく、再度のドレイクへ向けたディスでしょう。"Hot Line Bling"のMVでドレイクが見せた賛否両論の不思議な踊りは話題になりましたが、ミークは男らしく、綿密なので、そうした変な動きをして「ウケる」とかでバズるようなことはしないのです。ミークの硬派な性格が垣間見えます。

さらに、ミークは親友のNBA選手であるジェームズ・ハーデンを持ち出しています。最悪の街コンプトン出身で、NBA選手として高額の契約を果たしたハーデンが放つバスケットボールのシュートのように、ミークは自分を型にはめようとしてくる奴らの頭を撃ち抜くと歌っています。

ブリッジ

ブリッジは深く解説することは特にないので、さらっと訳して進みたいと思います。何しろこの曲、4バースもあるのです!!

Back when I was broke, they was cool with it
Now every move I make, I'm in the news with it
Even if I ain't do it, they be like, you did it

【意訳】
俺がまだ文無しだったころ、あいつらはそれでも良いぜって感じだった。
今では、俺が動くたびに、俺はニュースになる。
俺がやってなくても「ミークがやった」って言われるほどさ。

My teacher always used to tell me you gon' lose nigga
That's why I never went to school nigga
And why I'm rappin' like I got something to prove nigga
Went and bought the mansion with the pool in it
Billy with the stamp, I get two with it'

【意訳】
学校の先生はいつも「お前は負け組になる」って言ってた。
だから俺は学校になんて行かなかったし、勝ち組だって証明するためにラップしてるんだ。
プール付きのマンションを買った。
刻印付きのビリーだ、俺はそれで2つ目を手にいれる。

最後のラインだけ、良くわからないのですが、Billyというのはいくつか意味があるみたいです。たとえばマリファナを吸うためのボング、魅力的な男、などなど。

2バース目

Move with it 'cause these niggas wanna take my life
No weapon formed against me, every time I pray at night
Scoopin' thotties in the Phantom, that's the way of life
And make them fuck their best friends like they was dykes

【意訳】
誰もが俺の命を取りたがるから、俺は動き回る。
俺が夜に祈るたびに、俺を攻め立てるために造られる武器は、その目的を達しなくなる。
ファントムに女を誘う、それが人生ってもんだ。
そしたら、まるでレズビアンかのように親友同士でも性行為をさせる。

ミークを引き摺り下ろそうと、みんなから狙われている様子を歌っています。「No weapon formed against me」のラインは、旧約聖書のイザヤ書54:17を引用して使ったものです。

(イザヤ書54:17)
すべてあなたを攻めるために造られる武器は、その目的を達しない。すべてあなたに逆らい立って、争い訴える舌は、あなたに説き破られる。これが主のしもべらの受ける嗣業であり、また彼らがわたしから受ける義である」と主は言われる。

ファントムのくだりは、またまたロールスロイスでしょう。ロールスロイスに友だち連れの女性を誘い込んで遊んでるぜ、ということですね。

Reaching for the Glock, every time I play the light
I'm on 12 o'clock, every time I play them bikes
I'm with the pack, huh
Getting back, yeah
Spend dope, nigga
Selling smack, gang

【意訳】
明かりで遊ぶとき、いつだって銃に手を伸ばす。
バイクで遊ぶとき、いつだって12 O'CLOCK BOYSみたいにイケてる。
俺は仲間といる。戻ってきたぜ。
ドラッグをやって、悪口やヘロインを売る、ギャングだぜ。

Glockはオーストラリアの銃器メーカーですので、「Reach for the Glock」はグロック社製の銃に手を伸ばすということになります。

「バイクに乗るときはいつだって12時だ」というのは、それだけでは意味が良くわかりませんが、12 O'CLOCK BOYSという街中でスタント的なバイク乗りをして遊ぶ集団のことを言っています。

smackは「悪口」や「ヘロイン」のスラングです。ラッパーとして悪口を売り物にしたり、ドラッグを売ったりしてるということでしょう。(ドラッグは売らないんじゃなかったのか!)

I'm gettin' chips off music like Rap Snacks
Yeah, 10 mil in cash of Ethika that's a fact
Money, power, respect
Eating breakfast on a jet

【意訳】
俺はまるでRap Snacksみたいに、音楽からお金(チップ)を得てるぜ。
そうさ、Ethikaので現金で10億円、それが事実だ。
お金に力に尊敬。ジェット機で朝食を食べてる。

Rap Snacksというのは、ラッパーを袋にあしらったポテトチップスだとのこと。(ちなみに売上は右肩下がりだったところが、Migosバージョンの発売によって、息を吹き返しているそうです。)

画像6

そして、Ethikaというのは下着ブランドです。ミークは、Ethikaと組んでライブ映像を生配信したり、自身のDream ChaserブランドとEthikaとのコラボ下着とミックステープを出したりしています。それら諸々で10億円ほど稼いだようです。

ちなみにEthika×DreamChaserの下着はこんな感じです。

画像7

I know these niggas upset
They ain't see me fall yet
Wins and losses

【意訳】
みんな気が立ってるって知ってるぜ。
あいつらは俺の落ち目を見たいのに、まだ見れないでいる。
勝ったり負けたりさ。

ヘイターたちは、ミークが失敗して落ちぶれていくのを見たがっていますが、ミークはまだまだ落ちぶれるつもりはないようです。うまく行かないときもあるけれど、心が折れることはないので、勝ったり負けたりだということでしょうか。

サビ

サビもあまり難しい言い回しや解説はないので、サクッと訳を載せます。

They wanna see me fall
And I will never sell my soul
I'm on some shit that they ain't seen before
Dream chasin', catchin' all my goals

【意訳】
あいつらは俺が落ちぶれるのを見たいのさ。
俺は絶対に自分の魂だけは売らない。
俺はあいつらが見たこともないことをやってる。
夢を追いかけて、目標にしてる全てのものを手に入れる。

I don't need these hoes
I'm gettin' money, me and all my woes
Play with me, you know is all out war
The young niggas goin' all out for us

【意訳】
アバズレはいらねえ。俺と仲間たちは金を手にしてるんだ。
俺にちょっかいを出すと、全面戦争だって気付くことになるぜ。
若いやつらが、俺たちのために全力になってくれる。

「woes」というのは仲間のことです。ちなみに英語スラング.comによると「woes」という言葉を流行らせたのはドレイクの"Know Yourself"という曲だとのこと。使ってていいのか。

前編はここまで

ということで、この曲、非常に長いので、前編はここまでです。

3バース目と4バース目は、後編にて解読していきます。


「この曲を解読してほしい!」といったリクエストをお待ちしています!

raq.reezy@gmail.com

まで、メールでお送りください。

ここから先は

0字

¥ 300

「洋楽ラップを10倍楽しむマガジン」を読んでいただき、ありがとうございます! フォローやSNSでのシェアなどしていただけると、励みになります!